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のんびり暮らしたい情報処理技術者、村の防衛網をアップデートしたら鉄壁の要塞都市になった件  作者: GenerativeWorks


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第7話:メンテナンスフリーの休日


翌朝。


ナノハ村に差し込む朝日は、昨日までの澱んだ空気とは一線を画していた。


村の中央、昨日まで火花を散らしていた基石サーバーは、今や規則正しい、微かなハミング音を奏でている。


サトウが再構築した『高密度装甲結界』は、不可視の状態でありながら、村全体を均一な魔力密度で包み込んでいた。


「……ふぅ。パケットロスなし、レイテンシも許容範囲内(コンマ一ミリ秒以下)。完璧だ」


サトウは自宅のテラスで、丁寧にハンドドリップしたコーヒーを啜っていた。

コンソール(石板)には、リアルタイムで村の防衛状況が表示されている。


『Status: Idle.』


『Security: 0 threats blocked in last 12 hours.』


昨日の魔熊ダブルヘッド・ベアをリダイレクトで飛ばして以来、魔物の一体も近づいてこない。

理由は単純だ。


サトウが結界の出力周波数を微調整し、魔物が本能的に「ここは物理的に干渉不可能な、ただの岩盤と同じだ」と認識するように書き換えたからだ。


「戦わずして勝つ。これこそがインフラエンジニアの理想郷フルオートメーションだよな」


サトウが至福の時間を味わっていると、ドタドタと騒がしい足音が近づいてきた。

案の定、村長の息子ギルだ。取り巻きを引き連れ、何やら不機嫌そうに喚いている。


「おい、サトウ! 貴様、結界に何を細工した! 昨夜から結界の色が全く見えないじゃないか! これじゃ、守られている実感が湧かないだろ!」


「……実感、ですか」


サトウはコーヒーカップを置き、ギルを冷めた目で見つめた。


可視化ビジュアライズはリソースの無駄ですから切りました。光らせるだけで魔力を五パーセントも食う構成(UI)なんて、センスがなさすぎる」


「うるさい! 派手な光があってこその『聖なる結界』だ! 以前のように、村人が拝めるように戻せと言っているんだ!」


「断ります。あれはバックグラウンドで無駄な描画処理を走らせて、システムを重くしてただけですから。……ギルさん、動いているシステム(本番環境)にケチをつけるのはやめてもらえますか? 壊れたら、復旧費用はあなたの小遣いじゃ足りませんよ」


「な、なんだと……ッ!」


ギルが言い返そうとしたその時、自警団の少女リーナが駆け寄ってきた。


「サトウさん! これ、見てください!」


彼女が持っていたのは、村の外壁付近で拾ったという、奇妙な鉄の矢尻だった。

サトウがコンソールをかざすと、矢尻に付着した微かな魔力がログとして流れる。


『Detection: Tracer Magic (Third Party).』


『Origin: Kingdom Royal Knights.』


「……王立騎士団の、追跡魔術トレーサーか」


サトウは眉をひそめた。


「サトウさん、これって……」


「昨日の大規模な魔力再構築リプレイスのログが、広域ネットワークに流れたんでしょうね。あまりに綺麗な術式を組むと、逆に目立つ……。エンジニアの悲しい性だ」


村長親子のような無能な連中を黙らせるのは簡単だ。


だが、中途半端に知識を持った「公式(王都)」の連中が、自分たちの管理下にない高性能なシステムを見つけたらどうなるか。


仕様確認ヒアリングと称した、面倒な『介入』が来るな……」


サトウは、飲み干したコーヒーの苦味を舌で転がした。

ようやく手に入れたメンテナンスフリーの休日。


しかし、システムが巨大になればなるほど、外敵バグは思わぬ方向からやってくる。


「……リーナさん、予備の豆、多めに買っておいてください。次の案件トラブルは、魔物よりタチが悪そうだ」


サトウは再び石板を叩き、村の『アクセスログ』を詳細に分析し始めた。

平和な隠居生活を守るための戦いは、まだ始まったばかりだった。

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