↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静寂の城〜魔王は世界征服をしたい〜  作者: 赤井六舷
人間領司法国家、サイヴァーン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/171

44.司法国家、つまらないと言われる

司法国家サイヴァーンでのスポンサー交渉は驚くほど順調に進んだ。

何故かリターシャ国王は運動会に乗り気で次々と契約が進む。

そしてガエンが遠い目をしている間にも話は進んでいた。


「スポンサー契約書は後日作成します。」


リターシャが言う。


「競技案も送付します。」


「四百八十七ページ全部か。」


「もちろんです。」


「やめろ。」


即答だった。

だがリターシャは気にしない。


「さて。」


全員を見る。


「せっかく来たのです。」


嫌な予感がした。

ガエンが眉をひそめる。


「何だ。」


「城を案内します。」


「何で。」


「スポンサー同士の親睦です。」


「そんな制度あったか?」


「今作りました。」


恐ろしい国王だった。

騎士団長ですら止めない。

止められない。


こうして何故かガエン達は司法国家サイヴァーン観光ツアーに参加する事になった。


◇


まず案内されたのは王城の中だった。

巨大だった。

無駄な装飾は少ない。

豪華というより機能美。

廊下も広く警備も厳重。

マイトが辺りを見回す。


「なんか真面目な城だな。」


「真面目です。」


リターシャが即答した。


「酒場とかないの?」


「ありません。」


「遊技場は?」


「ありません。」


「ゲーム部屋は?」


「ありません。」


「つまんな。」


騎士達の眉がピクッと動いた。

だがリターシャは平然としていた。


「代わりに書庫があります。」


「つまんな。」


即答だった。

ゼルなら喜びそうだった。


次に案内されたのは裁判所。

巨大だった。

ガエンが呆れる。


「裁判所がデカすぎるだろ。」


「司法国家ですので。」


正論だった。

中では実際に裁判が行われていた。

静で厳粛だった。

マイトも流石に黙る。

裁判官達が書類を確認し、証人が証言し、弁護人が主張する。

全てが規律正しい。

ナラが感心する。


「徹底してるね。」


「法律は国の骨格です。」


リターシャはそう言った。

少しだけ、本当に少しだけ誇らしそうだった。


その後。

一行は城の地下へ向かっていた。

マイトが首を傾げる。


「今度はどこだ?」


「牢獄です。」


全員が納得した。


牢獄は驚くほど清潔だった。

鉄格子。石壁。警備兵。全て整っている。

そして奥の牢。そこにゼルはいた。

床に座り。本を読んでいた。いつも通り、まるで自宅。

看守が頭を抱えている。

ゼルが顔を上げた。


「おや。」


平然としている。


「見学ですか。」


「違う。」


ガエンが即答した。


「様子を見に来た。」


「なるほど。」


ゼルは本を閉じる。


「快適ですよ。」


看守が叫んだ。


「快適じゃありません!」


全員が看守を見る。

看守は涙目だった。


「こいつ入ってからずっと法律書を読んでいるんです!」


「暇だったので。」


「しかも誤字を百二十七箇所指摘してきました!」


「仕事を手伝っただけですが。」


「手伝うな!」


看守の胃が限界だった。

リターシャが少し興味深そうに聞く。


「百二十七箇所ですか。」


「百三十一箇所です。」


ゼルが訂正した。


「追加で四箇所見つけました。」


文官長が青ざめた。


「後で報告書を。」


「提出済みです。」


「早い。」


誰よりも早かった。

マイトが牢の前にしゃがみ込む。


「元気そうだね。」


「牢獄ですから。」


「答えになってない気がする。」


ゼルは少し考える。

そして言った。


「本があるので。」


全員が納得した。

こいつ本さえあれば生きていける。

ガエンが腕を組む。


「暴れてないだろうな。」


「失礼ですね。」


ゼルが言う。


「勇者がいるのに暴れる馬鹿はいません。」


「自分で言うな。」


「事実です。」


ゼルは平然としていた。

全員が納得した。


その時だった。

リターシャがふと口を開く。


「そういえば。」


ゼルを見る。


「以前、我が国の中央図書館に来ていましたね。」


ゼルが珍しく少しだけ目を細めた。


「ああ。」


看守が驚く。


「知り合いだったんですか?」


「顔だけは。」


リターシャが答える。


「十年ほど前です。」


ゼルが本を閉じる。


「研究資料を探していました。」


「覚えています。」


リターシャは頷いた。


「当時から変人でした。」


「光栄です。」


「褒めていません。」


即答だった。

マイトが興味津々で聞く。


「何やってたの?」


「古代魔術文明の文献調査です。」


「へぇ。」


「三ヶ月ほど滞在しました。」


ナラが驚く。


「三ヶ月?」


「図書館に。」


「宿じゃなくて?」


「図書館に。」


全員が納得した。

ゼルならやる。

リターシャが続ける。


「閉館時間になっても帰らないので司書達が困っていました。」


「まだ読んでいる途中でした。」


「夜中に勝手に論文を書いて置いていきました。」


「参考になったでしょう。」


「参考になりました。」


認めた。

認めるんだ。


「現在も保管されています。」


「そうですか。」


ゼルは少しだけ嬉しそうだった。本当に少しだけ。

ガエンが呆れる。


「牢屋で昔話するな。」


「では研究の話を。」


「するな。」


即座に止めた。


しばらくして。

一行は牢獄を後にした。

出口へ向かう途中リターシャが振り返る。


「では次です。」


ガエンが嫌な予感を覚える。


「まだあるのか。」


「街を案内します。」


「まだやるのか。」


「もちろんです。」


目が輝いていた。

なぜか楽しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。