第7章7話 変調の所在
恐ろしいほど静かに、そして突然に、
二人は元の場所へ、
元の人生へと戻されていた。
そこに、意味や理由など
あるようには見えなかった。
少なくとも、
説明してくれる誰かはいない。
神の声も、
科学的な理屈も、
夢の続きもなかった。
ただ、朝が来て、
名前を呼ばれ、
それぞれの場所で目を覚ましただけだ。
世界は何事もなかったかのように整い、
海は穏やかに揺れ、
山は静かに佇み、
人々は動き出す。
その中に、
二人も自然に組み込まれていく。
まるで最初からずっと、
そこにいたかのように。
だが——
記憶だけは、確かに残っていた。
他人の名で呼ばれ、
他人の場所で眠り、
別の時間を生きたという事実。
それが夢でないことを、
身体が、脳が、覚えている。
ならば——
あの出来事に、意味はあったのか。
もし意味があるのだとすれば、
それは最初から用意されていたものではない。
戻された瞬間に
説明書が配られるわけでもない。
意味は、
後から与えるものだ。
無意味だったと思えば、
それはただの錯覚で終わる。
奇妙な半年だった、と笑い話にして、
何も変えずに生きていくこともできる。
だが——
あの時間を通して
見えたものがあるのなら。
あの出来事は、
ただの偶然ではなくなる。
チェンジリング。
入れ替わり。
それが何だったのかは、
誰にも分からない。
だが、
それに意味を与えるかどうかは、
他の誰でもない。
自分自身だ。
世界は何も語らない。
だからこそ、
物語は、
ここから始まるのかもしれない。




