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【書籍化】悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~【3章スタート】  作者: 冬月子@悪役令嬢のダイエット革命2卷8/1発売!
3章 サロン《ラ・ベル・レジスタンス》と悩める令嬢たち――甘い誘惑と危険な計略

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9話 保養地を作るわよⅢ

しばらく林道を歩いていると、不意に視界がぱっと開けた。

目の前には、陽光を受けてきらきらと輝く清流が流れ、大小さまざまな岩が点在する静かな川原が広がっている。せせらぎの音だけが辺りに心地よく響いている。その美しい光景に見入っていた私は、ふと前方の岩場に違和感を覚えた。


「……あれは?」


巨岩が折り重なる一角から、白い湯気がゆらゆらと立ち上っている。

途切れることなく空へと昇り続けるその白い煙に、胸がどくんと高鳴った。私は思わず駆け出す。近づくにつれ、ひんやりとしていた山の空気が少しずつ温もりを帯び始める。鼻先をくすぐるのは、ほのかに硫黄を思わせる独特の香り。岩と岩の隙間からは、透き通った湯がこんこんと絶え間なく湧き出し、小さな流れとなって清流へと注いでいた。陽光を受けた湯面はきらめき、その上を白い湯気が揺らめいている。


「こんなところにも温泉が湧いているなんて!」


感動のあまり、私は湧き出る湯へ手を伸ばした。

その瞬間、不意に腕を掴まれる。


「エリィ、駄目だよ!」


振り返ると、カミルが苦笑を浮かべながら首を横に振っていた。


「安易に触れてはいけないよ。源泉は場所によって温度が大きく違う。熱湯なら、火傷では済まないこともある」


「あ……」


言われて初めて、自分がどれほど不用心だったかに気づく。


「そ、そうね……。興奮してしまって、つい……」


ぽぽっと頬が熱くなる。慌てて手を引っ込めると、カミルは「気持ちは分かるけれどね」と笑った。

そのまま何も言わず、なぜだか湧き出る源泉ではなく、まっすぐ私を見つめている。


「……なに?」


首を傾げると、カミルは小さく肩をすくめた。


「本当に君は」


「?」


「新しいものを見つけると、子どもみたいな顔をするね」


「え?」


思わず目を瞬く。


「そ、そんな顔をしていたかしら……?」


「していたよ」


迷いなく頷かれてしまい、思わず両頬に手を当てた。

うぅ、年甲斐もなくはしゃいでしまったわ。

恥ずかしさが込み上げて視線を逸らすと、カミルはくすりと笑う。


「だ、だって……楽しみなのよ。ここに温泉が出来ると思うと」


「うん、そうだね」


カミルはくすりと笑った。


「君が作る保養地なら、誰もが訪れたくなる場所になるだろうな」


「大げさよ」


「本当のことだよ。今だって、君の周りにはいつも人が集まっているからね」


サロンのお客様、働いてくれているスタッフたち、アメリアやリリィ……心強い味方たち。

思い返せば、いつも誰かが私のそばにいた。


「でも今日は――」


「今日は?」


私が首を傾げると、カミルはわずかに目を細めた。


それから、どこか照れくさそうに――けれど少しだけ独占欲を滲ませた声音で言う。


「……今だけは、独り占めしていいだろう?」


「……っ」


不意打ちのような一言に、鼓動が乱れた。


「も、もう……!」


言葉に詰まる私を見て、彼の笑みはますます深くなった。

からかわれているのは分かる。

けれど、その眼差しはどこまでも優しくて、まるで大切なものを見つめているようだった。


「君が嫌でないなら、もう少しだけここにいよう」


穏やかな声でそう付け加えられると、もう抗うことなんてできない。

私は小さく息を吐き、視線を伏せた。


「……ええ、もう少しだけ。リリィ達が待ってるもの」


その答えに、カミルは満足そうに微笑む。


「リリィには謝ればいいさ」


「もう……」


カミルは身体を寄せると、私の手に触れた。

指先がかすかに触れ合い、そのままするりと彼の指が私の指の間へ滑り込む。私も指を絡め返すと、重なった手がぴたりと収まった。


「ああ、楽しみだね。完成したら、一番最初に誰を招待するんだい?」


カミルが何気ない口調で尋ねる。

私は少し考えるふりをしてから、ふっと笑った。


「そうねぇ……」


「誰だい?」


「やだ、決まってるじゃない」


「?」


「私たちよ」


一瞬、カミルは目を丸くした。


けれど次の瞬間には、穏やかな笑みを浮かべる。


「それは名案だね」


「でしょう?」


私は少し得意げに胸を張った。


「完成祝いを兼ねて、二人でゆっくり温泉に入りましょうね」


そう言うと、カミルは優しく目を細める。


「うん。その日を楽しみにしてるよ」


その一言には、私と同じ未来を見つめる想いが確かに宿っていた。

まだ何もない土地だ。それでも、こうして二人で未来を語り合っているだけで、この場所には少しずつ命が吹き込まれていくような気がする。


視線の先では、源泉から立ち上る白い湯気が風に揺れ、青空へと溶けていく。

この場所が完成した日、きっと私たちは今日のことを思い出すのだろう。


青く澄み渡る空の下、私は隣に立つカミルを見上げた。

視線が重なると、彼は少し照れたように笑う。つられるように私も笑みをこぼした。

新しく短編作品を書きました!

『俺はお前を愛さない? ええ、私もあなたを愛しておりませんのでご心配なく』

調子に乗った男が痛い目を見る話しがお好きでしたら、是非。よろしくおねがいします。

引き続き、明日も更新予定です。


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