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STORY27:痕跡⑤ー転機ー

次はオレか・・・


クリスは次に残ったオレを指定している

金属剣を構える。

「?光ってる剣はつかわないのかい?」


目的は実体剣の練度を上げるわけだしな。

「これでお願いしたい、よろしいか?」


向こうも2刀を握り直して

「わかった・・それで、きていいぞ。」


許可をもらったので合図とする。

声をあげずに駆け寄る。

「ふっ!!」

キィィィン!!!キャリィン!!


ぶつかり合う音。

相手は2刀だ、あまり競り合うのも得策じゃないし指関節を狙うべきだろうか?


1本で2本相手はどう対応すればいい??

頭を凝らせ・・。


よし、試してみるか?!!


剣を右から横薙ぎにシュッと振り抜こうとした。

ガギィィン!!ギリギリ・・・

競り合った。


「1本で2本と競り合うと・・・こうなる!」

狙い通り反対の1本で斬ろうとする。


その振り下ろそうとした手に勢いよくハイキック!

カラァン!!!

レガースのところで手首に強く強打して剣を落とした。


「??!!なにっ!!」


リヒタール剣術の体術をくぐったのか、それとも単純に慢心だったのか?

わからないが結果として剣を1本落としたのだった。


そこまではよかった。

しかしその足を掴んで持ち上げて体幹を崩した。

おもわずオレはよろけた・・。


腰に収納した剣を抜いて振り抜いた、当然すれすれを斬る。

「1回死んだな。」


アッサリと1本取られてしまった。


クリスが力説する。

「剣を奪ってその瞬間の戦闘力を奪うまではよかった、しかし・・だ。」

最後まで気を抜くな、ということだろうか?


「武器が2刀だけではないと、あらかじめ知っていたはずだ。使わない保障がどこにある?1手1手の瞬間だけをプロセスではなく結果として見ているから終着点がわかっていない。これを慢心と呼ぶのだ。」


慢心していたのはオレのほうだったわけか、未熟だったな。


クリスはまとめた。

「とりあえずこの各自注意点を踏まえて訓練をしていこう。」


あれやこれややっているうちに

いつのまにか日が落ちてきた。


オレは提案する。

「晩飯の時間だ、食事処に足を運ぶことにしよう。」

首を回してほぐそうとした。


クロエは全員に労うような言葉を放つ。

「皆様、今日のところはお疲れ様です。」

深呼吸して呼吸を整えた。


アドーはどうやら魔法の練度を上げていたようだった。

「おつかれさま!!」

目をパチクリして少し眠そう。


エルも鼻息ふんふんでご機嫌である。

「おつかれさまよね!あたしすごく疲れた。」

大きく指を組んで腕を伸ばしている。


食事処で5人分卓を囲み各自食事を頼む

クロエはバランスのよい菜食メインである。

アドーはスイーツがデザートでカロリーのそこそこ抑えめ。

エルは肉オブ肉、よく動くからいいのか。

オレは麺のようなものを頼んでいる。

クリスは・・・肉ではあるものの豪勢なものだった。


ひざかけとナプキン、ナイフやフォークのようなものはクリスの皿の左右に並べられた。

テーブルマナーー??!


やっぱこれヘンじゃないの?とは思うがもう驚くのをやめた。

何度もいうようだが、これは中世モチーフのネトゲの世界のようだから多少はそぐわないものがあっても受け入れるつもりだ。


そしてクロエとクリスはエールを頼んでいて、他は果汁飲料、ジュースのようなものだ。

せっかくなので楽しもう。


クロエとアドー、クリスの順に並んでいて

向かいのほうにオレとエルが座る。


クリスは頬を少し赤らめて問う。

「あの・・その・・なんだ。ホープ氏は・・エルナーシア嬢と・・交際している・・のだろうか?」

最近わかっちまうものなのか?


鼻息をひくひくしてニヤけるエル。

「まぁね!だけどアンタにはあげないわよ!!」

もはやタメ語になっていた。


クリスは顔を真っ赤にして反論した

「だ・・だ・・だれがもらうなっていったのだ!私は!・・あ。」

しまったという顔、みてしまった。


「なんでもない。なんでもないからなっ!」

もう隠せないんじゃないの?


エルがペラペラと調子に乗る。

「クリスって・・・同性愛者?」

はぁ??エルお前気づいてないのか??


触れてほしくなさそうだったからオレは黙ってたけど。

エルは天然で気づいていない?いや、気を使ってくれてるのか?


クリスはそんなこともわかるわけもなく

「ななななななっ!!すぐ恋愛に持ち込むな!!だれが同性愛者だ!」

真っ赤になってるのだが、みんなあえて言わないんだったら優しいよな。


クロエがやれやれのポーズで制す。

「そんなことは野暮なことです、エル様、もういいでしょう。」


アドーは地味に絶妙なことを口にだす。

「もーなんでもいいじゃない。クリスさんはクリスさんだよ!」


クリスは俯いて蚊のなくような声で

「配慮・・・感謝する。」



その後食事を済まして宿を取ることに。


ここの宿、観光もないからせっまいな。


カウンターで部屋のやり取りをする。

この宿、部屋数が少ないので人数分は厳しいらしく。

アドーが口を開いて提案。

「ねーねー今日はクリスさんと相部屋いい?」


「しゃあないな、オレはじゃあ魔導自動車の車内で寝るから、他はなんとか相部屋にでもして調整してくれ・・・」

一瞬で却下される、それはエルの手で。


「なにいってんのよ、アンタはあたしと、でしょ!寝ぼけるのは寝てからにしなさいよね!」

拒否権ナシ。


毎度の如くクロエはこの光景をやれやれのポーズだが

微笑ましく思っている、だがなんだか胸に手を当てている。


「クリスさんと私でいいよねっ!」

人懐っこいのがアドーである。


アドーの提案で


一番端っこにオレ、エル。

その隣にアドー、クリス。

そのもう1つ先にクロエということでケリがついた。


どうやらギリ人数分の部屋のようだ。他はびっしり埋まっている。


2Fは占拠するようにオレらが部屋を取っていた。



その夜も深まりそうな頃。

アドーとクリスの部屋では・・・。


「クリスさん、寝た?」

アドーは小声で問う。


「寝ていない、ずっと気になっている。」

クリスは戸惑うように話をアドーにする。


アドーは無邪気にもクリスに聞きづらい話を問うのだ。

「クリスさんって、女の人だよね?理由はきかないけど・・・。」


そう、治癒してるときもあの綺麗な鎖骨・・肩の肌のキメ細かさ。

衣服を緩めたときにチラっと見え隠れする膨らみ。

シルエットもなにか細身でしなやかな体躯。


クリスは自嘲気味にアドーに漏らす。

「私は・・グリフィン家の長女なんだ・・でも男として期待されてきた、だから女を捨ててきたつもりだった。」


アドーは複雑な表情を浮かべて目を真っ直ぐにクリスに向けた。

「騎士って厳しいの?他の兄弟は?いないの?」


クリスは首を左右にゆっくり振る。

「私だけが唯一グリフィン家では実力がついたんだ。長兄も、次兄も、政治面に利があって、本来は武人であるグリフィン家としてはそぐわなかったんだ。」


「正直エルナーシア嬢が羨ましい。男性を愛すること、愛されること。」

目を伏せて震えながら話した。


アドーはそれでもクリスから目を離さずに見つめている。

「私には・・わかんない。だって、好きってなにか、好かれるってなにか、わからないんだもん。」


クリスは歯を噛み締めて目を潤ませている。

「家も私を女として扱わず、内密に慕っていた男性に求愛したんだ、そうしたら・・当然家に密告された。同じ騎士であるがゆえ、グリフィン家にその人は、自ら釣り合わないからと申告して・・拒絶だったんだ。」


クリスは嗚咽してしまう。

「本気・・だったのだぞ・・・女として、と言ってもそれでも私を見ることもせず・・グリフィン家の騎士以外のものをみてくれなかったんだ。」


アドーがクリスを軽く抱きしめる。

「苦しかったんだね、クリスさん。」

その行動で完全に感情のリミッターがハズレた。

「うゎぁぁあぁん」

子どものように泣いている、20代後半の女性であったクリス・・・。


あたし、好きな人もわからず、好かれたい人もあまりわかっていない。

それでもなんか、クリスさんが騎士だという記号だけで拒否されることだけは納得いかなかった。


多分だけど私がルミネス家で騎士をやったとしても、父様も母様も騎士と女性を同居させてくれると思っているから。


そんなに家柄と伝統って大事なのかな・・?

それは私がルミネス家だからそう思わないだけ?


その後ほどなくして隣の部屋の壁が薄いので

【いつもの】が始まってしまい、私はクリスさんの胸に顔を埋めて聞こえないふりをしてしまった。


気づいたら意識もせず眠気に支配されていく・・・。



クロエの部屋では・・・。

いつものホープ様とエル様とのことを想像してしまう。

「もう・・忘れようと思ったのに・・。」


部屋が離れていることは関係なく、以前の状況がフラッシュバックしていて、

私としたことが、納得したはずなのに気持ちでは割り切ったと思っていたのに・・。

これは呪いとも言える、優しい呪い。


熱を帯びた吐息と手と指の動きに支配されたまま・・・

その夜を越えていく・・。




ホープとエルとの部屋では・・・。

「なぁ、もうこの光景が日常になってしまった。今、いろんな問題を抱えてるというのにこのときだけは幸せすぎて怖いんだ。」


オレの腕にしがみついてくるエルは、囁くように口を開く。

「このささやかな幸せの瞬間も、アンタの1部でしょ?あたしは幸せだけど?ダメなの?」

不安そうにこっちを見つめてくる。


「積み重なっていくこの時間と関係の中で、オレはお前になにかしてあげられてるのかな?エル。」

オレはたまに不安になる、相手の気持ちがあったとしてもそれが永遠を意味するものなのか、不変なものなのか?


全てをさらけ出し合う関係だとして、なにかのきっかけで失ってしまうのではないか・・?と。

無条件に愛されているわけではない。


だからなにかしてあげたいという気持ちを与え続けないと行けないものだと思い込んでいる。


オレは思ったより臆病なんだろうか?

そんな疑い深くも確証があっても永遠に相手の気持ちを信じることに疑問をもつのは、転生前からの傷だったんだろうか?


そんな不安を拭うためにまたオレはエルを抱きしめては何度もキスをして確かめる。

「ん・・・。」


何度も何度も愛し合った。

そのあとに必ずこういうブルーな思考がオレを襲うんだ。


どれくらい重ねたら自身が赦されるのだろうか。

【オレ】になってからはエルへの気持ちが積み重なっているのも元のホープのおかげだと思い込んでいるせいで罪悪感があるのだろうか。

好意はホンモノだが、エルがこっちに向ける気持ちがホンモノなのかが怖い。


「ホープ?どうしたの・・?」

ちょっとしおらしいエル。

「そんな顔しないでよ、なんかイヤなの、その表情。」


不安すぎてついこぼしてしまう

「なぁ、もし・・オレが本来のホープじゃないっていったら?どうする?幻滅するか?」

こんなときになにいってるんだオレは。


エルはオレの胸に頭を乗せてきて

「なにいってるの・・?今ここにいるホープはホープじゃない。それだけで充分でしょ?」


オレは嬉しくなったが念を入れるように問う、もう泣きそうだった。

「エルは・・オレの前から・・いなくならないよな?オレは・・・イヤだ。」


エルは普段の真逆の雰囲気で囁く。

「バカね・・いなくなるだなんて、アンタはバカよ。あたしが宣言してあげるわ・・何度でも・・」


「今日だけだからね?・・・」

そういってエルはオレをぎゅうっと強く抱きしめて

「愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、ずっとずーーっと、愛してる。」

涙を流していた。


脳が溶けるように甘かった、季節には程遠いが甘いチョコのような言葉にはホワイトデーが必要だな。


「オレは・・・エルナーシア・グレイベルンを、愛しています。」

続けて同じように甘いホワイトデーワードとして返す。

「愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、命を賭してでも、肉体を失っても、愛し続ける、約束する。」


抱き合う形でまた唇を何度もついばんだ。

境界線を失うほどに溶け合う2人は最高の記念日になったようだ。



なんか書いてて恥ずかしくなってくるくらいのベタベタを書きたくなりました。


補足として、ホープくんは確証がないとどこまでがホントの気持ちかどこまで疑いつつも駆け引きするクセがあるという話です。

説明不足ならどっかで本編中追記しないとだめかも

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