城の様子
「それで?上手くいったの?」
エイミーが振り向くと、一矢は目の前を飛ぶディナを睨んでいた。
城を脱出してからずっとディナは一矢の事をバカにし、笑っている。
「ホント、虫か何かと思ったわ。『アレ?一矢はどこ? この気持ち悪いのは虫だし』ってね。キャハハハ!」
ディナはクルクル回りながら、お腹を抱えて笑っている。
「うるせ〜っ! しつこい! しつこ過ぎるわ!」
半べそかきながら振り回す一矢の拳は虚しく空を切る。
空が白み始めたが、町は静寂に包まれている。
そこに二人の声がやけに響き渡る。
「あんた達、静かにしなさいよ! 誰かに見られるわよ?」
エイミーに急かされ、三人は足早に宿屋へと戻った。
「それでどうなのよ?上手くいったんでしょうね?」
部屋に着くとエイミーが尋ねる。
「取り敢えずお姫様に会えたよ。それで王様に伝えてくれるってさ」
「そう。じゃあ大丈夫なのよね? これで」
「さぁね。後は王様が伸るか反るかってところでしょ。今日は寝て、夜にまた出直してこよう。その時にきっと分かるよ」
「では、こちらが一日経ったお城です」
「何よ、その言い方」
一矢達はまた夜になると再び城の近くにある路地裏へと身を潜ませていた。
「まぁまぁ、細かい事は置いといて。それでどう思う?」
「はぁ?」
エイミーはつい声を大きくしてしまい、慌てて口を押さえる。
「……何であたしに聞くのよ!」
「良いから、良いから。それでお城見てどう思う?」
エイミーは路地裏からそっと顔を出す。
しばらく様子を伺うも内壁しか見えない。
見回りが歩いているのも昨日と変わらない。
だからエイミーは素直にそう言った。
「何も。昨日と見たまんまよ」
「ホント? 警備も変わらない?」
「変わらないんじゃないの? そんなの……」
そう言いながらエイミーはもう一度覗いてみる。
するとまた見回りが歩いていくのが見えた。
確かに警備は昨夜より増えているかもしれない。
昨夜忍び込むために見回りが来る間隔チェックしたのだから間違いない。
「……今夜、見回り多い気がする。忍び込むのは難しそうよ」
「そうだね。だから予め中の様子も知りたいわけ」
一矢はそう言うとチラリとディナを見た。
エイミーは一矢の言いたい事を察し、ディナに頼んだ。
「お願いディナ。ちょっと中の様子見てきてくれる?」
「お姉様のお願いを断るわけ無いですわ! 隅から隅まで見てきます!」
「あっ、俺が居た窓の辺りだけで良いから」
「ゴキブリが居た所ね。分かりました〜」
ディナは一矢の方を見ずにすいーっと飛んでいった。
その背中を一矢は笑顔で、そして歯軋りしながら見送った。
「誰がゴキブリだ! この女好き好色妖精め!」
「……あんたが言うな」
エイミーはため息をつく。
ベティーナ達の事が懐かしい。
『この三人で居るの、疲れる』




