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【書籍化】悪役令嬢のダイエット革命!〜前世の知識で健康美を手に入れてざまぁします!~【3章スタート】  作者: 冬月子@悪役令嬢のダイエット革命2卷8/1発売!
3章 サロン《ラ・ベル・レジスタンス》と悩める令嬢たち――甘い誘惑と危険な計略

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3話 甘い誘惑とその代償

ええ、と私は静かに頷いた。

その言葉を聞いただけで、胸の奥がひどくざわつく。


「最近、若い令嬢たちの間で広まっているらしいの。“飲むだけで食欲がなくなり、みるみる痩せる”……そんな触れ込みで」


「そんな都合の良い薬が、本当に……?」


「あるわけがないでしょう」


ぴしゃりと言い切った自分の声に、リリィが小さく肩を震わせた。

しまった、思った以上に語気が強くなっていたらしい。私はすぐに表情を和らげたものの、報告書に添えた指先には知らぬ間に力が入っていた


「報告によれば、その薬を飲んだ令嬢たちは、確かに急激に体重を落としているらしい……けれど。同時に、激しい眩暈、動悸、不眠、情緒不安定――身体を蝕む症状も次々と現れているそうよ……」


酷い者は食事すら受けつけなくなり、寝台から起き上がれなくなったとも書かれている。


――愚かしい。


健康を削り。

心を壊し。

そうまでして得た“細さ”に、一体どれほどの価値があるというのだろう。


「……許せませんね」


ぽつりと呟いたリリィの声は、怒りよりも痛みに近かった。

私は静かに頷く。


彼女もまた、この歪んだ価値観に苦しめられたひとりだったから。


痩せていることこそが美徳。華奢で儚げであるほど、殿方に愛される。

そんな馬鹿げた価値観が、社交界には根深く蔓延っている。


少しでも太れば陰口を叩かれ、嘲笑される。だから令嬢たちは、自分を追い詰めていくのだ。

食べてはいけない。痩せなければ。美しくならなければ――と。


「リリィ、あなたも……そうだったものね」


私がそっと名を呼ぶと、彼女はかすかに睫毛を震わせた。


今のリリィからは想像がつかないけれど、かつての彼女は拒食症寸前にまで追い詰められていた。

食べ物が喉を通らず、腕は折れそうなほど細くなり、肋骨が浮き出るほど痩せ細っていたのだ。頬はこけ、唇は色を失い。まるで、存在そのものが少しずつ削り取られたようだった。


――私は、あの姿を忘れない。

忘れるものか。だからこそ、同じ苦しみを、これ以上誰にも味わわせたくはなかった。


「エリザベート姉さま……」


リリィが案じるように私を見る。

私は瞼を落とし、それからゆっくりと首を縦に振った。


「……ええ。なんとかしないといけないわね」


無知につけ込み、不安を煽り、若い娘たちの心と身体を食い物にするなんて。そんな行為を見過ごすわけにはいかなかった。

そんなものは“美”ではない。

ただの、醜悪な搾取よ。


「あの、お話し中すみません……」


躊躇いがちにアメリアが声を掛けた。


「そろそろ新規のお客様がお見えになる時間です。ご案内しても宜しいでしょうか?」


悪徳サロンの事は放っておけない。

……とはいえ。今優先すべきものは別にある。まずは、私に助けを求めてここを訪れる女性を救わなければね。

私は息を吐き、気持ちを切り替えた。


「ああ、もうそんな時間なのね。ええ、お通しして」


私が頷くと、アメリアは丁寧に礼をして部屋を下がる。

ほどなくして、ひとりの令嬢が恐る恐る室内へ足を踏み入れた。


年の頃は十代の終わりか、それとも二十歳になったばかり。私と同じくらいの年頃だ。


……その姿には見覚えがあった。

ヒロインであるルチアの取り巻きだった令嬢。かつて肥っていた私を陰でひそひそと笑い、影口を叩いていた一人だ。


しかし、あの頃の自信はどこへやら。濃い緑色のドレスに身を包んでいるものの、その仕草にはどこか自信のなさが滲んでいる。胸元でぎゅっと両手を握り締め、落ち着かないように視線をさまよわせる姿からは、張り詰めた緊張がひしひしと伝わってきた。

そんな彼女を安心させるように、私はできるだけ柔らかな笑みを浮かべた。


「《ラ・ベル・レジスタンス》へようこそ。よく来てくださったわ」


令嬢の肩が、ぴくりと揺れた。


「ここへ来たということは……きっと、何か悩みを抱えているのでしょう?」


私はそっとソファを示す。


「大丈夫。まずは、あなたのお話を聞かせてちょうだい」

しばらくの間、2日に1回更新予定です。よろしくおねがいします。

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