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【書籍化】悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~【3章スタート】  作者: 冬月子@悪役令嬢のダイエット革命2卷8/1発売!
3章 サロン《ラ・ベル・レジスタンス》と悩める令嬢たち――甘い誘惑と危険な計略

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13話 予期せぬ再会

私は声を張り上げる。


「あなたには、まだ聞きたいことがあるの!」


けれど、返事はない。私は慌てて人混みへ駆け出した。煌びやかなドレスが幾重にも視界を遮り、仮面をつけた紳士淑女たちが行く手を塞ぐ。

人の間を縫うように進んだ、その時だった。


「きゃっ!」


誰かと肩がぶつかり、私は思わずよろめく。


「ご、ごめんなさい!」


慌てて頭を下げながら顔を上げると、目の前の女性も驚いたように目を丸くしていた。


「あら、エリザベート様?」


「……クラリッサ? クラリッサなの?」


思わずその名を呼ぶ。

仮面舞踏会だというのに、彼女は素顔を隠すつもりがないのか、片目だけを繊細なレースで覆っただけの仮面を身につけていた。


「お久しぶりね、エリザベート様」


微笑む姿は以前と変わらない。だけど――、私は言葉を失った。

痩せていた。驚くほどに。

はじめてサロンを訪れた頃の面影がないほど細くなっていた。頬はすっきりし、顎の線もシャープになっている。一見すれば、ダイエットに成功した理想的な姿だった。

けれど、何かがおかしい……。

肌が妙に青白かった。目の下には薄く隈が浮かび、頬もどこかやつれて見えた。


「驚いたわ。……随分と、痩せたのね」


「ふふ……そうでしょう?」


クラリッサは満足げに唇を緩めた。

本当なら、今すぐジゼルの後を追うべきだった。あの人には、まだ聞かなければならないことが山ほどある。

けれど――私は目の前のクラリッサから視線を逸らせなかった。このまま見過ごせば、取り返しのつかないことになる。そんな予感が、頭の中で強く警鐘を鳴らしていた。


「ダイエット、頑張ったのね。でも、ちょっと……急激に痩せすぎじゃないかしら?」


私は慎重に言葉を選ぶ。


「その、体調は大丈夫なの?」


「あら、心配してくださるの?」


クラリッサはくすりと笑った。その笑い方に、私は眉をひそめる。

どこか棘を含んだ、相手を試すような挑発的な笑みだった。


「も、もちろんよ……」


「心配は不要よ。……それとも焦っているのかしら?」


「……焦る?」


「私がエリザベート様の力を借りずに痩せてしまったから」


私は目を瞬く。

何を言われているのか理解できなかった。


「な、何を言ってるの?」


「だって、そうでしょう?」


クラリッサの声には、これまで溜め込んできた鬱屈が滲んでいた。


「サロンでは十数カ月もかけて少しずつ痩せると言われたけど、実際は御覧の通りよ」


両腕を軽く広げ、自分の身体を誇示する。


「私は、たった二月でここまで痩せたわ!」


その声は誇らしげだった。

けれど、その瞳はどこか熱に浮かされたようにぎらついている。


「それは、時間をかけて痩せていく方が健康的だからよ」


「あら、すぐに結果を出した方が良いに決まってるわ。結局、エリザベート様の力なんて必要なかった」


「……」


「あんなまどろこっしいやり方なんてせずとも、飲むだけで痩せられるんですもの。はじめからエリザベート様に頼らずにあのサロンに行けば良かったわ」


その言葉に胸がざわつく。

嫌な予感が確信へと変わった。


「……クラリッサ。貴方、飲んだの? まさか、痩せ薬を――」


クラリッサは勝ち誇るように、口元を吊り上げた。


「そうよ、痩せ薬を飲んだの」


クラリッサの返事に、全身から血の気が引いた。

やはり。

最悪の予感が当たってしまった。


「そんな……」


「うふふ、凄いでしょう?」


クラリッサは興奮を隠しきれない様子で続ける。


「最初は半信半疑だったわ。でも飲むだけで、本当に痩せたのよ! 食事制限も運動も必要なかったわ


「クラリッサ、聞きなさい!」


思わず声が強くなる。クラリッサが眉間に皺を寄せた。

私は真剣な眼差しで彼女を見る。


「そんな急激な減量は危険よ」


「危険ですって?」


「顔色が悪いわ。目の下にも隈が出来てる」


「気のせいよ」


「痩せているというより、やつれてしまっているわ」


その一言に、クラリッサの表情がぴくりと引きつった。

だが次の瞬間には、挑発するような笑みを浮かべる。


「ふふ、焦ってるのね! 私が痩せてしまったから!」


その声は思いのほか大きく、ホール中へ響き渡った。談笑していた貴族たちが何事だと私達へと視線を向ける。

注目が集まるが、彼女は気にも留めない。いや、もう周囲が見えていないのかもしれなかった。


「あなたのサロンへ通わなくても美しくなれるって知られたら、困るものね。皆の憧れじゃ、いられなくなってしまうから――」


「ち、違うわ。私は貴方が心配なだけ……。お願いだから、その薬を飲むのを止めて……」


私は必死に説得する。一歩近づき、その両肩に手を伸ばそうとした。


「貴方は知らないのよ、その薬がどんなに危険なのか。成分だって……」


「嫌よ」


冷たく言い放たれ、私の手は払いのけられた。


「クラリッサ……」


「絶対に嫌よ! せっかく綺麗になれたのに」


彼女は一歩、後退る。その瞳には警戒と不信が浮かんでいた。


「エリザベート様だって、本当は知っていたのでしょう?」


「……何を?」


「こんな簡単に痩せる方法があることを。あなたも、痩せ薬を飲んで綺麗になったんじゃなくて?」


アンネは唇を歪める。


「それなのに教えなかったんだわ。なんて、ずるい人なの……」


「ち、違うわ」


「いいえ、自分だけが特別でいたかったんでしょう?」


私は言葉を失った。完全に誤解している。

けれど、今のクラリッサには何を言っても届かない。


「それは違うわ! 私は健康に気をつけながら自力で痩せて、その方法をみんなにも伝えたくて――」


「止めて! 貴方の偉そうなアドバイスはもうたくさん!」


クラリッサは私の言葉を鋭く遮った。


「ごきげんよう、エリザベート様」


冷え切った声を残し、クラリッサは踵を返した。


「ま、待って――!」


呼び止めても振り返らず、クラリッサは人混みの向こうへあっという間に消えていく。追いかけようとしたものの、行く手を塞ぐ人々に阻まれ、彼女の背中を見送ることしかできなかった。


「エリザベート様!」


聞き慣れた声に振り返ると、アンネが心配そうな表情で駆け寄ってくる。


「どうなさったんですか? なんだか騒がしかったですが……」


「な、なんでもないわ。知人に会って、ちょっとね……。それよりも、アンネはダンス楽しめた?」


取り繕うようにそう言っては、話題を変えた。


「は、はい。おかげさまで。でも、そろそろ夜も更けてきましたし、帰りが遅くなってしまうと思って」


「そうね……帰りましょうか」


私は笑みを作ってアンネに頷き返した。けれど、視線はクラリッサが消えていった方角から離せなかった。

痩せ薬の危険性はきちんと伝えたつもりだった。彼女を心配する気持ちも届いていると信じていた。

……でも、違った。

あの子の心に、私の言葉は届いていなかった。

アンネの恋の行方。安易な痩せ薬に頼ってしまったクラリッサの行く末。そして、ライバルサロンのオーナー・ジゼルに隠された秘密とは!?

物語はまだまだ続きます! 少しでも「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、☆での評価やお気に入り登録をしていただけると励みになります。応援よろしくお願いいたします!


そして、ご報告があります!

『悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~』の2卷が発売されます!2巻では、最強のダイエット食"和食"を求めて、エリザベートはカミルと共に東洋の島国"ヒノモト"へ――!本編は加筆修正を行い、さらに書き下ろし番外編も収録しています。

お手に取ってお楽しみいただけたら嬉しいです!ご興味ある方は、ぜひご予約ください!


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