「やっぱり簡単に痩せる方法があったじゃない!」
SIDEクラリッサ
以前のエリザベートは、社交界の笑いものだった。
公爵令嬢という高い身分に生まれながら、その肥えた体は格好の噂の種で、舞踏会では陰口が絶えなかった。誰もが彼女を見下していた。
もちろん、私も。
だって私は痩せていて、私は痩せていて、若く、それなりに容姿にも恵まれていた。家族から期待され、いずれは望まれた結婚をする予定だった。だから彼女は私より下の存在――そう信じて疑わなかった。
彼女を見れば、自分はまだ恵まれているのだと安心できた。彼女が嘲笑われるたびに、自分はあちら側ではないのだと優越感を覚えた。
それなのに。
エリザベートは見事にダイエットを成功させ、華々しく社交界へ返り咲いた。
今では令嬢たちの憧れの的。誰もが彼女の美しさを称え、彼女の言葉に耳を傾ける。
かつてのエリザベートからは想像できない躍進だった。
嘲笑の対象に過ぎず、私たちが見下していた女が、どうして……。
私は、その現実を歯噛みしながら見つめることしかできなかった――。
「ずるいわ……」
私だって、以前は美しかったのに。社交界ではその体型を褒められていたし、結婚だってした。けれど妊娠してからは全てがおかしくなった。
体重が増え、体型も変わった。それでも子供を産みさえすれば、体型は戻ると思ったのに上手くいかない。
もともと情熱的な人ではなかったけれど、最近はますます私へ関心を示さなくなった。
会話も減り、視線すら合わせてくれない日もある。
全部、この体のせいだ。太ったから愛されなくなったんだ。そう考えれば全てが説明が付いた。
だから、本当に……本当に悔しかったけれど、以前は馬鹿にしていたエリザベートを頼った。
彼女が開いているダイエットサロンにも通った。
指導された通りに食事を見直し、運動も始めた。見下した彼女に教えを乞うのも、慣れない生活も苦しかった。甘いものを我慢し、汗を流し、毎日のように体重計へ乗る。
それなのに、思うような結果は出なかった。
多少は減ったけれど、鏡に映る私は理想とは程遠い。
……もちろん、お茶の時間に少しだけお菓子をつまんだ日もあったし、疲れて運動を休んだ日もある。
でも、それくらい誰にだってあるでしょう?
こんなに頑張っているんだから、少しくらい自分を甘やかしたって構わないはずだ。
そう自分に言い聞かせながら過ごしているうちに、数週間が経った。
期待していたほど体重は落ちず、鏡を見るたびに焦りだけが募っていく。
ついに私は、その苛立ちをエリザベートへぶつけてしまった。
「やせ薬があるなら売ってちょうだい」
巷では、飲むだけで楽に痩せられる薬があると噂になっていた。
それさえあれば、私だって元の体型に戻れるのではないか。
けれど、エリザベートは痩せ薬は販売していないと返事をした。
そんな薬を頼ってはいけないと、生意気にも説教をしてきた。
だから私は、その場では渋々納得したふりをした。
けれど、心の中では納得などしていなかった。
それから数日後。
私は別のサロンを訪れ、噂になっていたやせ薬を手に入れた。
半信半疑で飲み始めると、あれほど落ちなかった体重が嘘のように減っていく。
日に日に身体は軽くなり、鏡に映る自分の輪郭も少しずつ変わっていった。
「なんだ……」
思わず笑みがこぼれる。
「やっぱり、簡単に痩せる方法があったじゃない……!」
食事改善や運動なんて面倒なことをしなくても、結果は出せる。
私は間違っていなかったのだ。
きっとエリザベートだって、この薬を使って痩せたに違いない。
「なんて、ずるい人なのかしら……」
自分だけ成功の秘訣を隠して、立派なことばかり口にしていたなんて。
知らず知らずのうちに唇を歪めながら、小瓶をぎゅっと握りしめた。
「これで私も、もう一度美しくなれるわ……!」





