第6話 最強の女王
「へへへ……やったぜ!」
第3姫騎士フェレルにも勝った。
これで四連勝だ!
俺が闘技場で喜んでいると、四人の女性が姿を現した。
エルニーニョ、コリオリ、ビューフォート。
そして、服を着直したフェレル。
俺が倒した姫騎士たちだ。
(……ん? 何だよ、四人そろって)
(ま、まさか、仕返しじゃねえだろうな!?)
そのときだった。
ズウウウウウンッ!!
「うわあっ!?」
突然、轟音とともに巨大な玉座が現れた。
そこには、ローレンツ女王が座っていた。
白金に輝く甲冑。真紅のマント。大きな王冠と、幾重にも重ねられた首飾り。両腕には、豪華な腕輪がいくつも輝いている。
四人の姫騎士は、一斉にひざまずいた。
「女王陛下! 申し訳ございませぬ!」
フェレルが深く頭を下げた。
「他の者には罪はありませぬ! このフェレルのみを処罰ください!」
「いいえ! 陛下! 我ら全員の責任にございます!」
ビューフォートも、すかさず申し出た。
女王は、しばらく四人を見つめていた。
女王は、にやりと笑った。
「よかろう! そなたら全員で、妾にかかって参れ!」
「…………!?」
「一撃でも妾に当てることができたなら、今回の失態は不問としてやろう!」
(……は?)
(あのバケモン女たちを、四人まとめて!?)
エルニーニョが顔を上げた。
「い、いくら女王陛下といえども、我ら全員でかかれば……!」
コリオリも、ビューフォートも、静かに構えた。
しかし、フェレルだけは青ざめていた。
「ふふふ。遠慮はいらぬぞ!」
女王は、玉座に座ったまま片手を差し出した。
「お手向いいたしますぞ!」
「許す。さあ、参れ!」
エルニーニョが地面を蹴った。
コリオリが猛烈な勢いで駆け出し、ビューフォートが拳を振り上げた。
さらに、フェレルの周囲には巨大な旋風が巻き起こった。
ゴオオオオオッ!!
四人が、一斉に女王へ襲いかかった。
だが。
女王は、玉座に座ったまま、片手を軽く横へ振った。
ドゴオオオオオオンッ!!
「ぐはっ!」
「きゃあっ!」
「くううっ!」
四人の姫騎士が、まとめて場外へ吹き飛ばされた。
「…………」
俺は、口をぽかんと開けた。
(……へ?)
(な、何だよ、今の……)
フェレルが、よろめきながら立ち上がった。
「くっ……! やはり及ばぬか……!」
「この未熟者ども!」
女王の声が響き渡った。
「束になれば、妾に一撃でも当てられると本気で思ったか!」
「まあ、よい。今回のことは咎めぬ。さらに鍛錬を積むがよい!」
「ははっ!」
四人が深く頭を下げた。
(……おいおい)
(あんなバケモン女たちが、赤ん坊みたいに吹っ飛んだぞ……)
そのとき、女王が俺を見た。
「さて、異世界人よ!」
「は、はいっ!?」
「次の相手は、妾じゃ!」
「…………へ?」
女王は、堂々と言い放った。
「姫騎士序列第1位は、このローレンツじゃ!」
「ひええええええっ!!」
(じょ、女王様が第1位!?)
(な、何で今まで黙ってたんだよおおお!!)
「一週間後、妾と勝負じゃ! 妾に勝てば、残る姫騎士との勝負は不要。約束どおり、屋敷と一生遊んで暮らせる財を与えよう!」
「お、おおっ!」
「負けたなら、一生この王宮で姫騎士たちの慰み者となるのじゃ!」
「そ、そんなあああっ!」
女王は、愉快そうに笑った。
「ふふふ。覚悟しておくことじゃな!」
* * *
「くそ~~! どうすりゃいいんだよ~~!」
王宮の一室で、俺は頭を抱えていた。
あんな女王様に勝てるわけがない!
だが、勝てば豪邸と、一生遊んで暮らせる金が手に入る。
「……よし! 今度こそ、いい能力を引き当てるぞ!」
俺は、能力の一覧を開いた。
『対象女性のまつ毛を一本だけ伸ばす』
「いらねえ!」
『対象女性の靴下の中へ、小石を一個だけ入れる』
「もっとまともなのはねえのかよ!」
そのとき、ある能力に目が止まった。
『王家の血を引く女性の動きを、十秒間だけ完全に停止させる』
「……ん?」
王家の血を引く女性。
つまり、女王様だ。
「こ、これだあああっ!!」
十秒間動けなくして、その間に抱きかかえて場外へ運べばいい!
女王様は、それほど大柄ではない。
体重は六十キロくらいだろう。
「へへへ……今度こそ勝てるぜ!」
問題は、十秒以内に運べるかどうかだ。
「よし! 特訓だ!」
* * *
それからの一週間、俺は必死だった。
六十キロの砂袋を抱え上げ、決めておいた距離を走る。
「ぐおおおおっ!」
重い!
腕が震える!
腰が痛い!
最初は十五秒以上かかっていた。
だが、何度も何度も練習した。
そして、決戦前日。
「はあっ! はあっ!」
俺は、砂袋を抱えて走り抜けた。
時計を確認する。
「……九・八秒!」
「や、やったあああっ!!」
ついに十秒を切った!
(へへへ……これなら勝てる!)
(待ってろよ、女王様! 豪邸はいただきだぜ!)
* * *
一方、王宮では。
「女王陛下」
侍従長が、おそるおそる口を開いた。
「何じゃ?」
「明日の決闘の件でございますが……」
「うむ」
「お恐れながら、あの異世界の男は、これまで幾人もの姫騎士様を、得体の知れぬ術で破っております」
「それがどうした?」
「女王陛下といえども、万全の対策を講じられたほうが……」
女王の眉が、ぴくりと動いた。
「……妾に対策をしろと?」
「はっ! い、いえ! そのようなつもりでは……!」
「要らぬ!」
「ひっ!」
侍従長が、びくりと身を震わせた。
「これまでの試合はすべて調べた。あやつに妙な力を使わせねばよい。それだけのことじゃ」
「し、しかし……せめて、闘技場の周囲に替えの衣装をご用意するなど……」
「まだ申すか!」
「ひ、ひいいっ! 失礼いたしました!」
侍従長は、深々と頭を下げた。
「普段どおりの鍛錬で十分じゃ。余計なことを考える必要などない」
そう言い残すと、女王はいつもの鍛錬場へと向かった。
* * *
そして、決戦の日。
王宮の闘技場は、これまでにない熱気に包まれていた。
俺の前には、ローレンツ女王が立っている。
王冠、首飾り、腕輪、白金の甲冑。
真紅のマントをまとった、豪華絢爛な姿だ。
女王は、ゆっくりと王冠に手をかけた。
「ふむ。では、妾も支度をするとしよう」
そして、王冠を外して地面に置いた。
ドゴオオオオンッ!!
「うわあっ!?」
地面がひび割れた。
続いて、首飾りを外した。
ドゴオオオンッ!!
さらに、腕輪と甲冑も外していく。
ドゴオオオオオオンッ!!
「ひ、ひいいっ! 何なんだよ、その重さは!?」
「クリプトンナイトじゃ!」
「げええっ! あの金属かよ!」
(ビューフォートがつけてた、あのバケモンみたいに重たい金属!)
(それを全身につけてたって!?)
女王は、最後に真紅のマントを取り払った。
「…………!」
俺は、思わず息をのんだ。
現れたのは、身体にぴったりと沿った、レオタードのような戦闘服姿。
すらりと伸びた脚。
引き締まった腰。
そして、豊かな胸元。
「妾は試合となれば、この姿で全力で戦う!」
「…………」
(す、すげえスタイルだ……!)
(あの胸! あのお尻! た、たまんねえ!)
(へへへ……十秒間動けねえんだろ?)
(だったら、あのレオタードをひん剥いて、すっぽんぽんにして……〇〇も□□も全部見て、お嫁にいけなくしてやるぜ。えへへへ~~~)
(よし! 十秒だ!)
(十秒間、女王様を止めて……!)
審判が、腕を振り上げた。
「両者、構え!」
「始め!」
「ぶべっ!!」
俺は女王に一瞬で掴まれ、闘技場の外へ投げ飛ばされていた。
「しょ、勝者、ローレンツ女王陛下!」
「決着時間、〇・〇一秒!!」
わあああああああああっ!
闘技場が、割れんばかりの歓声に包まれた。
(な…なんにもできなかった……)
女王は、ゆっくりと俺の前に歩み寄った。
「さて、異世界人よ」
「ひ、ひいっ!」
「約束じゃ! これよりそなたは、一生この王宮で姫騎士たちの慰み者として暮らすのじゃ!」
「そ、そんなあああっ!」
(宮廷暮らし! 食うにも住むにも困らねえ!)
(しかも、あの美人ぞろいの姫騎士たちと……)
女王は、艶やかに微笑んだ。
「もちろん、最初の味見は妾じゃ!」
女王は、優雅に唇を湿らせた。
「ひいいいいいいっ!!」
(や、やったあああああっ!!)
俺の目は、女王様の胸にくぎ付けだった。
ちょこちょこ手を入れているんですが、良くなっているのやら、悪くなっているのやら・・・。
少しでも、みなさまが、物語を読みやすくできればと頑張っています。




