侵略者レジェス・ビセンテ
羽飾りのある額当ての兜を被り、鎧を身に着けていることから自ら馬に騎乗する。栗毛の馬に跨ったプルデンテにとっておよそ十年ぶりの乗馬であったが、固い意志の元、注意を払って乗りこなす事が出来た。人々の行き交う歩道を横切り、数人の護衛騎士を引き連れて、注目を受けつつも進む。
そして、舞い戻った領都の北門。戦乙女の装いに、目にした者達は動揺を見せていた。
「プルデンテ様、実に勇ましいお姿ですな。お似合いです」
ただ、歩み寄ってきたオルサコリーナ将軍の表情は緩んでいる。好感を得たようで、彼女は微笑みを浮かべて返すと、馬から降りた。追従していた護衛騎士の一人がプルデンテの馬の手綱を持って制するのを確認すると、将軍を引き連れて北門に向かう。
「交渉を求めた武装集団の一名はかなり苛立っています。プルデンテ様不在中も、絶えず扉を殴打していました」
「あのような荒ぶる者の前に、奥様の御身を晒すなど不安しかありません」
障壁上部の監視役の兵士、北の守備隊長も彼女に語りかける。心配だと顔を曇らせる。扉を叩く音と振動は未だ続き、その向こうから男が声を荒げているとも分かる。
手は痛まないのか、喉は枯れないのか。そのようなどうでもいいことをプルデンテは気にして、向こう側にいる男が執拗な人物ではあると理解する。
「あちらは私との交渉を求めています。対応するのが領主代理を賜った私の使命・・・ただ、警備はお願いします。問答無用と矢や手槍など飛んでくれば、私には対処できかねますので」
手を前に差し出すことで、道を空けてほしいと合図を送る。汲み取った守備隊長を含めた兵士達は躊躇いを見せつつも、譲るべく左右に分かたれた。
「プルデンテ様の御身をお守りするぞ」
背後からオルサコリーナ将軍が指示を出す声が聞こえる。障壁上部に向かうために階段を上る彼女の後ろから、金属を擦らせた足音も聞こえた。
頼もしいバジーレ軍の兵士達に守られている。それが恐怖を抱く心を支え、その恐怖を奥に押し込める一助となり、プルデンテは僅かに震える足を止めることなく階段を上り終えた。
雲のかかる空の下。風の強さを肌で感じ、濡れた土の匂いのようなものを嗅ぎ取る。それは雨雲が近付きつつあるからか、向かう障壁の縁の下で低音の怒声を上げる者が原因か。
縁に近付き、その切り整えられた石組みに手を乗せる。彼女の眼下には、土に汚れた見覚えのない武装の騎馬隊。それぞれが抜剣した剣を掴み、槍を手にして、弓矢に手をかけている。臨戦態勢に他ならなかった。
「あ?あぁ!やっとお出ましか!」
怒号は止まり、嘲りのある声が下から聞こえた。プルデンテが見下ろせば、明らかに隊長格だと分かる武装の騎士が一人。いやらしくも口元を緩めて見上げていた。
見覚えのある男だった。どこで目にした顔だったかと思考したのは一瞬のこと。悪意を隠さない言動から、狩猟祭で見かけた男だと思い出す。
赤茶色のウェーブがかった髪、茶色の瞳の目という派手さはない色味。背が高く、肩幅と体の厚みから、鎧を身に着けていても筋肉質だと分かる体格。馬から降りて見上げてくる顔は非常に端正ではあるものの、にやついた表情が軽薄さを際立たせていた。
音を立てるほどの風が吹く。それは、障壁の上にいるプルデンテの三つ編みが凪ぐほどだった。眼下の男は目を細める。
「地味で大人しい灰色の王女様、今日は随分と勇ましい姿だな。着ている鎧に見劣りする風貌だから、いっそ憐れに見える」
正しく暴言だった。交渉のために危険を顧みず姿を現した彼女を嘲り、侮り、見下している。もしかすれば、心を逆撫でるための言動かもしれない。
それを理解した上でプルデンテは表情を出さない。真顔のまま、熱のない眼差しを向ける。
「・・・我がバジーレ領の要である領都へ侵攻を試みる方々とみてよろしいですね?代表者は貴方でしょうか?」
淡々とした口調で言葉を紡ぐ。
見上げる男の顔は険しくなり、眉間に皺を寄せ、鋭い眼差しで睨み付けてきた。明らかな怒気は、繊細な心根ならば恐れで震えてしまうだろう。
だが、バジーレの兵士達が心の支えとなっているプルデンテには効かない。灰色の瞳の目で、真っ直ぐに男を見下ろす。
「侵攻じゃない。本来の所有者として取り戻しにきた。俺にはバジーレを支配する権利がある、その資格がある。だから領都の門を開けな。今すぐ開門したらお前の処遇も考えてやる、灰色の王女」
彼女は理解し難い主張と文言に頭痛すら覚えたが、決して態度には出さない。
寧ろ、後ろに控えているオルサコリーナ将軍や守備隊、護衛騎士こそが分かりやすく相手の言動に憤慨している。彼らに横顔を見せて鋭い流し目で制すと、再び男を見下ろした。
「私のことをご存知のようですが、情報が古いですわ。私は既に王族籍ではなく、隣国から王国を守るバジーレ家の者、今は領主代理として貴方の仰る交渉のために参じた責任者です。義父より賜った立場から、貴方の対応をしているのですが、どうにも嘲るだけの貴方ではお話になりませんね。所有権の主張も理解し難く、まともな交渉にはなり得ないと判断しました。今すぐお引き取りを。バジーレでは、危険人物を懐に入れるなど浅はかなことはいたしません」
盛大な舌打ちがプルデンテの耳に届いた。
更に眉間に深い皺ができるように寄せ、食いしばった歯を見せるほど獰猛な表情を浮かべる。鋭い目には明らか殺意が滲み、それは思い違いではなかった。男は佩いていた鞘から剣を引き抜いて、その剣先を彼女へと向ける。
「支配者を気取るなよ、灰色の王女。お前とバジーレの領主の息子が結婚したことで、バジーレは王家から支援が受けられる。王家はバジーレを外戚とすることで関係の強化を図った。それだけなんだ、それだけの価値しかお前にはない。息子との間にガキも産んだんだろ?じゃあ、お前はもうバジーレからも王家からも用済みなんだ。俺が進軍の合図を領都に攻め入っても、誰もお前を助けはしない。そんな見た目だけ立派な鎧を着ていたって意味はない。八つ裂きにして壁に飾ろうが、熊にでも生きたまま食わせて遊ぼうが、誰も憐れだと思わない。役目を終えた期限切れの女が、ただ闘争に負けたと処理されるだけなんだ。俺にとっても人質は元より、捕虜や奴隷にする価値すらないんだよ、お前にはな」
男は、言いたいことを言い終えたと顔を緩ませると、再びいやらしい笑みを浮かべた。
「だが、素直に門を開けてくれたら惨たらしくは殺さない。奴隷くらいにはしてやる」
男に品性というものはないのだろうか、とプルデンテは思う。
身に着けている鎧、その下の軍服から高貴な身分であると示している。麗しい容貌と衣服の質、そして王国の公用語を外国訛りがありつつも話せる教養があるのに、それらを無に帰す下劣な人間性を隠そうとはしない。
嫌悪感から目を細めた。侵略者に対峙する恐怖はあれど、湧き上がる怒りが押し留めてくれる。
背後では、剣を引き抜いて踊り出ようとした将軍を他の兵士達が押さえている。兵士達はプルデンテの指示を守り、同じくプルデンテを思うことでオルサコリーナ将軍は殺意を隠さない。彼らの守り手がいることで、彼女は恐れを微塵にも感じなくなった。
「・・・私を貶すことで、ご自身の加虐心を満たすなど品性下劣極まりない。そのような方に脅されたからと領都に受け入れるとお思いですか?」
「お前のためを思って言っているんだ、灰色の王女。姉と違ってくすんだ色味の地味な女だが、顔は悪くない。俺の気分さえ害さなければ、殺さずに飼ってやる。だから本来の支配者である俺に領都を明け渡せ」
話も通じず、あけすけに欲望を言うさまに怒りは頂点に達した。
「隷属を敷いる貴殿が何を言っているのか理解に苦しむ。正体不明の侵略者に、王国東を守護するバジーレ家の居城を明け渡すなどしない。貴殿が何者かなど言動により理解はしている。だからこそ何よりも貴殿には領都を渡すことはない!立ち去りなさい侵略者!この領都は、バジーレ領は、我らバジーレ家が守護する地です!!」
次第に声量を増す声は、雲のかかる空にすら響き渡るほどだった。男の背後に控えている兵士達は動揺を見せ、プルデンテの背後にいるバジーレの兵達もオルサコリーナ将軍すらも息を呑む。
威風堂々とした佇まいと怯まぬ心、澄んだ大声が、戦乙女のような様相と相まってその場全ての者に威圧感を与えていた。
プルデンテの眼下にいる男も、穏やかな色味の茶色の瞳を見開いて、呆然と見つめている。
「・・・灰色の王女は大人しくてか弱いんじゃなかったのかよ・・・非力な女だから、武力を見せりゃ怖がって判断を誤ると思っていたのに」
小声で何かを呟いていた。その呟きを、プルデンテは唇の動きから読む。
他者を侮辱する人間性はやはり理解し難いと思いながら、彼女は再び唇を開いた。
「もう一度言う、立ち去りなさい。バジーレの地を貴殿のような悪漢に渡すはずもなし」
「・・・ふざけんなよ、クソアマ」
下品な言葉を吐き出した男は舌打ちをすると、殺意の滲む眼差しでプルデンテを睨み付けてきた。
「俺は正当な支配者だ!俺の一族は古代からバジーレの土地を所有する権利があるビセンテ家!俺はレジェス・ビセンテだぞ!お前みたいな新参の女が口答えをしていい相手じゃない!!」
思った通りの家名と、思っていた人物とは違う名前。レジェス・ビセンテという名前は聞き覚えこそある。三年前の狩猟祭での帰路の途中、馬車の中でバジーレ辺境伯が語ったビセンテ伯爵家の三男の名前だと記憶していた。残虐性があり、バジーレ領を精力的に狙っているとは語られていた。その特徴は、眼下の侵略者の特徴と重なるだろう。
しかし、侵略戦争を仕掛けるビセンテ軍の大将となれば老齢の伯爵は戦場に出れなくとも、その長子が務めるべきではないのか。
レジェスが声を張り上げる最中、その僅かな時間に思考をすれば、怒り露わな彼が再び剣先をプルデンテに向けた。
「門を開けろ!」
「明確に侵略者と理解した上で開門などしない」
すぐさま言葉を返せば彼は唸り声を上げ、大声を張り上げた。
「領主のジジイも息子も死んだ!!この地の支配者はいなくなったんだぞ!!誰が後を継ぐのか分かりきってるだろうが!!このバジーレはビセンテ家の物!俺の物にするんだ!!バジーレ家のガキを産んだだけの女が邪魔をするんじゃない!!さっさと門を開けろよ!!」
「・・・なぜ隣国のビセンテ伯爵家の者がバジーレ辺境伯の生死について発言できるのですか?私が知り得た情報では、どこぞより現れたビセンテ軍によって山間の鉱山町が制圧されたというもの。貴殿らがその制圧者だとは疑いを持たないが、取り戻すべく進軍した我らの辺境伯と後継者であるアストゥートのことは知らないはず。その生死に関わっているならば説明はつくが、であるならば、貴殿らがバジーレの軍を打倒したという証左になる」
プルデンテの問いかけにレジェスは表情を緩めた。嘲笑を顔に浮かべながら、引き笑いを始める。
冷静に努めることで感情豊かな男だと思いつつも、答えがほしい彼女は何も発さずに静観をする。
「は、ひっ、ははっ、ひははっ!!はぁあ〜・・・バジーレ軍の本隊が、俺達と戦うために進軍したとは知っていたからな。バジーレの領主もそうだが、息子のアストゥート・バジーレはビセンテでも有名な男。直接対決なんざ望んでなかった。だから、ひ、ふふ・・・通行するだろう山道の脇にある崖に爆薬を仕掛けた。あっちは何日も雨が降っていたから地盤が緩んでいたからな。大量に、一斉に爆破させりゃ岩も砕いて木の生えた地面も吹き飛ばす。支えになくなった岩も地面もそのまま高所から滑り落ちて、簡単に本隊を飲み込んだ」
絶望を与えるために、あえて身ぶり手ぶりをしつつ語ったのだろう。その姿を滑稽だとプルデンテは思うだけ。
アストゥートもバジーレ辺境伯も、確認ができていないからこそ生死は不明である。だからこそ無事であるというオルサコリーナ将軍の発言が心を支えていた。非常時である今は、心を打ち砕く最悪の結末など考えるべきではないと処理をしている。目の前にいる敵対者に対して、弱った姿は見せてはいけないという決意もあった。
彼女は鋼鉄製の鎧に包まれた腹部に、ガントレットを填めた手を添える。金属が触れ合う音、身を包む重さにも支えられていた。
「自身では敵わない強者を卑怯な手で倒したと勝ち誇り、慢心したままこちらに来たのですね」
「・・・なんだと?」
「金銭と道具の力を自身の力だと思っているようだが、その程度でバジーレの者が屈すると思わないでいただきたい。本隊は五百人を超える軍隊。貴殿の爆薬による人工的な土砂崩れで、その全員が飲み込まれるはずもなく、何より彼ら全員が強き戦士です。汚い手段に屈することなく、軽症の者はこちらに向かっている」
「そんなわけあるかよ!!本隊の真ん中に向かって土砂が流れ込むのを見たんだ!!逃げられるわけがない!!大体、鉱山町に残していた別部隊に生き残りの殲滅も命じてきた!!もはやバジーレの本隊は俺達に負けたも同然!!この土地を守る兵士はいなくなったんだよ!!」
プルデンテは目を閉じた。短い時間で思考をすると、ゆっくりと開いてレジェスを見下ろす。
「よく回る口ですが、こちらも知り得ない情報を得られました。感謝はします・・・貴殿は軍を二分割にした。領都を包囲したのが二百ならば同じ数・・・いいえ、残してきた兵士の数が多少は多いはず。容易く制圧できると踏んで領都に来たのだから、まだバジーレ領軍の兵がいる鉱山町に人員を割くでしょう。あちらで我が軍と交戦中とみてよろしい?」
「っ!!」
プルデンテの推測は合っているようだった。悔しそうに顔を歪めたレジェスは、大きく舌打ちをする。感情的で非常に分かりやすい男だと理解して、アストゥートとは真逆の性格であるとも落ち着いた心で思う。
「貴殿は完全に見誤っています。バジーレに属する戦士は、少数だからと屈する軟弱者ではない。この地を千年以上守り続けた血筋の者達。たかが二百の敵兵に囲まれたからと武装解除をするはずもない!」
澄んだ声は常に響き、背後の階段から何十もの足音が聞こえ始めた。プルデンテは振り返りこそしないが、気配から他の騎士と兵士、北の守備隊所属でない領内を巡回する兵士達も集ったのだと理解した。男女も年齢も関係ない勇ましい彼らは整列をすると、プルデンテを守るべく踏み出す。
彼女の後ろに現れた戦士の列に、眼下の敵軍達はどよめく。レジェスに至っては、呆気と口を開いていた。
「私が告げる言葉は一言のみ。立ち去りなさい」
眼下の彼が歯を食いしばる。悔しそうな歪んだ表情を見ても、領都の守り手となったプルデンテの心は凪いでいた。
ただ、レジェスの頭がぐるりと音が聞こえるほどの勢いで後ろに向けられた瞬間、予感で心が波立った。
「プルデンテ様!お下がりを!!」
オルサコリーナ将軍とその子息が動く。大きな手が彼女の肩を掴んで引いたが、その身が後方へと向かう前に額が鈍い音と衝撃を受けた。鋼鉄の兜の額当てに何かが貫通して、下にある額がチクリとした痛みを感じている。
プルデンテは気付いた瞬間、身を屈めて、額当てに刺さる物を掴んだ。今は彼女の壁となっている二人の男を合間から押し出ると、陰りない灰色の瞳でレジェスを映す。
「交渉などと謀り私の暗殺を企てるなど愚かと言わざるを得ない!!貴殿は判断を見誤った!!弓兵!!狙撃の許可をする!!」
「ヘタクソが!!」
射手であった部下に対して罵声を上げたレジェスは、馬に乗り込むと走り出した。早々に引き連れていた軍隊に合流する。
バジーレの障壁から弓兵達が次々に矢を放つ。休みなく、一人でも射抜こうと放ち続けて、蛇行して逃げ惑うビセンテ軍に浴びせていた。
だが、一名ほど額を撃ち抜いて馬上から落とすも、レジェスも含めた他の者達は、その空馬と共に散るように駆けていった。
「・・・矢の射程距離外まで逃げられました」
「三方の門からの報告は未だにありませんが、残りのビセンテ軍に塞がれたままでしょう。レジェス・ビセンテが引き連れたあの部隊こそが本隊。あのまま奴らが去れば、他の部隊も続くと思われます」
プルデンテは、力を込めて額当てから矢を引き抜いた。報告のために顔を向けるオルサコリーナ将軍と子息に、準々と視線を向けて頷く。
「立ち去るつもりはないでしょう。依然、領都は包囲されています。機会を伺い、隙を見て侵攻を開始します。今は私がのうのうと北門に姿を現したから、好機だと暗殺を企てた・・・いえ、私との問答で逆上して計画通りとはならなかっただけで、彼は、レジェス・ビセンテは始めから私を暗殺するつもりだった」
ガントレットを填めた手の内にあるビセンテの矢に視線を落とす。レジェスの合図で矢は放たれた。それは一矢だけではなく、複数人による同時射撃だった。それを物語るのは、障壁に当たって弾き落ちた数本、深く突き刺さった二本から理解できている。一瞥からの同時射撃など、瞬時の判断でできることではない。そういった作戦があったからこそ、彼の部下達は対応できた。
「領主代理を任命された私を討てば、彼の考えではバジーレ領を統べる者全てが潰えたことになる。だからこそ、考えなく合図を送って好機を逃した・・・思慮深さなど持たない浅はかな方ですね」
「武装をされるなど考えあってのことだと思っていましたが、意味そのままに使用するだけでしたか」
オルサコリーナ将軍は深く溜め息を漏らすと、そのまま障壁の縁に腰を下ろした。子息も、守備隊長もプルデンテに視線を向けつつ、安堵と表情を緩めていた。
「当然でしょう。レジェスは領主代理である私との交渉を望んでいた。暗殺の算段をしているはずだと考え至り、ならば武装をして挑めば急所を穿たれて死ぬことはないと」
「的となって穿たれれば、こちらからの攻撃は正当性を得る。そういった算段のもと、御身を敵前に晒されたのですな?」
「・・・・」
内に秘めていた真意を当てられたことでプルデンテは絶句し、丸くなった灰色の瞳でオルサコリーナ将軍を見つめた。
言葉を失った様子に将軍は確信を得たと眉を潜め、頭が痛むのか額に手を当てた。
「プルデンテ様、貴女はこのバジーレにとって、アストゥート様にとっても、何よりもお子様方にとって唯一の方なのです。その貴女がご自身を無下に扱うなど止めていただきたい・・・先程の無茶で、危うく俺は肝が潰れてしまうかと思いました」
将軍はまた深く溜め息を漏らして、背を丸めるほど項垂れる。
決して殺されずに、それでいて相手方が一切の責を負うように事を運んだつもりだったが、将軍も周りの兵士達も納得といった様子はない。むしろ責めるような視線を向けられていた。
彼女が間違いを犯したと気付いたときには、いつの間にか護衛騎士が呼び出したシエナに、母である王妃からも受けたことがない厳しい説教を受けるのだった。
知的で狡猾な人物が書きたかったはずなのに、勝手にキャラが動きました(レジェスくんのことです)
6/23 あまりにもプルデンテが雄々しいな?と思ったので台詞を少々変えました。




