玉座の間
アラン・ギルバード・ヘインズ王はその時、玉座の間でとある領主との面会に応じていた。
上っ面だけの謝辞と献上品がどれだけ素晴らしいものかの説明を聞き流し、玉座に座っている。
『余がそんな事も知らんと思っているのか?』
そう言った時の領主の顔を思い浮かべ、一番効果的なタイミングを見計らっていた。
そして異変に気が付いた。
遠くから騒然とした雰囲気を感じ取る。それは徐々に近付いて来ている。
周りに控えている近衛兵もそれを感じ取っていた。気付いてないのは領主だけ。
騒ぎの原因は既に怒声や争う物音が聞き分けられる距離まで近付いている。
世界の中心たるこの城で、しかも玉座の間近くでこれ程の騒ぎが起きることなどあってはならない。
アラン王はどれ程の罰が相応しいか考え始めていた。
『首謀者とその家族は処刑するとして、衛兵達はどうするか。あまり厳しくすると大臣が煩いが……』
隣に立つ近衛兵長が部下に目で指示を送り、様子を見に行かせる。
四名の近衛兵が玉座の間を出て暫くしても争いは止むことがない。
とうとう領主も玉座の間入口を心配そうに眺め始めた。
扉が乱暴に開かれた。
近衛兵二人と一矢が玉座の間に入ってきた。
明らかに庶民の格好をした一矢が近衛兵の腕を掴み、両手に一人ずつ近衛兵を引きずっている。
アラン王はその姿に驚愕したが、直ぐに王の威厳を取り戻す。
玉座に居た近衛兵達が抜刀し立ち塞がる。
「止まれッ!」
「悪いが俺はキングに用があるんだよ。ポーンは引っ込みな」
一矢は不敵に笑う。
『くぅ〜ッ!決まった!俺格好良くね?台詞考えておいて良かった〜!』
自分に酔いしれる一矢に近衛兵が襲いかかる。
右手の近衛兵を振り回して投げる。
吹き飛ばされた近衛兵は他の近衛兵に激突する。
だが、あと二人近衛兵が残っている。
一人の近衛兵が剣を抜き、一矢に斬りかかる。
左手に掴んでいた近衛兵を投げつけるが、身をひねってかわされてしまう。
「げっ! マズい!」
一矢は降り下ろされた剣をかわし、近衛兵を思いっきり突き飛ばす。
突き飛ばされた近衛兵はもう一人の近衛兵を巻き込み、壁際まで吹き飛んだ。
「ヒイイィィィ〜〜ッ!」
それを見た領主は王の足元まで這って逃げる。
そんな領主をアラン王は一瞥し、一矢を見た。
威厳に満ちた眼差しも一矢はどこ吹く風と受け流す。




