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確認事項

 昼休み、俺は「先生に確認すること」の欄を書き写したメモを持って、職員室へ向かった。廊下はまだ昼休みの空気が残っていて、あちこちで生徒たちが立ち話をしている。担任は自分の席で、書類に目を通しているところだった。


「すみません、文化祭の準備でちょっと確認したいことがあって」


「ん、どうした」


「模擬店で火とか電気とか使う場合、何か制限あるか聞きたくて」


 担任はメモを覗き込みながら、少し考えるような間を置いた。


「火は使っていいけど、使用は決められた場所だけだな。あと電源は、教室あたり二口までって決まってる」


「二口だけですか」


「ああ。延長コードの使用は禁止されてる。あとタコ足配線もな」


 俺はメモにその内容を書き足した。二口まで、延長コード禁止、タコ足配線禁止。予想していたよりも制限は少なく、聞けば済む程度の話だった。


「あと、使用できる場所って、どこか決まってるんですか」


「校舎裏の決められた一角だけだ。詳しい場所は今度配られるプリントに図面がついてる」


「わかりました。ありがとうございます」


「ちゃんと班のみんなにも共有しとけよ」


「はい」


「それと、他にも聞きたいことあったら、遠慮なく聞きに来ていいからな。去年もこの時期、色々な班が確認しに来てたし」


「わかりました」


 俺は一礼して職員室を出た。廊下を歩きながら、メモに書き足した内容をもう一度読み返す。特に大きな問題はなさそうだったが、電源が二口までという点は、頭の片隅に残った。


 昼休みが終わる少し前、教室に戻ると、買い出し班のメンバーが数人集まっていた。


「先生に聞いてきたか?」


「聞いてきた。火は決められた場所だけ、電源は二口まで、延長コードとタコ足配線は禁止」


「二口かー、思ったより厳しいな」


「思ったよりは緩い方じゃないか。全面禁止とかもあり得たし」


「まあ、それはそう」


 俺はメモを見せながら、班のメンバーと一緒にリストを見直していく。


「電源使うものって、今のところ何かあるか」


「まだ具体的にはないな」


「メニュー決まったら考えるか」


「だな、今の時点で心配しても仕方ない」


「他のクラスってどうしてるんだろうな、この辺」


「さあ、聞いたことないな」


「隣のクラスも模擬店らしいから、今度聞いてみるか」


「聞けたら教えて」


 模造紙の「先生に確認すること」の欄に、今日聞いた内容を蓮司が書き加える。誰かが「これで一つ片付いたな」と呟いた。


 そんな軽いやり取りを交わしながら、班のメンバーはそれぞれの作業に戻っていった。俺はリストの空いた欄に、校舎裏の設備場所についても書き足しておいた。


 放課後、教室で今日確認した内容を整理していると、看板担当の机から結菜がこちらに来た。


「今日、先生に何か聞いてきたんだって?」


「電源とか火気の話。看板の方には特に関係ないと思うけど、一応共有しとく」


 俺は簡単に内容を伝えた。


「ふうん。じゃあ看板の方は特に関係ないか」


「多分な。そっちはどう、進んでる?」


「サイズと骨組みは大体決まった。あとは色くらいかな」


「色、赤と黄色で進めてるんだっけ」


「うん、そこは決まった。あとはどっちを多めにするかとか、細かいところ」


「メニューまだ決まってないのに、色決められるのか」


「色の方向性くらいは先に決めとけるから。細かいのはメニュー決まってからにする予定」


「それもそうか」


「深水くんも、リスト先に作れるとこだけ進めてる感じでしょ」


「まあ、そうかもな」


 結菜はメモに何か書き足しながら、少し笑った。


「じゃあ、メニュー決まったら本腰入れる」


「ああ」


 結菜は看板担当の机へ戻っていった。俺は鞄の中身を整理しながら、今日確認したことをもう一度メモで見返す。電源二口、火気は指定場所のみ。今のところは足りているはずだが、この先メニューが決まった時にどうなるかは、まだわからなかった。


 鞄を持って教室を出ると、廊下の先で弥生が友人たちと下校していく後ろ姿が見えた。特に声をかけることもなく、俺はそのまま昇降口へ向かった。夕方の光が窓越しに差し込んでいて、下駄箱の前まで来ると、部活帰りらしい生徒たちとすれ違う。今日は少し風が強く、校庭の砂埃が舞っているのが見えた。俺はいつも通りの帰り道を、特に急ぐこともなく歩いていった。

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