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STORY28:希望

昨晩はこれまでにもなく濃厚な夜だった。


あそこまで声が枯れるほどに愛し合うという。

オレは忘れていた感情が返ってきたのだろう。

転生前、ある程度の年齢で割り切っていたはずだったもの。


本気でここまで人を愛することを忘れていた・・と。


臆病者は今日で卒業だ、気持ちが通じ合っているのなら、それを信じてより一層それを守る、今までとやることは変わらないにせよ、気の持ちようが変わっていく。


ブランケットにくるまれているエルに近づいていくオレは

朝っぱらから抱きしめる。

「ん・・・ちょっと!!」


「朝っぱらから暑苦しいのよ!!!なんなの!!!」

いつもの調子で接してくれるのが嬉しい。

それを余計に愛おしく感じてしまうので、もう1度更に強く。


「・・!?」


いつもと違うものが返ってきた、キス?!

「イジワルするならこれでもくらいなさいよね!!」


オレは照れ隠し、言葉で反抗した。

「ばーか。お前は大バカだよ。」


鼻でふん!と笑う。

「じゃあアンタは超大バカね?とびっきりの。」


オレの胸板に頭を乗せてくる。

そんなやり取り、以前よりも更に親密になっていく。

オレはこんな大バカと超大バカの関係に安心を覚えた。



その後何日か改善しながらクリスのレクチャーが続く


「ふっ!」

ギャリィィン!!

剣を弾きつつ魔法でクリスの手から武器を弾く。

そのスキに足を足で刈る

「むっ?!」

クリスさすがの体幹で軸足だけで支える?!


残りの手の剣でオレの胴に向かって横薙ぎ。

ギィィィン!!!

しかしオレも剣でその横薙ぎをしっかりと防ぐ。

そのままオレは拳で空いたボディへ一撃を叩き込む。


ドムッ!

「くっ・・」

しかしクリスも怯まない。

刈られたハズの足を一度踏みしめてそのまま膝で手に打撃が加わる。


「ちっ!!」

オレの手にダメージが加わる、ジンジンする。

こっちの手で剣が握れなさそうだ。


その瞬間もう一度残った剣のある方でななめ下から振り上げる。

オレは半歩下がってスレスレで避ける。


クリスは笑みを浮かべて

「まだ1度も死んでいないな?」

つまり1度も意図的に攻撃を外さずにオレが避けているという意味だ。


オレはムダのないように剣術に【プラン】というものを考えるようになり

攻撃1プロセスのあとに【結果】を予測するように心がけた。


オレだけではない。

エルは攻撃の力をコントロールする訓練により慣性をピタッと止めてきりかえすコトができるようになっていた。


クロエは表情だけでなく、駆け引きの力比べに応じない選択肢を持ったり

別の選択肢を択に入れることも検討する。


クリスが急に問う。

「クロエ嬢、あなたは炎の魔法が使えたはず、アレは使わないのか?」


クロエは言い淀む。

「あれは・・やむを得ない限りは・・。」

クロエは炎の魔法になにか抵抗を持っているのか。


アドーはそれにつっこむように追求したがった。

「クロエって炎の魔法を使ったのってホント普段ないよね?火葬にしようとしたときと、こないだの小屋を燃やしたときくらい?」


クロエは表情を曇らせて、俯いた。

「あまり・・思い出したく・・ないです、申し訳ありません。」

言いづらいなら追求すべきではない。


アドーにもクリスは杖での自衛の方法をレクチャーしている。

「魔法職は前衛ありきとはいう、ただ余裕が毎回あるわけではないのだ、詠唱を中止してでも自衛しなくてはいけない場合もある。」


アドーは毎回自覚があった。

「お兄様がいつも・・庇ってくれてた・・。」

大体エル、オレ、クロエのいずれかがカバーに入っていたな。


強く頷くアドー。

「自衛、できるようにしたい!」


クリスが2度頷いた。

「魔法職は一部傲慢なのが多くてな、前衛に責任を丸投げするんだ、実際はそうじゃない、みんないっぱいいっぱいなこともある、優れた魔道士ってのはな、自衛もできるしフィジカルも割と強い」


実際はこうらしい、手甲(ナックル)を装着して打撃をもって体術の心得があったり、短剣に魔法エンチャントをするとか、杖に剣を仕込んでいるタイプを持っていたり。

アドーはなにができるのだろうか?オレは期待をしてしまった。


「もちろん、今決めなくてもいいが、いずれはアドー嬢もそう考えるときがくるはずだ。」


クリスは誰に対しても真摯だ、お金がかかっているだけではなく、きっと騎士としての大事なものがあるんだと表情で読んで取れる。


クリスはここ2週間ほどの短期間で全員の練度がかなり上がったことを確認している。


アドーの自衛用の武器も考える必要がでてくる。

武器はこの町には置いていない。


次の町へいくしかないようだな、武器を新調したいのだが。

各々の武器買うだけのお金はあるのか?

「武器が売ってないんだよなぁ・・・各々合う武器・・欲しくないか?」


またエルにチラ見する

「え・・?いいけど?一応ルミネス領とグレイベルン領までだいぶちかづいてきてるし?」

資金使用の許可をもらった、エルも思うところがあったのだろうか?


決まりだな、次の町へいこうか?

全員一致で魔導自動車に乗り込むのであった。


クリス?もちろん同伴だろうけど

「私も・・いいのか?」


オレは返事するまでもない態度で

「まだ終わって・・ないだろ?」


クリスは目を細めつつ不敵に笑う。

「その通りだ、見定めるまではな、確実な成果が出るまで。」


後部にはクロエ、アドー、そしてクリス。

もう満員だ。


助手席には無言で手を差し伸べてくるエル。

オレは応じて左手の指を彼女の指に絡めた。


「目的地制定、貿易都市ハーケンス。徐行運転中・・」

ついに次はハーケンス、それを超えればルミネス領のあるレグラスシティ。


オレはここまでで、研鑽して自身への答えが出せたのであろうか?

エルと結ばれたことはいい。

父と約束したことに胸を張って旅への結果が示せるのだろうか。


そう思いながら魔導自動車のエーテルエネルギーを燃やしつつビギリニアを後にしていく。


何が来ても構えられるように自身を高めていきたい。


広い舗装路と街灯らしきものが並んでいる道を走る、ここはなぜか王都付近より道が舗装されている。

馬車用の道もあるようだった。


「ここ王都より、舗装されてないか?」

オレは純粋に疑問だった。


クロエが淡々と知識を披露する。

「都市改革計画の最初はここから舗装する予定だったらしいですが・・なぜかわかりませんが計画が凍結していてこことハーケンス間までしか舗装されていません。」


オレは驚く、そんな背景があるのか?原作ストーリーではそこまでの詳細はなかったから、設定資料集かなにかにでも載っていたんだろう。


「ハーケンスは貿易都市ですので、海路と陸路を確保しようと考えたそうですが・・・、海路は魔物が多く、船も頓挫してしまい海路の安定を考えたそうです。陸路はビギリニアの規模を考えると難しく舗装してから気づいたそうです。」

なんだかめっちゃくちゃやってやがるな。

この国安定感ないよな、王子の暴走もそうだし正史でも。


クリスが急に関係ないデリカシーのない発言をする。

「質問・・だ・・。ホープ氏とエル嬢2人は、ゆくゆくは・・・こどもを・・?」


はぁ??今考えるのは早い気がする、そもそも目的も達成するにはまだわからないことづくしだぞ?

しかもエルが身重になったら・・・自由には動けないだろう。


クッソ真面目に回答した

「今、それを考えるには早すぎる。ないわけではない、オレだけの意思では考えることができない。」


真っ赤にして全力で抗議するエルは

「アンタ先日からなんかやたらつっかかるけど、あげないわよ?!!」

違うと思うが、なんか警戒心高すぎる。

オレは他になびかないとあんだけ昨晩・・。


「ま、まぁ?ホープも何度も何度も宣言してたし?!揺るがないと思うけど?オホオホホ!!!」

エル、やっぱりクリスを同性愛者とか振ってたのは男性だと思い込むフリして気を使ってたのか。


なんだか微妙な表情をしてクリスは自嘲して口を開くんだ。

「実は私は・・・女だったんだ、黙っていて済まない。」

今それいうか・・?多分みんな知ってるのでは?

クロエはやれやれのポーズ。

アドーは顔真っ赤にしてるがわぁって目をキラキラしてみている。

エルは鼻息をふんふんしてだから?という顔で見ている。


オレは前を向いたままバックモニターに映ったクリスの顔を見ている。


4人全員で声をそろえて

「今更?!!!」

ですか?(クロエ)

なの?(アドー、エル2人とも)

かよ!?(オレ)


キョトンとしたクリス。

「なななな・・・なぜ!!知っている??!」


呆れた、けどいいたくない気持ちはわかってたからやり過ごしたつもりだ。

クリスが自らカミングアウトしたなら、少しでも心を許せるようになったのかなと、少しうれしくなった。


「本当はクリスティーナというんだが、騎士である以上男性でも通じるよう、クリスと名前を略していたんだ。」


更にはっきり見開いていた。

「みんなには、隠す必要もなくなった・・真摯に向き合って剣を研いでいる姿を見てた、だからノーガードでもっと知ってもらいたいと思った。それで裏切られるのなら、私の見る目がなかっただけだと。」

それを茶化す人は誰もいなかった。


クリスの真剣な心と剣に向き合う気持ちを知り、みんなもそれに応えただけの話、オレが頼んだことではあるが、クリスが騎士らしくいられて、女でいられる弱みを見せられる場所、クリスも一緒に仲間としている以上、幸福になろうと取り組むことは、悪くない。


いつかは、クリスが好きになれる、好いてくれる男性が現れてくれればいいなと。


そんなやり取りをしながらハーケンスへ進んでいくのだった。

国1周まではもう少し。

油断をせずに迎えたい、ルミネス領。

ハーケンスにプレイヤーはいるのか?それともいなくとも解決後はどんな問題が残っているか、残っていなければそれはそれ。


幸福への道は見えてきた・・のか?

ホープはガチで恋愛に本気で自身を駆け引きなしで気持ちをいれこんだのが30代くらいまでというメタ。

あとクロエが炎魔法をあまりつかいたがらないのはなんででしょうね。

クリスは根が真面目なのはかわらないし自身に対しても厳しすぎるんです。

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