表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/54

第7章1話 来たる変調?!

白い夢を見たあとも、

今までと変わらず、

世界は何事もなかったかのように回り続けていた。


太陽がのぼり、人々が活動を始め、

太陽が沈み、人々が眠りにつく。

特別なことは何もない。

ただ、それを繰り返す日常だ。


変化というものは、

たいてい前触れもなく訪れるが、

その瞬間までは驚くほど律儀に、

"いつもの毎日"が続く。


そういえば――

チェンジリングが起きてから、

ちょうど半年が経つ頃でもあった。


だからといって、

何かが起こる理由になるわけでもない。

記念日でも、区切りでもない。

カレンダーを見て、

あとから気づいた程度のことだ。



長野の空は澄み、

山の稜線は昨日と寸分違わぬ姿でそこにある。


フィンはカーテンを開け、

差し込む朝の光に目を細めた。


今日も仕事があり、

今日も一日が続いていく。

それはもう、疑いようのない現実だった。


早苗に起こされ、

半分寝ぼけたまま朝食をとり、

仕事に行き、

剣道をして、

疲れて帰り、

そしてまた眠りにつく。


最近は、この流れにもすっかり慣れていた。

慣れすぎて、

ときどき――

"自分はいつから長野に住んでいたんだっけ?"

と、一瞬だけ思うこともある。


だが、

たいていは味噌汁の匂いに引き戻され、

考える前に現実が追いついてくる。


今日も、いつもの日常が待っている。

――そのはずだった。


ただ、今日だけは、

なぜか胸の奥に、根拠のない違和感があった。


言葉にすれば壊れてしまいそうで、

それでいて、無視できない感覚。


何かが変わったわけではない。

変わる兆しがあるわけでもない。

ただ、

嵐の前の海が不自然なほど静かに凪いでいる、そんな感覚だった。


フィンは、ふと空を見上げた。


雲の流れが、

昨日より、ほんの少し速い気がする。


何かが、

動き出そうとしている。


そう確信するほどの根拠はない。

けれど――

今日が、ただの"いつも通り"で終わらない。

そんな予感だけが、

はっきりと胸に残っていた。


――――


同じ頃。


シドニーでは、

初冬を迎えつつある五月の朝が、

やけに穏やかに始まっていた。


夜明けの空気は澄み、

海から吹く風も、いつもより角がない。


謙一郎はベランダに出て、

まだ低い太陽の光を、ぼんやりと眺めていた。


今日もサーフィンへ行く。

そのあと仕事がある。

会社は回っている。

部下との関係も、以前よりずっと良い。

剣道も再開し、

心も身体も、整っている。


満たされている。

間違いなく、満たされている。


それでも――

謙一郎は、空を見上げた。


雲の切れ間に、

昼間でもかろうじて見える星がある。

それが何座かは分からない。

だが、なぜか目が離せなかった。


――何かが起こる。


そんな予感が、

ふっと胸をよぎる。


根拠はない。

ただの思い過ごしかもしれない。


それでも、

長野とシドニー。

まったく違う場所に立つ二人が、

同じ朝に、

同じような違和感を抱いている。


その偶然が、

すでに“偶然ではない”のだと、

二人はまだ、知らなかった。


世界はまだ、

静かに息を潜めている。


だが、

変化はいつも、

こういう朝を選んでやって来る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ