表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/37

砦に到着

 一矢達の進む先に建物が見えてきた。


 それは以前、一矢達が滞在していた魔族討伐隊の前線基地であった。


 一矢達はそれを見て、懐かしさにも似た感情が沸き上がって来るのを感じていた。


 どんどん近付くにつれ、砦は以前と様相が違うのに気が付いた。


 砦の塀には大きな返しが付いており、大きな門が見える。


 そして塀の周りには堀が造られ、正に砦然としていた。


 以前の砦はもっと簡易的なもの、キャンプ地を塀で囲っただけのものだった。


 一矢は砦へと魔族が攻め込んで来たことを思い出す。


 あの時は多くの死者を出し、そして一矢が初めて自分の手で魔族を殺した戦いだった。


「何者だ!」


 一行が門へ近付くと門の上にある穴から兵士が叫んできた。


「我等はエレナ姫とそのお付きの者達である! 開門されたし!」


 一矢達の馬車を操る行者が答える。


「エレナ姫だと? そんな報告は受けていない! 証拠を見せろ!」


「貴様! 姫に対し無礼だぞ! 確認したくば貴様が降りてこい!」


 押し問答をしている中、一矢は馬車の中で立ち上がった。


「しゃ〜ねえな。ここは俺の出番か」


「ちょっとあんた、何するつもりよ?」


 一矢はエイミーを見て、ニヤリと笑う。


「ちょっくら行ってきて、門を開けてもらうよ。何てったって砦を救ったヒーローだからな。俺なら顔パスだよ。ふふん」


「……本当に大丈夫?」


「当たり前だよ。エイミーは見てなかったから知らないだろうけどな。そりゃあもうスゴかったんだぞ!」


 それでも疑いの眼差しを向けるエイミーに今度はクレアが言う。


「確かに一矢さんの活躍は凄かったスからね! さあさあ、軽く開けてもらっちゃって下さいッス!」


「やっぱり? じゃあちょっと行ってくるね〜」


 そう言って一矢は颯爽と馬車から飛び降りた。


「クレア、本当にそう思ってる?」


 エイミーがクレアを見る。


「ん〜、どうッスかね。取り敢えずどうなるか早く見たいッス」


 一矢はにこやかな笑顔で両手を振り、門の方へと歩み寄る。


「みなさ〜ん! 異世界ヒーロー・一矢さんが帰ってきましたよ〜! イエ〜イ! サンキュー!」


 一矢の声が静かな砦に響き渡った。


『……アレ?』


 一矢は心に冷たい風が吹き抜けるのを感じた。


 兵士達はボソボソと囁きあい、一矢に疑わしげな視線を投げるばかりだった。


 挙げたままの両手のみならず肩を震わせ、目頭が熱くなっても決して泣くまいと一矢は歯を食い縛った。


 そんな一矢の様子にエイミーは自分も恥ずかしくなり顔を伏せ、クレアは笑いを堪えるのに必死だった。


「これこれ! 一矢さん、こっち向かないッスかね〜。今どんな顔してんスかね?」


 馬車の中で誰かが立ち上がる気配にエイミーは顔をあげる。


 足音を荒げて馬車を降りたのはベティーナだった。


 ベティーナは一矢の横に立つと持っていた槍を兵士達に向け、怒気のこもった声で叫んだ。


「この砦の為に死力を尽くした一矢殿の顔を忘れたのか! 討伐隊には恩義の念は無いのか!」


 兵士達はベティーナの剣幕に驚いている様子だった。


「ベティーナ殿……おいっ、ベティーナ殿だぞ」


 そう言う声が一矢達の所まで聞こえてきた。


 そして門は程なくして開かれた。


「流石一矢殿ですね。やはり兵達は一矢殿への恩は忘れていなかったんですね」


 そうベティーナに言われても一矢は顔を上げることは出来なかった。


「ダサいッス! ベティーナさんは覚えられてるッスのに! やっぱりついて来て良かった〜」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ