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のんびり暮らしたい情報処理技術者、村の防衛網をアップデートしたら鉄壁の要塞都市になった件  作者: GenerativeWorks


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第13話:セキュリティ意識の低いクライアント

ナノハ村の正門に、派手な紋章が刻まれた馬車が到着した。


隣領の有力貴族、フォカス男爵が率いる「視察団」だ。

彼らは村を囲む最新の多層結界を物珍しそうに眺めながら、バザル村長の手厚い歓迎を受けていた。


「いやはやバザル殿、噂通りの見事な結界ですな。我が領の古臭い石積みとは大違いだ」


「はっはっは! 男爵閣下、これぞ我が村の伝統と、最新の魔導技術の融合にございます!」


サトウは遠巻きにその光景を眺めながら、コンソール(石板)のログをチェックしていた。

視察団が門をくぐった瞬間、結界の『入退室管理ゲートウェイ』が激しいアラートを吐き出していたからだ。


『Warning: Unknown Device detected.』


『Origin: Foreign Mana-Stone "EYE-01".』


「……おい、誰だ。村の内部ネットワークに、未認証の魔道具を持ち込んでる奴は」


サトウの視線の先では、男爵の従者が「記録用」と称して、奇妙な文様が刻まれた水晶球を村のあちこちにかざしていた。


それはただの記録機ではない。

周囲の魔力波形をスキャンし、外部へリアルタイムで送信する『パケットキャプチャ』機能付きのデバイスだった。


「……セキュリティ意識が絶望的に低いな。本番環境で勝手にスキャナーを回すなよ」


サトウが歩み寄ると、フォカス男爵が横柄に振り返った。


「おや、君が噂の技術者かね? 良いところに。この水晶球、我が領の優秀な魔術師が作った特製品なのだが、どうもこの村に入ってからノイズが混じって困る。君の方で、このデバイスに『特権アクセス権』を付与してくれないか?」


「……特権ルートアクセス? 外部の、しかも詳細も不明なデバイスにですか?」


サトウは耳を疑った。

それは、見ず知らずの他人に「サーバーの管理者パスワードを教えろ」と言っているのと同じだ。


「そうだ。そうすれば、我が領の魔術師たちもこの素晴らしい結界の構造を解析リバースエンジニアリングし、共有できるだろう? 相互協力こそが平和の鍵だ」


「断ります。外部接続はすべて『読み取り専用リードオンリー』。それも、俺が許可した公開エリアの情報パブリック・データに限ります。内部構造の開示なんて、脆弱性を晒すようなものですから」


「なんだと? 貴様、私を疑うのか! 善意の技術交流を拒むとは、無礼千万な!」


男爵が顔を真っ赤にして怒鳴る。バザル村長も慌てて割って入った。


「サトウ! 男爵閣下は、我が村の結界を評価してくださっているのだぞ! けち臭いことを言わずに、その……とっけん? というやつを差し上げろ!」


「……村長。今の発言、ログに残しましたからね。もしこれでシステムが乗っ取られたり、情報漏洩(データ漏洩)が起きた場合、全責任はあなたにありますよ」


「責任、責任とうるさい! 閣下、申し訳ございません。こいつは腕はいいのですが、融通の利かない性格で……」


バザルはそう言うと、サトウの制止を無視し、勝手に男爵の水晶球を『中央ハブ(の跡地に置かれたメインノード)』のすぐ側に置かせてしまった。


「……はぁ。やっぱりこうなるか」


サトウは冷めた目で、コンソールの画面が急速に「黄色(警告)」から「赤(異常)」へと変わっていくのを見つめていた。


男爵の持ち込んだ水晶球は、ただの記録機ではない。


その内部には、サトウの構築した美しく合理的なコードを『食い荒らす』ために仕込まれた、悪質なトラップ――『論理爆弾ロジックボム』が隠されていた。


「……バックドアを作ろうとしてるな。さて、ウイルス対策ソフト(アンチウイルス)も入ってないこの世界で、どこまでやれるか見ものだ」


サトウは、あえて『特権アクセス』を与えたふりをして、仮想の「砂場サンドボックス」へと男爵のデバイスを誘導し始めた。

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