STORY14:真実
アドーはクロエをなだめて割り当て通りに部屋に入った。
エルとオレは気まずそうに部屋に各自戻る・・・
ドアを閉めて、ふぅ、とため息をついた。
こうなると思ってた、質問がこないとでもおもったのか?
問題を先延ばしにしてエルにも期待させたせいだろう?
かといってクロエにやっぱなしは外道すぎる。
ギクシャクはしたくない、この場はちゃんとしっかり線を引かないといけないよな。
ほどよくしてノック3回。
クロエか?エルか?
「誰?」
くぐもった感じで聞き取りづらい。
「・・・て。」
あけて?といってるのか、声が小さいな。
「どうぞ。」
オレの声を確認したのかゆっくりとドアが開いた。
そこから姿を確認できたところ・・・エルだった。
いつもの勢いがない。
「ねぇ・・。」
調子がでないエルをどう接していいのかオレにはわからなかった。
すぐ許可もなくベッドのオレが座る隣に座った。
「ホープ。」
名前だけ呼ばれる、どういう話なんだろう。
「アンタはさ、やっぱりクロエのこと、好きなの?」
エルは表情も不安そうで、体は震えている、座っている姿勢もどうもぎこちなく固い、視線はこっちを向けているが視線が安定せず目を逸らしたりもする。
「どうしても答えないと、ダメか?」
オレはどうしてこうなんだろうか、正直に好きなら好きといえばいいだろう。
でも、好きと純粋に言えなくなっている、なんとなくこの理由はわかる。
「ダメにきまってるでしょ。それだけでアンタはあたしをこまらせてんの。」
エルの呼吸が伝わる、緊張しているのか。
時々ため息に近い深呼吸まで聞こえている。
「怒らないで聞いてくれるか?」
オレはもうこの状態に耐えられず、正直に脳内ではグシャグシャだということを聞いてほしかった。
少なくとも、アドーには話せず、クロエもあのざまだ、だったらせめて真実としてエルになら一応話せるかもしれないと。
オレは最低だった。
エルは蚊のなくような声を震わせて
「いいわよ・・・話しなさいよ・・。」
オレはざっくりとここまでのくだりを話すことにした
白紙にした日の晩、クロエが部屋に訪問してきたこと。
1人の女として気持ちを向けてきたことに流されたこと。
エルの気持ちもわかっているのにこのままにしてしまったこと。
結局傷つけたくないことが保身であったことで2人を両方傷つけていること。
「アンタ、最低よね。選ばれないほうが傷つくからどっちも曖昧にしたかったって?」
目を細めて、こっちを睨みつける。
「ああ、ホントは両方突っぱねるほうが楽だったんだけどな。」
拳を震わせているエル。
「ねぇ・・アンタ調子に乗ってない?」
今度はちゃんと目を逸らさずこっちを見ている。
オレは調子に乗っているのかもしれない、なんでって転生前はある程度リアルやネットで恋愛的なものに成功体験が大きいためなんだかんだでうまく距離を保てていたからであり、2人から同時に言われても片方シャットアウトできると踏んでいたから、ただ、今回はそれはできなかっただけ。最低の行為だった。
「軽蔑すればいい、もうわかってると思うがオレは最低なんだ。」
「・・・っ!!!」
その言葉の瞬間勢いよくオレの胸ぐらを強く掴んで締め上げる
「なめんじゃないわよ!!あたしはアンタのなんなのよ!!」
「最低だからなんだって?!それであたしの傷もクロエの傷も塞がるとおもってんの!?バカなの?!!」
ギリギリと服を介して首が締まっている
更に強く締め上げて持ち上がる、苦しい。
ほどよくして緩められた。
「アンタがすることは、懺悔とかじゃないのよ。結果で示しなさいよ。」
エルの目が潤んでいき、声も震えていく。
「それでも、あたしはね・・アンタを嫌いになれない・・。だって、好きなんだもの・・こういうときくらい・・泣いてもいいでしょ・・?」
嗚咽しながらオレの胸に顔をうめてどんどん叩いてくる、叩かれた痛みはないが、心はちゃんと痛い。
エルはそれでも嫌わない?アホかよ。
オレは最低なことを心に浮かばせている。
これは侮蔑ではない、これだけ思いを向けてくることに恐れているのを心のなかでさえもごまかしているだけ。
「ただ、アンタは選べないからあたしもクロエも傷ついただけ。アンタの人間性が悪いわけじゃないもの・・。」
オレは納得はしたがだからといってはいそうですか とはいかない。
「だから、今すぐじゃなくていい。気持ちにケリをつけて。当然どっちも選ばないでもいい。その代わり、ちゃんとどっちも好きじゃないっていうならね、選べないという理由での逃げは許さない。」
つまりはエルが言う事
どっちも仮に好きだから選べないから両方諦めるのはやめろ、と。
どっちも好きなら好きなほう1人を選べ、と。
オレは意味は理解できた、すべきこともわかった。
「ああ、わかった。」
「罰ゲーム、ね。」
・・??!!なんだよ罰ゲームって。
「添い寝。なにもしないで。アンタは触れないで、おかしくなっちゃうから」
当たり前だろ、今の流れでなにかする気にはなれない。
かといってこの気持ちを無視をできない、これを許すのはいいのか?
こういう曖昧なとこがダメなんだろうけど今はエルの気持ちがそうしたいというなら、抗う理由はない。
楽観視してすぐこういう逃げをするのはいつもオレの悪いところ。
ホントはこういうときでも一度フラットにしないといけないのに・・。
ただオレはそれでもエルに自室に帰れとも言えない最低野郎なんだなと。
自身にせめて罰することでしか言い訳をできないのだ。
「じゃあ、ホントに寝るから・・アンタは触れるの禁止!」
呆れつつも受け入れるオレも大概だなと。
「はいはい・・。」
オレは反対を向いて寝る・・・
すると背中に柔らかな感触・・あのな・・ルール違反じゃないのか・・。
「ん・・・。」
しかめっ面をしてしまった。でもこの表情は向こうには見えない。
「エルが触れるのはいいのかよ・・・クソルールだな。」
背中に伝わる柔らかな感触・・・あざといなエルは。
しっかりと腰にまで手を回してしがみつかれている、寝づらいんだよ。
こういうときにさえも良からぬ気分になってくるので
無心になり、眠りにつくとするか・・・。
光が目に刺さる時間・・・
目をゆっくり開けてその身に光を浴びる。
いつの間にか背中に張り付いていたはずだったのはいなくなっている。
ベッドから降りて着替えることにした。
エルのやつ・・・強い感情ぶつけてくるの、身にしみた。
答えは出すしかないな、すぐでなくていいとはいうが現状あることからは一度フラットに戻すべきではある。
言わなければな、クロエにも。
そう思い支度を終えて部屋の外に出ようとするが
一度おさらいだ。
領主をまず確認すること。
領主がいたとしてこの状況になった理由を聞き出すべきだと。
あとはクロエに正直な今の気持ち。
まだまだ課題といえるものが山積みではある。
外に出た、みんないる。
「遅いよ~お兄様!」
アドーはいつも通りに接してくれた。
「いつまでもねてんじゃないわよ、しっかりしなさい!」
昨晩の情けないエルはそこにはいなかった。
「おはよう、ございます。今日で決着がつけばいいですね。」
冷静なクロエがいた。
みんな内に何かを秘めているだろうに、それを見せずに今日また問題に立ち向かおうとしている。
オレは思ったよりみんなを信用していなかったのではないか?
戦闘はできてもオレが全部心をケアするものだと思ってなかったか?
実際はオレが救われていることのほうが多いような気もした。
実際どうなんだ?人生経験だけなら倍は生きてるオレが、エルに昨日はハッパかけてもらってるとか。
もっと素直になれということか。失敗しないように机上の空論を並べて
調子に乗ってたのは事実だったのかもしれない。
1Fでチェックアウトして宿をでる。
「あのさ・・ちょっとクロエ借りていいか?」
「・・!?」
3人同時に驚く、クロエが特に大きく驚いていた。
「はい、ホープ様。」
なんだか怯えているようにも見えた。
宿の裏手の池沿いで2人になって話すことにした。
「話が・・したかった。」
クロエはパチクリ瞬きを頻繁にしている。
「昨日の・・・話ですか?あれは・・」
バツが悪そうに謝罪しそうな雰囲気だったクロエ。
「違うんだ、悪いのはオレなんだ、すまん・・・」
カクンとくの字に体を曲げて謝罪する。
目を見開いてそれを制止しようとするクロエ
「ホープ様!いえ、わたしは・・っ!」
「聞いてくれ。」
静かになったクロエは話をきいてくれるのかじっとこっちを見た。
「誕生日のときさ、正直嬉しかった。アレはウソじゃない。」
クロエは1つ頷く。
「一人の女性として向き合ってくれたのも嬉しい、クロエ・カーディアという女性として、従者ではなく。」
さらに頷いている。
「オレにそこまで好いてくれる理由はクロエにはあるけどオレはクロエの気持ちが伝わるにしてもほんとにそこまで好きなのかというのも、曖昧だった。」
俯いているクロエ。
「だからあのときとっさに肯定できなかった。ただ、これまでの出来事は全部ホントで、ゼロだったわけではないんだ。利用したってのは?何の話なんだ?」
実際そうだ、本来のホープの積み重ねたものを【オレ】が横取りしたようなもんだからな。
実際言えないことだとしてもやってることは普通に不正だと思っているオレがいるのも事実。
ただ、クロエが立場を利用したのくだりはオレにもわからない。
クロエが逆にオレに語る。
「エル様が指摘した内容で本当だって話は、3割くらいは本当です、ズルしています。」
3割ってなんだ?
「続けて?」
「はい、わたしは幼少のころから貧困家庭、長女で働けない母とお金がない父が荒んでいてひどいものでした。」
18になるまで何があったのかは気になることだ。
「父がお金のために妹2人を売るとかいうのでそれはダメだとわたしが働くことにしました。なにをというのは大体察してください。」
「そこでわたしが18まで働いていて弱って倒れたときに死にそうだったわたしをブレイブ様が介抱してくれてルミネス家でメイドとして雇っていただけると。」
そうだったのか・・・。
「父は納得いかないだろうとわたしは言いました、するとブレイブ様は引取手当で毎月金貨で払うと父に言ってくれて・・・」
父上がやりそうなことだな・・。
「ただ誤解しないでほしいのが決してわたしの父は本当は優しいんです、まだマシだったころは少ないお金でわたしたち優先で食事を買ってきてくれたりしました。」
定番のゲス親ではないということか。
「なので毎月の金貨で妹2人と母もある程度は安定できています。たまに手紙を送りますが妹も学校へ通えるようになったそうです」
貧困を誰も本来はすくってはくれないんだろうしな。
「それでわたしの居場所は実家ではなく雇っていただいた恩義でルミネス家に生涯仕えると誓ったのです。」
「そのときにホープ様は幼少でしたが、みんなと同じようにわたしを普段は主従として、オフでは家族として接してくれました、アドー様も。」
なるほどね・・本来のホープもムーブがオレと似ていたんだろうな。
原作では細かい描写がないからクロエの存在が名前だけで最初ピンとこなかったもんな。
「気づいたらホープ様をお慕いしておりました、理由は最初は些細なことなのかもしれませんが、気持ちが先行しているころにはもう・・・」
そうだよな、そばにいたいとおもってたらもうそれは理由なんて探すことに意味なんてない気がするし。
「そこでエル様との白紙の話がでてきました、ホントはエル様と結ばれるなら、この気持ちは明かさず抱えたままにするつもりでした」
やっぱりオレが行動を変えたせいもあるのか・・。
「もう離したくないのでなんとか手段を考えたところ、あのような誕生日プレゼントとしての口実で求めました。」
そうだったのか・・・。
憎めない話。むしろこれはオレをまた曖昧にするのか?
でもそれはダメだ、一回フラットにして補正なしでどこかで決める。
だから言う、迷わない。
「クロエ・・気持ちはわかった。オレはさ・・それでも2人の気持ちに誠実に応えてるつもりで、実際は向き合えてなかった、この話を踏まえて一度関係だけはフラットにしたい。残酷なのもわかってる」
実際はここまでのことはなかったことにはならない。
だから思い出と気持ちとして捨てないつもりだ。
「ムチャなことだとわかっている、決してクロエが嫌いなわけではない、だけどこのままだとギクシャクもするし2人が余計に傷つく、だからオレがきっちり決める時間をくれ!」
もう1度カクンとくの字に頭を下げる。
微笑んでなお切なそうにクロエが優しい口調で言い放つ。
「そういうとこ・・ですよ。嫌いになれないとこ、です。どんな結果だろうと受け入れます、従者としても女としても。」
クロエは大人なんだな・・いや、人間性なんだろうか。
一生頭が上がらないかもしれないけど 恋愛模様はちゃんと決着をつけなければ。
オレはそう誓った。
オレもみんなも幸福になるための修復のフェイズなんだ。
一応ここで一回エルとクロエの関係値をフラットにしてここからどうしていくかホープくんがどうなっていくのかというフェイズですね、一度は流されたんですがもう繰り返さないつもりだと。
こういうフェイズで1話分も使うという。
自分は人間同士の関係値でなにがかわるのか、変わったらどうなるのかが主軸なことが多いので。




