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のんびり暮らしたい情報処理技術者、村の防衛網をアップデートしたら鉄壁の要塞都市になった件  作者: GenerativeWorks


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第20話:技術者の意地と、仕様書への反逆


『位相を喰らうフェーズ・イーター』が、サトウの仕掛けた「例外処理」によって消滅した広場。


後に残ったのは、焦げ付いた魔導制御盤と、自分たちの信じてきた「公式仕様書」を握りしめたまま呆然と立ち尽くす王立騎士団の面々だった。


「……ありえない。王立最高峰の『統合防衛スイート』が、ただの非公式パッチに負けたというのか……」


エルザ大隊長が、膝をついて呟く。

彼女の目の前にある制御盤からは、無機質なエラーメッセージが吐き出され続けていた。


『Fatal Error: Reference Integrity violation.』

『Status: Inconsistent State. Manual Recovery Required.』


「……『マニュアル・リカバリ』、ね。あんたたちのマニュアルのどこに、あんな未知のバグへの対処法が載ってるんです?」


サトウは冷淡に言い放ち、泥のついたコンソール(石板)の画面を拭った。


仕様書スペックは過去の統計に過ぎない。現場で起きている『今この瞬間』のトラフィックに答えられないなら、それはただの紙屑デッドストックだ」


「くっ……! だが、規格を統一しなければ、国としての管理が――」


「管理のために、守るべき村を滅ぼしてどうするんです。……エルザさん。あんたたちが守りたいのは『村』なのか、それとも『王立のプライド』なのか。どっちですか?」


サトウの問いに、エルザは言葉を失った。


エンジニアとして、あるいは守護者として、最も大切な「優先順位プライオリティ」を見失っていたことに気づかされたのだ。


「……サトウ。貴公の言う通りだ。我々の負けだ……。このシステムは、この土地の『運用ワークロード』には重すぎた」


エルザは震える手で、制御盤のマスターキーを引き抜いた。

それは、王立騎士団がこの村の管理権を放棄し、サトウの「独自OS」への回帰を認める瞬間だった。


「……賢明な判断です。リーナさん、バックアップデータの復元リストアを開始してください」


「はい! サトウさん!」


リーナが予備の魔石をセットし、サトウが石板に最後の一行を記述した。


『Command: Restore from Local Backup "STABLE_VER_1.4".』

『Target: Village-wide Network. Execute.』


シュン……!


村の地下を走る地脈が、本来の穏やかな拍動を取り戻す。


王立の重苦しい灰色の霧が晴れ、再びハニカム構造の「高密度装甲結界」が、静かに、しかし力強く村全体を包み込んだ。


街灯が灯り、井戸が規則正しい音を立て始め、冷え切っていた村人たちの家々に温かな魔力が流れ込む。


「……ふぅ。サービス復旧アップ・タイム再開、確認」


サトウは深く息を吐き、ようやく訪れた静寂を噛み締めた。


「サトウ。……今回の不手際、王都への報告書には『現地の特殊環境による不可抗力』と記載しておく。……だが、いつかまた、より洗練された『公式』が来るかもしれんぞ」


エルザは馬に跨り、最後にサトウを振り返った。

その目には、敵意ではなく、同じ「技術」に携わる者への敬意が混じっていた。


「……その時までに、もっと『自動化オートメーション』を進めておきますよ。誰が来ても、クリック一つで解決できるようにね」


騎士団の白銀の列が、夕闇の中に消えていく。

バザル村長は、権威の後ろ盾を失い、サトウの顔色を伺いながらコソコソと屋敷へ逃げ帰った。


「サトウさん、お疲れ様です! 珈琲、淹れ直しましょうか?」


「……ああ、お願い。今度は『メンテナンス中』の看板を出しておいてくれ。……しばらくは、静かな休日を過ごしたいんだ」


第3章、完。


「公式」という名の負債を払い落としたサトウ。


しかし、彼の構築した「オーバーテクノロジーな村」の噂は、既に国境を越え、隣国の軍事エンジニアたちの耳にも届き始めていた。

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