第26話:村のシステムを「世界標準(グローバル)」へ
帝国軍の飛行艦をハッキングで退けてから数ヶ月。
ナノハ村は、もはや単なる「辺境の村」ではなくなっていた。
サトウが構築した「死なないインフラ」の噂を聞きつけ、世界中から商人、技術者、そして救いを求める人々が殺到していたのだ。
「……サトウさん、また門の外に行列が。今度は隣国じゃなくて、海の向こうの連合王国から『通信を繋いでほしい』って使者が来てます」
リーナが、大量の「接続申請書(羊皮紙)」を抱えてやってくる。
サトウは村の中央に新設した『データセンター(魔導多層塔)』の最上階で、巨大なコンソールを叩いていた。
「……キャパシティ・オーバー(容量不足)だ。一つの村の地脈だけで、世界中のトラフィックを捌くなんて、土台無理な話だよ」
サトウの石板には、世界地図を模したネットワーク図が表示されている。
ナノハ村という「ローカル・サーバー」に対し、世界中の人々が勝手に「アクセス」を試み、地脈のリソースを食いつぶそうとしている。
「……よし。個別に繋ぐのはやめだ。……リーナさん。村のシステムを『公開』にする。……いや、もっと正確に言えば、世界中の地脈を繋いだ『広域魔法網』を構築する」
「せかいじゅうを……つなぐ? そんなこと、神様でもなきゃ無理ですよ!」
「神様じゃない。エンジニアの仕事だ。……各国の拠点に、この『分散型ノード(中継石)』の設計図を配る。彼らが自分の土地でノードを立てれば、勝手にナノハ村のメインサーバーと同期し、安全な結界と安定した魔力が供給される仕組みだ」
サトウが狙ったのは、独占ではなく「プラットフォームの提供(PaaS)」だった。
彼が作った「魔法OS」を世界中の地脈にインストールさせ、ナノハ村をその「中央リポジトリ(管理拠点)」にする。
「……これが実現すれば、戦争なんて起きない。……魔力の奪い合いをするより、繋がって『負荷分散』し合ったほうが、全員が得をするからな」
サトウの指が、世界を変えるための「最初のパッチ(更新プログラム)」を書き上げる。
『Command: Deploy "Mana-OS v2.0 Global-Edition".』
『Target: All Earth-Veins (World-wide).』
「……さあ、世界を再起動させるぞ。……ただし、利用規約(規約)は読んでもらうがな」
サトウが「実行」を叩いた瞬間。
ナノハ村から放たれた青い光の筋が、地中深くの地脈を伝わり、国境を越え、海を越え、世界中の「魔法の定義」を書き換え始めた。




