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静寂の城〜魔王は世界征服をしたい〜  作者: 赤井六舷
魔族領軍事国家、バルファード

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93.軍師王、非を認める

問題はまだ終わっていなかった。

訓練場中央。

ラーシャは杖を抱き締め、小刻みに震えている。


「こ、怖い……。」


涙が止まらない。


「ごめんなさい……。」


黒紫の魔力はなおも溢れ続ける。

結界にはさらに大きな亀裂が走った。


「マズい!」


マイトは一直線にラーシャの元へ駆け寄った。


「ラーシャ!」


優しい声が耳に届く。

ラーシャは涙で滲む視界を向けた。


「……勇者様。」


マイトは慌てることなく、ラーシャの肩へそっと手を置いた。


「大丈夫。」


落ち着いた声だった。


「もうブラッドウルフはいないよ。」


ラーシャは震えながら周囲を見る。

確かに、さっきまでいた魔物の姿はもうない。


「……え?」


「君は安全だから。」


マイトは笑顔を見せる。


「だからゆっくり息を吸って。」


ラーシャは震えながら息を吸う。


「そう。」


「ゆっくり吐いて。」


「……はぁ……。」


「もう一回。」


ガエンも少し離れた場所から大声を出した。


「ラーシャー! 終わったぞー! 誰もお前を襲わねぇから安心しろー!」


ダグラスも静かに頷く。


「もう大丈夫だ。落ち着け。」


三人の声が少しずつラーシャの耳に届いていく。

乱れていた呼吸が、徐々に整い始める。

それに合わせるように。

黒紫色の魔力も少しずつ薄れていった。

訓練場を覆っていた圧迫感が消え始める。

兵士達はようやく息をついた。


「……助かった。」

「生きた心地がしなかった……。」


一方、レムルスは結界に刻まれた無数の亀裂を見上げたまま、言葉を失っていた。


(戦闘ですらない。恐怖で魔力が漏れただけで、この国の最強結界を破壊寸前まで追い込んだ……。)


そして視線を、マイトに肩を支えられながら「ご、ごめんなさい……」と泣き続けるラーシャへ向ける。

その姿は、どこからどう見ても怯え切った一人の少女だった。

だがレムルスには、もはや確信しかなかった。


(この娘の魔力量は……魔王級どころではない。制御さえできれば、この世界でも指折りの存在になり得る……。)


レムルスは静かに目を閉じた。


(……いや。)


ゆっくりと首を横に振る。


(私が本当に見るべき相手は、ラーシャだけではない。)


彼の脳裏に、ほんの数秒前の光景が鮮明に蘇る。

訓練場全体を覆った、あの圧倒的な魔力威圧。

兵士達は誰一人として動けなかった。

鍛え抜かれた近衛兵も歴戦の兵士長も、自分の命令を受けても、一歩たりとも踏み出せなかった。

それほどまでの威圧だった。

だが。


「ダグラス!」


「分かってる!」


あの二人は、何事もないように観覧席から飛び降りた。

まるで風の中を歩く程度の感覚で。

躊躇もなく、迷いもなく、そして。


「ラーシャ!」


マイトもまた、真っ直ぐ少女の元へ駆けて行った。

恐怖も、威圧も、何一つ気にする様子はなかった。

レムルスの瞳が細くなる。


(あの魔力威圧の中を……平然と行動しただと……。)


ラーシャが規格外なのは間違いない。

だが、そのラーシャの魔力を真正面から受けながら、普通に動いていた三人もまた、常識の外にいる。

ガエン、ダグラス、マイト。

彼らは誰一人として顔色すら変えていなかった。

レムルスは心の中で苦笑した。


(つまり……あの四人全員が化物ということか。)


軍師王。

そう呼ばれてきた人生だった。

数え切れない戦場を読み、圧倒的不利な戦況を覆し、敵将の心理を読み切り、勝てないと言われた戦を勝利へ導いてきた。

だからこそ分かる。

戦とは、戦う前に勝敗が決まることがある。

相手の戦力を正確に把握した時点で勝つ未来が存在するか否かは、ある程度見えてしまう。

レムルスは、ゆっくりと拳を握り締めた。


(もし……仮に魔王軍と我が軍が戦争になったとしたら。)


頭の中で無数の戦略を組み立てる。

奇襲。

包囲。

兵站の遮断。

陽動。

毒。

籠城。

魔導砲。

竜騎兵。

ありとあらゆる戦術を並べていく。

だが、どの盤面を思い描いても最後には、たった四人がその全てを力で覆してしまう光景しか浮かばなかった。


(……駄目だ。)


一つ消す。


(これも無理。)


また一つ消す。


(これでも勝てん。)


さらに消える。

最後には。

盤上に残った駒が、一つもなくなった。

レムルスは静かに息を吐く。


(見つからない。私を軍師王と呼ぶ者達が聞けば笑うだろう。)


だが、それが偽らざる結論だった。


(勝てる道が……一つも見つからない。)


彼は玉座の前で静かに立ち尽くし、訓練場を見下ろす。

涙を流しながら「ごめんなさい」と繰り返すラーシャ。

その隣で優しく声を掛けるマイト。

少し離れた場所で心配そうに見守るガエン。

冷静に周囲を警戒しているダグラス。

四人の間には、主従でも上下関係でもない。

互いを信頼し、互いを支え合う絆があった。

レムルスは小さく口元を緩める。


(……敵に回してはならない。)


その一言が、胸の中で重く響く。

そして同時に、もう一つの確信が生まれる。


(だからこそ。この者達とは、剣ではなく握手を交わすべきだ。)


軍師王レムルスは、この日初めて。

魔王軍という存在を、脅威ではなく決して敵にしてはならない、未来を共に築くべき相手として認識した。

そしてレムルスはゆっくりと玉座から立ち上がる。

その表情からは王としての威厳ではなく、一人の大人としての申し訳なさが滲んでいた。

静かな足取りで訓練場へ降りると、マイトに支えられながら涙を拭っているラーシャの前まで歩み寄る。

兵士達が息を呑んだ。

一国の王が、一人の少女の前で足を止める。

レムルスは深く頭を下げた。


「……ラーシャ殿。」


ラーシャは驚いて顔を上げる。


「え……?」


「今回の試験は、私の判断ミスだった。」


訓練場が静まり返る。


「君が魔物を極度に恐れていることを知らなかったとはいえ、私は君に無理をさせた。」


レムルスは真っ直ぐラーシャを見つめた。


「結果として、君に恐ろしい思いをさせてしまった。」


そして、もう一度深く頭を下げる。


「本当に申し訳なかった。」


兵士達は目を丸くした。

軍事国家バルファード国王。

軍師王レムルス。

その男が、自ら非を認め、少女へ謝罪している。

ラーシャは慌てて首を横に振った。


「ち、違います! 私が弱虫だから……私がちゃんと戦えなかったから……。」


「違う。」


レムルスは穏やかな声で遮る。


「恐怖は弱さではない。」


「……。」


「君は最後まで逃げ出さなかった。それだけでも十分立派だった。」


ラーシャの瞳から、再び涙が零れる。


「……うぅ。」


マイトは安心したように微笑み、そっとラーシャの背中をさすった。

ガエンも腕を組みながら頷く。


「ま、王様がちゃんと謝れる人でよかったぜ。」


レムルスは少し苦笑した。


「当然だ。私に原因があるなら謝る。それが王の務めだからな。」


「いや、そこは立派だと思うぜ。」


ガエンは頭を掻きながら続ける。


「でもさぁ……。」


少しだけ頬を膨らませる。


「うちのラーシャ、見た目は大人でも中身は怖がりな女の子なんだよ。」


ラーシャは「うぅ……」と少し恥ずかしそうに俯く。

ガエンは苦笑しながらレムルスを見る。


「もうちょっと優しい試験でもよかったんじゃねぇかな?」


兵士達から思わず苦笑が漏れる。


「いきなりブラッドウルフ五匹は、さすがにスパルタすぎるだろ。」


レムルスは額に手を当て、小さくため息をついた。


「……返す言葉もない。」


「だろ?」


ガエンは肩をすくめる。


「次からはさ、『かわいいスライムを一匹倒そう』くらいから始めてやってくれ。」


その言葉に、張り詰めていた空気がふっと和らぐ。

ダグラスも小さく笑う。


「ガエンにしては珍しく、まともな意見だな。」


「“にしては”はいらねぇ!」


すかさず突っ込むガエン。

マイトも思わず吹き出した。

ラーシャも涙を拭きながら、小さく笑顔を浮かべる。


「……ふふっ。」


その笑顔を見たレムルスは胸を撫で下ろし、改めて心の中で誓った。


(この少女には、力ではなく自信を育てる環境が必要だ。)


そして、その環境を自然に作り上げているガエン、ダグラス、マイトという三人の存在の大きさを、レムルスは改めて実感するのだった。

レムルスは感心したようにガエン達を見渡した。


「魔王バラムは幸せ者だな。」


その言葉に、ガエンが首を傾げる。


「ん?」


「勇者を含め、これほど優秀な幹部が三人もいるのだからな。」


ガエンは「ああ」と納得したように頷くと、さらりと言った。


「いや、幹部は今のところ十人いるぞ。」


「……何?」


レムルスが思わず聞き返す。

ガエンは一本ずつ指を折りながら数え始めた。


「俺とダグラス、ラーシャ、それ以外だとラミアのミリア。ドラゴニュートのビルム。ピクシーのナラ。ミノタウロスのミノ。ホークマンのルード。ハイオークのマルド。ボアマンのデルスト。」


そして最後に少し笑って付け加える。


「あと正式な幹部じゃねぇけど、居候の勇者マイトな。」


マイトが笑顔で手を振る。

訓練場が静まり返る。

兵士達は互いの顔を見合わせた。


「……十人?」

「今、十人って言ったか?」


誰も状況が理解できない。

レムルスも、珍しく言葉を失っていた。


(十人……だと。)


四人だけでも国家戦力を覆しかねない実力者。

それが、まだ六人もいる。

しかも名前だけで分かる種族構成が異常だった。

ラミア。ドラゴニュート。ピクシー。ミノタウロス。ホークマン。ハイオーク。ボアマン。

前衛、後衛、空戦、高機動、怪力、支援。

まるで神が理想だけを集めて編成した軍勢だった。

レムルスは思わず額を押さえる。


(待て……。)


軍師として、無意識に戦力分析が始まる。

ドラゴニュートが空を制し、ホークマンが偵察を担い、ピクシーが攪乱。ラミアが魔法と搦め手、ミノタウロスとハイオーク、ボアマンが前線を支える。

そこへガエン、ダグラス、ラーシャ、そして勇者マイト。


(……何だ、この隙のない編成は。)


弱点を探そうとしても見つからない。

どの戦場を想定しても、必ず対応できる人材がいる。

レムルスは乾いた笑みを浮かべた。


「ガエン殿。」


「ん?」


「……魔王バラムは、人材を集める天才なのか?」


ガエンは肩をすくめた。


「いや?」


「違うのか?」


「集めたっていうより、困ってる奴を助けたり、一緒に飯食ったりしてたら、気付いたらこうなってた。」


「……。」


「みんな勝手に集まってきたんだよ。」


その一言に、レムルスは思わず目を見開く。


(だからか。)


軍隊ではない。

利害で繋がった組織でもない。

だからこそ強い。

損得ではなく、信頼で集まった者達。

命令ではなく、自らの意思で魔王の下にいる者達。

レムルスは静かに笑った。


「なるほど。それでは……強いはずだ。」


ガエンは照れくさそうに頭を掻く。


「まぁ、みんな良い奴ばっかだからな。」


その時、少し離れた場所でラーシャが遠慮がちに口を開いた。


「み、みんな……私なんかにも、すごく優しくしてくれるんです……。」


マイトも優しく頷く。


「静寂の城は、強さよりも仲間を大事にする場所だからね。」


ダグラスも短く言う。


「だから誰一人欠けさせる気はない。」


その言葉に、レムルスはゆっくりと目を閉じた。


(十人か……いや、その数字以上だ。)


一人ひとりの力も脅威。

だが本当に恐ろしいのは、その十人が互いを信頼し、支え合い、一つの家族のように結束していること。

それこそが、どんな名将でも崩すことのできない最強の陣形なのだと、軍師王レムルスは深く理解した。

レムルスは静かに笑みを浮かべた。


「そういえば、魔王バラムとは昔、一度だけ魔族会議で顔を合わせたことがある。」


ガエン達が「お?」と視線を向ける。


「会議が終わった後だったな。」


レムルスは思い出すように目を細めた。


「各国の王達を捕まえては、真剣な顔でこう聞いて回っていた。」


少し間を置いてから、苦笑する。


「『おすすめの観光地ってどこだ? 温泉とか景色が綺麗な場所とか、美味い飯が食える町とか教えるがいい!』とな。」


訓練場が一瞬静まり返る。


「…………。」


次の瞬間。


「ぶっ!」


ガエンが盛大に吹き出した。

ダグラスは額を押さえ、深いため息をつく。

マイトは「あー……」と苦笑いを浮かべた。

レムルスも思わず笑う。


「やはり、あれは魔王らしくなかったか。」


ガエンは腹を抱えながら笑う。


「いや、間違いなくバラムだわ、それ!」


ダグラスも呆れ顔で頷いた。


「会議の内容より旅行の計画を優先する男だからな。」


レムルスは思わず尋ねる。


「やはり、あの頃から変わっていないのか。」


ガエンは即答した。


「全然変わってねぇ。」


「むしろ悪化してる。」


ダグラスが真顔で付け加える。


「この前なんて、『世界一周したいなぁ』とか言い出したからな。」


「そうそう!」


ガエンも勢いよく頷く。


「『海底都市も見たいし、天空都市も見たいし、温泉巡りもしたい!』って目ぇキラキラさせてさ。」


頭を抱えながら天を仰ぐ。


「本気になれば世界征服なんて誰も止められねぇくらい強いくせに、余計なことばっか思いつくんだよ!」


ダグラスも珍しく同意する。


「こちらの身にもなってほしい。」


「『旅行する前に仕事終わらせよう!』って、毎回予定表を作る俺達の苦労を知らねぇんだから。」


ガエンが肩を落とす。


「旅先で新しい祭り見つけたら、『うちの祭にも取り入れよう!』とか言い出すしな。」


「思いつきの被害者は、いつも我々だ。」


ダグラスが疲れ切った表情で締めくくる。

ラーシャも小さく苦笑した。


「で、でも……バラム様、とても楽しそうにお話しされますよね。」


「それは否定しない。」


ダグラスは即答する。


「本人は心の底から楽しそうだ。」


「だから余計に止めづれぇんだよ!」


ガエンが頭を抱える。

訓練場には笑い声が広がっていく。

そんな中、マイトが肩をすくめて笑った。


「居心地がよすぎるんだよ。」


全員の視線がマイトへ向く。


「静寂の城ってさ。」


穏やかに続ける。


「誰もバラムを『魔王だから』って遠ざけないし、何か思いついたらちゃんと話を聞いてくれる。失敗しても笑ってフォローしてくれる仲間がいる。だから安心して、子どもみたいに『次はこれやりたい!』って言えるんだ。」


ガエン達は顔を見合わせる。

そして苦笑した。


「……あぁ確かにな。否定できん。」


マイトは笑顔のまま締めくくる。


「世界で一番安心できる場所なんだよ、静寂の城は。」


レムルスはその言葉を静かに噛みしめた。


(なるほど……。)


魔王だから自由なのではない。

信頼できる仲間達に囲まれ、どんな夢を語っても受け止めてくれる場所があるからこそ、あの男はあれほど自然に笑っていられるのだ。

だからこそ、強大な力を持ちながら世界征服ではなく旅行や祭りを語り、人々の笑顔を願う。

レムルスは穏やかに笑った。


「魔王バラムは、実に不思議な王だ。」


ガエンも満面の笑みで頷く。


「不思議だけどな、俺達にとっては、世界一自慢の魔王なんだ。」


レムルスは、その言葉を聞いてしばらく黙り込んだ。

訓練場にも静寂が訪れる。

兵士達も、誰一人として口を開かなかった。

レムルスは腕を組み、ゆっくりと目を閉じる。


(世界征服も可能な戦力を持ちながら、望むのは旅行や祭り、そして笑顔か……。)


軍師として考える。

もし彼らが本気で侵略を始めれば、この国だけではない。魔族領人間領全体を巻き込む大戦になるだろう。

だが彼らはその力を誇示しようともしない。

むしろ、人と魔族が笑い合える運動会を開こうとしている。

国同士が交流し、子ども達が一緒に走り、大人達が肩を並べて笑う。

そのために、各国を自ら歩き回り、頭を下げてスポンサーを集めている。


(……これほど愚直で、これほど平和な”世界征服”があるものか。)


思わず口元が緩んだ。

やがてレムルスは静かに目を開く。

その瞳には、もう警戒ではなく穏やかな光が宿っていた。

ガエン達を一人ずつ見つめる。

ガエン、ダグラス、ラーシャ、そして勇者マイト。

誰の顔にも打算はない。

あるのは、大切な仲間と、大切な居場所を守りたいという真っ直ぐな想いだけだった。

レムルスは小さく息を吐く。


「……決めた。」


ガエンが首を傾げる。


「ん?」


レムルスはゆっくりと立ち上がった。

そして、柔らかな笑顔を浮かべる。


「軍事国家バルファードは、静寂の城が主催する大運動会のスポンサーになろう。」


「!!」


その場にいた全員が目を見開いた。

兵士達からも驚きの声が漏れる。


「陛下が……。」

「スポンサー契約を……。」


レムルスは静かに頷いた。


「武力だけでは、国は長く栄えない。」


そう言って、穏やかな視線をガエン達へ向ける。


「人と人が笑い合える時間があるからこそ、平和には価値がある。」


ガエンの表情がぱっと明るくなる。


「本当か!」


「ああ。」


レムルスは力強く頷いた。


「これは軍事国家としての判断でもあり、私個人の願いでもある。」


マイトが嬉しそうに笑う。


「ありがとう!」


ラーシャも胸の前で両手を合わせ、目を潤ませた。


「よ、よかったです……!」


ダグラスも静かに頭を下げる。


「感謝する。」


レムルスは軽く首を振った。


「礼を言うのはこちらだ。」


四人が不思議そうな顔をする。


「今日、私は多くを学ばせてもらった。」


少しだけ笑う。


「武力とは、人を屈服させるためだけのものではない。強さとは、守るためにある。そして本当に国を変えるのは、恐怖ではなく笑顔なのだと。」


その言葉に、ガエンは照れくさそうに頭を掻いた。


「そこまで大したことじゃねぇよ。」


「いや。」


レムルスは首を横に振る。


「君達は気付いていないだけだ。」


真っ直ぐ四人を見る。


「君達は、すでに国と国を繋ぎ始めている。」


その一言に、四人は静かに顔を見合わせた。

レムルスは右手を差し出す。


「改めてお願いしよう。」


ガエンも笑顔でその手を握る。

固く、力強い握手が交わされた。


「これからよろしく頼む、ガエン殿。」


「おう! こっちこそよろしくな!」


その瞬間、訓練場は大きな拍手と歓声に包まれた。

軍事国家バルファード。

その国はこの日、新たな同盟国を得た。

武力によってではない。

互いの信頼と笑顔によって結ばれた、新しい絆として。

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