工房へ向かって
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ルーンに捕まれ俺はまさに浮いているような感じで引っ張られていた。
横を見るとテオがいるがラミスはいない。
一気にルーンが走ったために状況が掴めていなかった俺はルーンに話しかけてみた。
「急にどうしたの? ラミスは?」
「ラミスなら後ろにいるわよ。」
顔を後ろに向けると確かにラミスの姿があった。
「さて、どうしたもんかな。」
ラミスは後ろに目があるかのように状況が見えている感じだ。
「ルーン、儂はロキサレムを呼びに行くから先に行っておれ。テオルンもだ。」
「はーい。一応大丈夫だと思うけど、気を付けてね。」
ラミレスが離れていくのがわかる。今は湖の半分くらい進んだだろうか。
「さぁ、ちょっとペースを上げるわよ。」
「ルーン様、これ以上は早過ぎるぽー。」
「なによテオ、あんた軽いでしょ?」
「早く走るのと体型は関係ないぽー。」
微妙に噛み合ってなくてなんか面白いなぁ。
「ところでラミスはロキ爺さんがどこにいるかわかるの?」
「さぁ、でもわかるんじゃない? ラミスだし。」
「あのドワーフはきっとガハガハ言ってるからすぐわかるぽー。」
ぽーぽぽーぽーぽーぽーぽー。
ダメだ。また頭の中でぽーの歌が作られていく。
「それよりルーン、俺浮いてない?」
ルーンは見た目より力があるらしい。俺を掴んで飛ぶように走っている。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわよ。」
あなた次第みたいな言い方でそう言ってくる。
「なにその言い方ー。」
「なんだっていいでしょ。だいたいなんで私がユウを運ばなきゃいけないわけよ。あーりーえーなーい。」
「そんなこと言われてもしょうがないじゃん。」
「ユウ、あんた、あいつにもらってた宝石を何かで手を打つわよ? どう?」
「足元みてきたな。考えとくね。」
「考えるじゃなくて、良いよって言えないわけ? まったく。」
口煩いお姉ちゃんとかいたらこんな感じなのかなー?
「ぽー。早いぽー。」
テオは小人族。俺もルーンもサイズ的にはテオとそこまで大差はないが、ルーンの速さが異常なのだ。
「テオ、もう少しで着くわよ。」
「ぽー。頑張るぽー。ドワーフのせいで悲惨な目にあってるぽー。なんか貰わないと割に合わないぽー。」
ぽっぽっぽーぽーぽーぽーぽぽぽぽぽー。
俺が頭の中でぽーの歌を考えている間にルーンは目指していた場所に到着したようだ。
「着いたわよ。」
「ようやくだぽー。疲れたぽー。」
「はい、お水。」
俺は持っていた水をルーンとテオに渡す。水は毎日森に行くときに用意して持ち歩いているのが役に立った。
「ありがとぽー。」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
「ユウはいつもこんなの持ち歩いてるぽー?」
こんなのとは水瓶のことだろう。
「水瓶のこと? そうだよ。だって他にどうやって持ち歩くの?」
「そういえば全然気にしてなかったけど、確かにユウは変。変よ。」
「えー、ルーンもエレイナも特に何も言ってくれてないじゃん。」
「あまりに当たり前すぎて気にしてなかったわ。まぁ私たちはカップを持ってるからどうにでもなるんだけど。」
「とにかくぽー、ユウはスキルがあるから大丈夫かもしれないぽー。でも普通は水瓶なんか持ち歩かないぽー。」
「そうそう。あんたやっぱり頭おかしいのね。」
「やっぱりって何・・・」
「あっ、聞こえてた? あはは。」
「まぁ良いよ。ルーンは宝石無しだね。」
「えぇぇぇぇぇ、ありえない! ありえなーい!」
「ふーんだ。」
テオがふと笑う。
「ルーン様、前にお会いした時より元気で明るいぽー。」
「あれからだいぶ経つし、あの時よりは力も回復しているわよ。」
「良かったぽー。このまま元気になるぽー。」
「これ以上元気になったら手がつけられなく・・・いたた。」
ルーンに二の腕をつねられる。
「ひどいルーン。痛いじゃん。」
「私は知らないわよー、レディーをけなすから罰でも当たったんじゃない?」
「二人は仲良しぽー。」
ところでここはどこだろう。森の中に入ったことはわかるがこれまでと明らかに空気が違う。
俺はあたりを見回すと見たこともない植物がいっぱい育っている。
「あぁ、ユウには一応説明しておくと、ここは人間は入れない場所よ。」
「え? そうなの?」
ルーンが言うには、
俺たちが休憩していた湖の湖畔辺りまでは人も運が良ければこれる可能性はある。
だけど今俺がいる場所は通常だと辿り着けないようになっている。詳しくは教えられない。
ルーンがいるから俺も入れている場所。
ということらしい。
「そういうわけで、私がいるからユウは大丈夫だけど、今後来ようとしてもそれはユウでも無理ね。」
「テオは例外。ロキはそもそもこっち側で生活してるから問題ないのよ。」
「そうなんだー。じゃあロキ爺さんに会いに来ようとしても無理じゃんね。」
「正面から行くのは無理ね。そこはテオに協力してもらう必要があるかしら。」
「ぽー?」
「ほら、あんたたちとハイドワーフは地下でやり取りしてるでしょ?」
「なるほどぽー。」
テオは納得したように相槌を打つ。
「それが例外ってことなのよ。まぁもともとテオたちの種族は問題ないんだけど。」
「私たちがこっちのドワーフとエルフ両方と取引してるからって話しだぽー。」
「その通りよ。ここは本来は空からも地下からも絶対に入れないようになっているからテオたちの集落はギリギリ外だかんね。」
「でも普通のエルフもドワーフもここに入れるぽー?」
「そうね。でも種族で全員が入れるわけじゃない。中には入れなくなる者も出てくるってわけ。」
二人はなかなか興味深い会話をしているが俺は忘れていたことを思い出した。
「それより、すっかり忘れてたけどラミスとロキ爺さんは無事に来れるかなー?」
なんだかんだと話したり休憩したりしていたから俺たちが今いる場所に着いてから結構な時間が経っている気がする。
「ガハハ、ルーン様、待たせてすまんかったな。ガハハハ。」
「やっぱり無事だったわね。あんたやっぱりまだまだ長生きするわよ。」
ロキ爺さんは斧を手に持ってはいたが、全く疲れを感じさせないのが凄い。
それに鎧も着てるし、走ってきたとしたら凄い体力だ。
「ガハハ、どうしたのじゃ?」
「その鎧と斧持ってここまで走ってきたって考えたら凄いなーって。」
「ほえ?」
ロキ爺さんが間の抜けた声をあげる。
「ガハハハハハ。そんなことを考えとったのか? ガハハ。」
「だって鎧も斧も重いでしょ? 俺はルーンに引っ張られてただけだから楽させてもらったけど、テオは大変そうだったしね。」
「そうだぽー。大変だったぽー。だいたいドワーフが余計なこと言うからこんな目にあってるぽー。」
「ガハハ。儂はドワーフじゃないぞ小人、ハイドワーフだ。」
「どっちも見た目は同じようなものぽー! それより、私は疲れたからロキソニアにお詫びの品を要求するぽー。」
んっ? ロキ爺さんがさり気なく言い返した? ハイドワーフとドワーフの違い。ここはプライドがありそうだから気を付けなきゃいけないかも。
「なんで儂が小人に何かをわたさにゃいかんのじゃ。ガハハ。」
「ロキソニアがユウを連れてくるなんて言うからぽー!」
え、俺が悪いみたいな感じ? いやいや、そこはラミスでしょ。俺はそう思いながら
「それで、ロキ爺さんはどうやってここまで来たの?」
「おぉそうじゃ、ユウと話しをしておったのに小人と話してたら忘れておった。ガハハ。」
「あんたそれボケが始まるかもしれないから気を付けなさいよ。」
「ガハハ。その時はルーン様とエレイナ様に世話になりますわい。」
「・・・お・こ・と・わ・り。」
「ガハハハ。それでユウの質問の答えは、しんじゅ・・・あいたたたた。」
いつの間にかラミスが戻ってきてロキ爺さんに後ろから角でチョップをする。
ロキ爺さんはいわゆる超ロン毛のセンター分け。その分け目に合わせて綺麗にチョップが入る。
「おっ、し、違った、ラミー様、世話になりましたぞ。ガハハ。」
「待たせたな。だいぶ休めたか?」
「待ちくたびれたわ。さっさと出発しましょう。」
結局ロキ爺さんがどうやって来たのか分からずじまいだしー。
それにまだこれからどこかへ向かうのかぁ。
家から結構遠いし、ここは森のどの辺なんだろう?
「私とラミスは入口まで案内するからそこからは3人でよろしく。」
ルーンがそう言って歩き始めラミスと何かを話し始める。
そして俺はだんだん緊張してきた。だって生きて辿りつけるか分からないって言われてるしね。
でも行くしかないと自分に言い聞かせていると
「ところでユウは帰るときはどうするのじゃ?」
ラミスに聞かれて俺は気付く。
たしかに。俺一人で帰るのは無理があるよねー?
「ガハハ。そこまで考えておらんじゃったです。」
「そんなことだろうとは思っておったが・・・ルーン、家に戻ったらエレイナとあいつにこのことを伝えておけ。」
「えー、ラミスが言えば良いじゃない。」
「儂の代わりにハイエルフや魔獣の調査をするか?」
「やだー。なにその選択肢は! わかったわよ。帰ったらあいつに穴を掘らせればいいってことね。私からも声をかけるけど何か影響が出ないとも限らないからラミスもそこはよろしくね。」
「あいわかった。それとテオルン、お主も工房から儂らの屋敷へ穴を掘り進めてくれ。ルーンはあやつにテオルンと合流しろと付け加えてくれ。」
たぶん、土竜くんが土竜くんらしく本領発揮をするんだね。テオも地面を掘れるのは意外。
でもそのおかげで俺も帰れそうだし、良かったよかった。
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