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のんびり暮らしたい情報処理技術者、村の防衛網をアップデートしたら鉄壁の要塞都市になった件  作者: GenerativeWorks


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10/30

第10話:一箇所が落ちればすべてが止まる


静寂。

それは、エンジニアが最も恐れる種類の静寂だった。


風の音でも、夜の帳でもない。機械の駆動音や魔力のハミングが一切途絶えた、不自然な「無」の世界。


「……あ、あわわ……街灯が、井戸が……! サトウ! 早く、早くなんとかしろ! 予備の石はないのか!」


バザル村長が、粉々になった中継石の破片をかき集めながら、情けない声を上げる。


「予備? あるわけないでしょう。これ、数百年前に据え付けられた『一点物』ですよ。代替品リプレイスメントの在庫管理もしてなかったんですか?」


サトウは冷徹に言い放ち、コンソール(石板)のバックライトだけを頼りに、暗闇の中を歩く。

画面には、無数の「Connection Timeout」の文字が赤く点滅していた。


「な、ないなら作れ! お前なら、あの魔導ペンでちょいちょいと……!」


物理層ハードウェアが物理的に砕けたんですよ。ソフトのパッチで直せるレベルじゃない。……いいですか、村長。これがあなたの望んだ『効率的な集中管理』の結果です」


サトウは、機能を失った中継石を指差した。


「全ての機能を一つのハブに集約すれば、確かに管理コストは下がる。だが、そこが死ねば全てが死ぬ。単一障害点(SPOF)を放置したインフラの末路です。……ほら、防衛結界の末端ユニットも、給電が止まってダウンしましたよ」


遠くで、魔物の遠吠えが重なり合う。


結界という「防壁」が消え、村は剥き出しのサーバーのように、広大な魔境インターネットの中に放り出されたのだ。


「ひ、ひぃぃ……! 魔物がくる! 結界を、結界だけでも動かしてくれ!」


ギルがサトウの裾にすがりつく。


「魔力源(電源)がないのに、どうやって動かせって言うんですか。……リーナさん」


暗闇の中から、不安そうに顔を出したリーナを呼ぶ。


「は、はい! なんでしょう!」


「村にある『家庭用の小型魔石』を、できるだけかき集めてください。ランタン用でも、調理用でも構わない。……今から、この村のネットワークトポロジーを書き換えます」


「とぽろじー……?」


「『中央集権』はもう終わりです。これからは、各所に分散したリソースを相互に繋ぐ、分散型ネットワーク(メッシュネットワーク)に移行します」


サトウはコンソールを立ち上げ、空中に新たな設計図を描き始めた。


壊れた中央ハブに頼るのではなく、村のあちこちに点在する小さな魔石をノード(中継点)とし、網の目のように魔力を融通し合う構成。


「一箇所が壊れても、他のルートで給電を維持する。……死んでも止まらないシステムを、突貫工事で組み上げます」


サトウの指が、暗闇の中で青白い軌跡を描く。


それは、無能な経営者が壊した「古い常識」を、技術者が「新しい論理」で塗り替えていく、静かな反撃の狼煙だった。


「……さあ、復旧作業リカバリ開始だ。村長、邪魔ですよ。そこ、配線レイラインを通すんでどいてください」

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