その3 ひなたに忍び寄る、闇
★永遠福音コンフェッティーナ!
第二話『大馬鹿はいつも、ヒーローのとなりに』
その3 ひなたに忍び寄る、闇
teller:カイジン=グリズリー
◆
『ダーリン、ダーリ~ン!! ニュースですよ、しかも激ヤバ刺激的なヤツです!』
本日は風船配りのバイトが無い。
なのでグリズリー事務所にて、自分は清掃の任を自らに課していた。
清掃作業中、弾み喜色に満ちた声が室内に響いた。
視線を向けると、ティナ子が宙に浮いていた。
自分の至近距離で、だ。
ティナ子。
自分が戦時中から愛機として共に在った人型ロボット、『コンフェッティーナ』に宿った自我。
コンフェッティーナに宿った、心。
自分は愛機に先を越されたのだな、と、ホログラム映像のティナ子が表情豊かに喋っている姿を見ると思う。
なぜティナ子の人格は生まれたのか、疑問はあるが――正直、然程不思議な話でもないと自分は考える。
心には、きっとそのくらいの可能性があるのだから。
『ちょっとダーリン~? 聞いてます? シカトぶっこかないでくれません?? アタシの話に興味あるフリでもできません?? 正直すぎる朴念仁はいつか刺されますよ~? アタシに』
「問題ない。報告は聞いている」
『反応うっっす。あと乙女が持ってきた話題を報告呼ばわりせんでください。定時連絡とかじゃねえんですよ。色気ない言い方はストップですムード削がれるですよ~……も~ダーリンは~……』
肩を落として、落ち込む、はたまた呆れた素振りを見せたかと思えば。
ティナ子は勢い良く顔を上げて、にこやかに語り始めた。
『はてさて、気を取り直しまして! ニュースです! 大変ですですよ~ダーリン! 一年前に『リングアベル』の街を騒がせた連続髪切り事件の犯人が、脱獄したそうですよ~! 今じゃ夜な夜なこの街をうろついているトカ!』
「……連続髪切り事件……」
『ありゃ? ダーリンご存知でない? なんでも一年前、毎晩髪の長い女性を狙って、クソデカ裁ち鋏でザクーっ! とロングヘアを強制カット! を繰り返していた変態サンらしいのですケド!』
「……いや。理解はしている。犯人の顔も、記憶している」
『…………んん? 記憶? ま、イイです。ここは犯人、アタシたちで捕まえちゃいましょ! ヒーローの名、上げちゃいましょ! グリズリー事務所、閑古鳥レベルじゃねーくらいお仕事ないんですから~!』
「……ヒーローは、名を上げることが目的ではない」
『クッソ真面目~!! ご立派な志ですけど、こないだの爆弾騒ぎのせいでアタシの本体、まだ修理不十分ですし……お金も求めてかないと満足にヒーローやれませんよ!? 心とお財布の豊かさは大事ですよ~!?』
ティナ子が、自分の周りを賑やかに飛んでいた、が、自分は少し思案する。
名を上げたいわけではない。
が、相手が連続髪切り事件の犯人となると――。
「…………その話、本当か?」
『ん? おや、バニーくんじゃないすか! アタシとダーリンの愛の巣へよーこそよーこそ!』
聞き覚えのある声が、した。
視線をやる。
開け放たれた扉の前に、やはり見知った人物がいた。
バニー。
ダムバニー=ストレイキラー。
自分の相棒で――連続髪切り事件と聞けば、確実に黙っていられない男。
『……?? ダーリンダーリン、バニーくんてば、な~に怖い顔してるんです?』
「……ティナ子。連続髪切り事件の犯人が脱獄した、で報告は合っているか」
『だから報告って言わんでくださいっ。…………え~と、このただならぬ雰囲気はもしや~……?』
ティナ子が答えを出す前に、自分は真実を告げた。
「……一年前の連続髪切り事件、犯人を捕まえたのは自分とバニーだ。そして、その事件からバニーは自分の相棒になった」
怒りの感情をなんとか抑えようとして拳を握り締めている、バニーを見る。
バニーの体内状況が危うい。
動揺が、心臓や呼吸、多岐に影響している。発汗機能にもか。
バニーは、黙っていられないだろう。誰よりも。
連続髪切り事件の犯人は。
――バニーの想い人、ターニャ嬢を傷付けたのだから。
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