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静寂の城〜魔王は世界征服をしたい〜  作者: 赤井六舷


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11.目玉焼き、戦争になりかける

王都フィルドリアに向かう街道。

ガエン、ダグラス、ナラ、ミリアの四人は馬車に揺られていた。


ミリアが外の景色を眺めながら呟く。


「景色が綺麗ね。まるで食べる前の目玉焼きみたい...」


ガエンが考え込む。


「...どういう意味だ?」


ダグラスがガエンに顔を向ける。


「考えるだけ無駄だ。」


ナラはクルクルと飛びながら言った。


「食べる前の目玉焼きって確かに綺麗な感じするよね!ぷるんとして!」


ガエンが少し真剣な顔になった。


「しかし凄い名前だよな、目玉焼きって。目玉を焼いてるわけじゃないのにな。なら本当に目玉を焼いたのはなんて言うんだ?」


ミリアが即答した。


「ホラー料理。」


ダグラスがうなずく。


「満場一致だな。」


ナラが手を挙げる。


「でもさ!もし巨大モンスターの目玉だったら普通の料理になるんじゃない?」


ガエンが腕を組む。


「……あー、なるほど。サイクロプスの目玉焼きとかなら成立するのか。」


ダグラスが遠い目をした。


「嫌な世界の料理名ランキング上位だな。」


ナラは妙にテンションが上がっていた。


「絶対おっきいよ!フライパンこんな感じ!」


両手を広げる。

どう考えても馬車より大きい。

ガエンがツッコむ。


「街ごと焼く気か。」


ミリアがふと真顔になった。


「でも黄身を崩す派と崩さない派で戦争になるわね。」


空気が止まった。

ダグラスが静かに口を開く。


「……それは実際ある。」


ガエンもうなずく。


「わかる。醤油派、塩派、ソース派もいる。」


ナラが驚愕する。


「え!?ソース!?」


「なんだその反応。」


「だって目玉焼きにソースって、お好み焼きが迷子になった感じしない!?」


ガエンがハッとした。


「確かに……。」


ダグラスが低い声で言う。


「待て。ならケチャップ派はどうなる。」


馬車の空気がさらに重くなった。

ミリアがゆっくり目を閉じる。


「それはもう別の生命体よ。」


ナラが震える。


「怖い……。」


ガエンが真面目に分析し始めた。


「いや待て、オムレツ文化圏の可能性もある。完全否定は危険だ。」


ダグラスがふと思い出したように言った。


「そういえば魔王がこの前、マヨネーズをかけていたな。」


馬車の中が静まり返った。

ナラが口をぱくぱくさせる。


「……マヨ?」


ミリアが眉をひそめる。


「濃厚すぎない?」


ガエンは腕を組み、難しい顔になる。


「いや、でも半熟なら合う可能性はある……」


ダグラスが遠い目をした。


「魔王は『白身の優しさを包み込む』とか言っていた。」


全員が黙った。

ナラが小声で言う。


「急に食レポ始まった……。」


ガエンが真顔で確認する。


「ちなみに他には何をかけてた?」


「大量の黒胡椒。」


「料理上級者だ……。」


ミリアが悔しそうに唇を噛む。


「なんか腹立つわね。妙に美味しそうなのが。」


ナラが勢いよく立ち上がった。


「じゃあ最強の目玉焼き決定戦しようよ!」


ガエンが嫌な予感しかしない顔をする。


「お前、その一言で国が滅ぶタイプの企画だぞ。」


ナラは止まらない。


「塩派!醤油派!ソース派!ケチャップ派!マヨ派!全部集めて!」


ダグラスがぼそっと言う。


「宗教戦争だな。」


ミリアが指を立てた。


「じゃあ私はバター醤油派で。」


ガエンが振り向く。


「強いの来たな。」


ナラが叫ぶ。


「うわぁぁ出たよ後乗せバターで全部解決する人!!」


ミリアはふっと笑った。


「暴力的な美味しさってあるのよ。」


ダグラスが静かにうなずく。


「認めざるを得ない。」


ガエンが頭を抱える。


「なんでこんな真剣に目玉焼きを語ってるんだ俺達……」


その時、御者席の方から低い声が聞こえた。


「……通はな、“塩と胡椒だけ”だ。」


全員が凍りつく。

いつの間にか御者のおっさんが会話に参加していた。

ナラが身を乗り出す。


「いたの!?」


「ずっといたわ。」


御者のおっさんは渋い顔で続けた。


「黄身は半熟。白身の端はカリカリ。それを熱い鉄板から直接食う。」


ガエンが思わずうなる。


「……わかってる人間の喋り方だ。」


ダグラスが静かに問う。


「パン派か。米派か。」


御者のおっさんはニヤリと笑った。


「両方だ。」


馬車の空気が震えた。

ミリアが小さく呟く。


「……化け物ね。」


ナラが尊敬の眼差しを向ける。


「つよい。」


ガエンは額を押さえた。


「なんなんだこの会話……王都フィルドリアへ向かう重大な旅の途中だぞ……」


すると御者のおっさんが前を見たまま言った。


「兄ちゃん達。」


「……なんだ?」


「フィルドリア王、レイルド陛下はな。」


四人が少し真面目な顔になる。


「めちゃくちゃ目玉焼きにうるさいぞ。」


馬車の中が静まり返った。


「…………は?」


ガエンが間の抜けた声を漏らす。

ダグラスがゆっくり確認した。


「今なんて言った。」


御者のおっさんは当然のように続ける。


「王都フィルドリアじゃ“朝食文化”がやたら発展しててな。特にレイルド陛下は目玉焼きに異常なこだわりがある。」


ナラが目を輝かせる。


「異常ってどのくらい!?」


「昔、城の料理長が黄身を潰して出した時、三日間会議が止まった。」


「重すぎる!!」


ガエンが叫んだ。

ミリアが真顔で聞く。


「戦争は?」


「寸前だった。」


「国家案件じゃないの。」


ダグラスが頭を抱えた。


「この世界、もっと他に気にすることあるだろ……」


御者のおっさんはまだ語る。


「しかも陛下、“白身の焼き加減は芸術”って言ってな。城には専属の卵鑑定士までいる。」


ナラが吹き出す。


「卵鑑定士!?そんな職業あるの!?」


「フィルドリアにはある。」


ガエンが遠い目をした。


「もう嫌だこの国……」


ミリアがふと思い出したように言う。


「でも娘のミル姫を溺愛してるのよね?」


「ああ。」


御者のおっさんはうなずいた。


「姫様が“甘い卵焼き好き”って言った翌日に、王都中の店が甘い卵焼きを出し始めた。」


ダグラスが呟く。


「権力の使い方がおかしい。」


ナラはケラケラ笑っている。


「楽しそうな国じゃん!」


「お前は楽しそうならなんでもいいな。」


ガエンが呆れた時だった。

馬車がゆっくり速度を落とし始める。


ゴト……ゴト……。


車輪の音が変わる。

石畳だ。

御者のおっさんが前方を指差した。


「見えてきたぞ。」


四人が外を見る。

巨大だった。

高くそびえる白亜の城壁。

朝日を受けて輝く巨大都市。

何本もの旗が風にはためいている。


王都フィルドリア。


その中央には、空に届きそうなほど巨大な王城がそびえていた。

ナラが目を丸くする。


「うわぁぁぁ……でっか……!」


ミリアも少し感心したように目を細める。


「綺麗ね。」


ダグラスは静かに周囲を観察していた。


「警備もかなり厳重だな。」


城門前には鎧姿の兵士達が並び、長い入城列ができている。

商人、旅人、貴族の馬車。

様々な人々が行き交っていた。

ガエンが息を吐く。


「……さて。」


「スポンサー交渉。」


「という名の世界旅行ね。」


「実質、目玉焼き戦争の前線だけどな。」


ダグラスの一言で全員が嫌な顔をした。

その時だった。

門の上から兵士の怒鳴り声が響く。


「次の馬車ァ!!止まれぇ!!」


御者のおっさんが手綱を引く。

馬車が門の前で停止した。

すると門番の兵士が書類を見ながら顔を上げる。


「所属と目的を――」


そこで兵士の視線がミリアに止まった。

さらにガエンを見る。

ダグラスを見る。

最後に、ふわふわ飛んでるナラを見る。

兵士の顔が引きつった。


「…………なんだこのメンバー。」


「静寂の城から来た。おたくの王様に呼ばれてな。」


ガエンはそう言ってフィルドリアからの封書を兵士に渡す。

兵士は封書を受け取ると、訝しげな顔のまま封蝋を確認した。


次の瞬間。


「……っ!?」


顔色が変わった。

周囲の兵士達もざわつく。


「王家の紋章だと……?」

「直通許可証!?」

「しかも最上位……!」


ガエンが嫌な予感を覚える。


「おい、なんか反応がおかしくないか?」


兵士はゴクリと喉を鳴らし、もう一度四人を見る。


オーガ。

死神。

ピクシー。

ラミア。


どう見ても王都に平穏をもたらす顔ぶれではない。

兵士が震える声で言った。


「し、失礼しました!!レイルド陛下より“最優先で通せ”との命令が出ています!!」


門が一気に騒がしくなる。


「道を開けろ!!」

「王命だ!!」

「馬車通過するぞ!!」


ギギギギギギ……。


巨大な門が開いていく。

ナラが目を輝かせた。


「うわぁ!VIPだ!」


ダグラスが嫌そうな顔をする。


「嫌な予感しかしないVIPだな。」


ミリアは封書を見つめる。


「……ねえガエン。」


「なんだ。」


「この国、本当にスポンサー交渉だけかしら。」


「今さら怖いこと言うな。」


馬車がゆっくり王都へ入っていく。

中はさらに凄かった。


白い石畳。

整った街路。

巨大な噴水。

空中を飛ぶ伝書鳥。

朝市の香ばしい匂い。


そして――。


「焼きたて目玉焼きサンド!」

「黄身とろ〜り三種チーズ!」

「朝限定!カリカリベーコンセット!」


ガエンが立ち止まりそうになる。


「……朝飯の圧が強い。」


ダグラスが周囲を見る。


「本当に朝食文化国家だな。」


ナラは既に屋台に吸い寄せられていた。


「ねえ見て見て!!目玉焼き型のパンある!!」


ミリアも別の店を見ている。


「あっち卵焼き専門店よ。」


「専門店!?」


ガエンが叫ぶ。

すると横を通った貴婦人達の会話が聞こえた。


「最近は半熟派が増えて困りますわね。」

「ええ、本来の白身美学を理解してませんの。」

「でも陛下は“端カリ派”ですわよ?」


ダグラスが真顔になる。


「もう文化じゃなくて思想だろ。」


その時だった。


ドドドドドドドッ!!


前方から馬の蹄の音が響く。

兵士達が一斉に道を開けた。


「近衛騎士団だ!!」

「道を空けろ!!」


白銀の鎧を纏った騎士達が高速で駆け抜けてくる。

その中央にひときわ派手な白馬に乗った女性騎士が、馬車の前で華麗に停止した。


銀髪。

鋭い目。

白いマント。


そして胸元にはフィルドリア王家の紋章。

女性騎士は四人を見るなり、ビシッと敬礼した。


「静寂の城より来訪された皆様ですね!」


ガエンがうなずく。


「ああ、そうだが。」


女性騎士は真顔で言った。


「レイルド陛下が“最高の朝食でもてなせ”と命じています!!」


全員が固まった。


「…………は?」


騎士は続ける。


「現在、王城料理人百二十七名が総動員されています!!」


ガエンの顔が引きつる。


「待て待て待て。」


「目玉焼きは半熟・固焼き・両面焼き・雲焼き・蒸し焼き、全形式を用意!!」


ナラが爆笑し始めた。


「全形式って何!!」


「パンは十二種類!!米は七銘柄!!調味料は地方別に四十八種!!」


ミリアが額を押さえる。


「気合いの入れ方がおかしいわ……」


ダグラスが低い声で聞いた。


「……ちなみに断ったら?」


騎士は一切迷わず答えた。


「陛下が泣きます。」


「重い。」


ガエンが即答した。

騎士はさらに真剣な顔になる。


「あと、“もし口に合わなかったら国として改善したい”とのことです。」


「国家規模で朝食PDCA回すな。」


すると騎士がふとナラを見る。


「それと。」


「ん?」


「姫様が、“甘い卵焼きを理解してくれる人が来るなら絶対会う”と。」


ミリアがゆっくりナラを見る。

ナラが固まる。


「……え?」


ガエンが嫌な笑みを浮かべた。


「よかったな。」


ダグラスが肩を叩く。


「国家級の卵焼き会談だ。」


ナラが青ざめる。


「なんで!?ボクまだ何も言ってないよ!?」


四人は城に案内された。

王都フィルドリア、王城。

馬車を降りた瞬間。


「ようこそフィルドリアへ!!」


パァンッ!!


クラッカーが鳴った。

ガエン達の頭上から紙吹雪が降る。

しかも全部、卵型だった。

ガエンが真顔で空を見上げる。


「もう帰りたい。」


王城前には赤絨毯。

左右には整列した使用人達。

そのさらに奥には巨大な横断幕。


『歓迎!!静寂の城御一行様!!

〜朝食は世界を救う〜』


ダグラスが低い声で呟く。


「思想が強い。」


ナラは逆にテンションが上がっていた。


「すごーい!!お祭りみたい!!」


ミリアが小声で言う。


「多分これ、国を挙げて本気なのよ。」


その時だった。


ゴォォォン!!


巨大な鐘が鳴る。

兵士が声を張り上げた。


「レイルド・ゴールファス陛下、ご到着!!」


城門がゆっくり開く。そこから現れたのは、


豪華な王衣。

金の刺繍。

威厳ある長身。

鋭い眼光。


そして。

なぜかエプロンを着けた王だった。

ガエンが確認する。


「……あれエプロンか?」


ダグラスが目を細める。


「エプロンだな。」


胸元には刺繍されている。


『BEST EGG MASTER』


ミリアが吹き出した。


「最高ね。」


王、レイルド・ゴールファスは、堂々と四人の前まで歩いてくる。

そして重厚な声で言った。


「歓迎しよう!!静寂の城の勇士達よ!!」


「……どうも。」


「遠路はるばる来てくれたこと、心より感謝する!!」


レイルド王はそこで一拍置き、急に真顔になった。


「さて。」


嫌な空気が流れる。


「諸君。」


王がゆっくり問いかける。


「黄身は、“いつ崩す”?」


沈黙。

ガエンが目を閉じた。


「始まった……。」


レイルド王の眼光が鋭くなる。


「最初に崩すか。」

「途中で崩すか。」

「最後まで崩さぬか。」


王城全体が静まり返る。

使用人達が固唾を飲む。

騎士達まで緊張していた。

ナラが小声で聞く。


「えっ、これ間違えたらどうなるの?」


近くのメイドが震える声で答えた。


「昔、一人だけ“全部混ぜる派”がいて……」


「いて?」


「地下送りになりました。」


「怖ぁ!!」


ガエンが即座に言った。


「冗談だよな!?」


メイドは目を逸らした。


「……多分。」


「多分!?」


レイルド王は腕を組み、四人を見渡す。


「さあ、答えよ。」


空気が重い。

最初に口を開いたのはミリアだった。


「私は途中派ね。」


王の眉が動く。


「理由は?」


「黄身の変化を楽しめるからよ。最初は白身を味わい、途中から黄身の濃厚さで流れを変える。目玉焼きは水面に映るお日様みたいなものよ。」


王がゆっくりうなずく。


「……理解している。」


周囲がざわつく。


「おお……」

「途中派だと……」


ガエンが思った。


(何この空気。)


次にダグラスが口を開く。


「最後まで崩さない。」


「ほう。」


「最後の一撃で全てを支配する。パンに乗せるのもまたよし。」


レイルド王の目が見開かれる。


「終盤支配型……!」


騎士達がざわつく。


「まさか実在したのか……!」

「伝説の……!」

「ラ、ラピュ....」


ガエンが頭を抱える。


「なんなんだよその二つ名。」


レイルド王は今度はナラを見る。


「そなたは。」


ナラがビシッと手を挙げた。


「最初に崩す派!!」


空気が凍る。


「なっ……!?」

「開幕黄身破壊だと!?」

「正気か!?」


ナラは慌てる。


「えっ!?ダメなの!?」


しかしレイルド王は笑った。


「フッ……。」


周囲がざわめく。


「陛下が笑った……!?」


王はナラを指差す。


「良い!!」


「えっ。」


「大胆!!実に大胆!!恐れず黄身へ突撃するその姿勢!!嫌いではない!!」


ナラがぽかんとする。


「せ、セーフ……?」


ガエンがぼそっと言う。


「ギリギリだった気がする。」


そして最後に。

全員の視線がガエンへ向いた。

レイルド王が重々しく問う。


「……そなたは。」


ガエンは深く息を吐いた。

そして静かに言う。


「ケースバイケースだ。」


沈黙。

次の瞬間。


「「「「おおおおおおお!!!」」」」


王城が揺れた。

騎士達が叫ぶ。


「究極回答!!」

「万能適応型だ!!」

「理論派だぞ!!」


ガエンが困惑する。


「なんで歓声上がってんだよ。」


レイルド王は感動したように目を閉じた。


「素晴らしい……。」

「卵と向き合っている者の答えだ……。」


ダグラスが小声で言う。


「卵と向き合うってなんだ。」


その時だった。

城の奥から元気な少女の声が響く。


「お父様ぁぁぁ!!」


バタバタバタッ!!


凄い勢いで一人の少女が走ってきた。


金髪。

青いドレス。

大きな瞳。


そして片手には。

甘い卵焼きを持っていた。


「ミル姫だ。」

「姫様!」


少女、ミル・ゴールファスは四人を見るなり目を輝かせる。


「甘い卵焼き派の人っている!?」


ナラがビクッと肩を震わせた。


「き、来たぁぁぁ!!」


ミル姫は一直線にナラへ駆け寄る。


「あなた!?あなたなの!?甘い卵焼きを理解してくれる旅人さん!!」


「えっ、いや、ボク別に代表とかじゃ...」


「同志!!」


「重い重い重い!!」


ミル姫はナラの体をがっしり掴んだ。

目がキラキラしている。


「ねえ聞いて!?甘い卵焼きって“おやつ”じゃなくて“朝の幸福”だと思わない!?」


「え、えーっと……」


ナラが助けを求めるようにガエンを見る。

ガエンは即座に視線を逸らした。


「自分でなんとかしろ。」


「薄情!!」


するとミリアがくすりと笑った。


「私は好きよ、甘い卵焼き。」


ミル姫の顔がぱあっと輝く。


「本当!?」


「ええ。塩気のある料理と合わせると、意外とバランスがいいもの。」


「わかる!!」


ミル姫は勢いよくうなずいた。


「甘い卵焼きのあとにお味噌汁飲むと幸せなの!!」


ダグラスがぼそっと言う。


「急に解像度が高い。」


レイルド王は腕を組み、満足げにうなずいていた。


「うむ。やはり卵は世界を繋ぐ。」


「そのスローガン本当にやめろ。」


ガエンが疲れた顔で言う。

するとレイルド王が大きく手を広げた。


「よし!!議論は朝食の席で続けようではないか!!」


「まだやるのか……」


「当然!!」


王は堂々と言い切った。


「食べずに語る卵など存在せん!!」


騎士達が一斉に敬礼した。


「「はい陛下!!」」


ガエンが頭を抱える。


「統率力を変な方向に使うなぁ……」


そして、四人は巨大な朝食会場へ案内された。


長いテーブル。

湯気の立つ料理。

焼きたてのパンの香り。


そして。


「卵多っ!!」


ガエンが叫んだ。


目玉焼き。

卵焼き。

オムレツ。

スクランブルエッグ。

エッグサンド。

茶碗蒸しっぽい何か。

卵スープ。

さらには卵型のデザートまで並んでいる。


ナラが目を輝かせた。


「うわぁぁぁ!!すごい!!」


ミル姫が胸を張る。


「フィルドリア王城、最高朝食フルコースだよ!」


ダグラスが真顔で呟く。


「“最高朝食”って単語を初めて聞いた。」


レイルド王はエプロン姿のまま席についた。


「さあ!!好きに食べるがよい!!」


使用人達が一斉に料理を配り始める。

ミリアは甘い卵焼きを一口食べ、目を細めた。


「……美味しい。」


ミル姫が嬉しそうに身を乗り出す。


「でしょ!?」


一方ガエンは塩気の効いた半熟目玉焼きをパンに乗せていた。


「こっちもかなり美味いな。」


ダグラスは静かに両面焼きを切り分ける。


「カリカリベーコンとの相性がいい。」


ナラは両方を交互に食べていた。


「甘いのも美味しいし、甘くないのも美味しい!!」


その言葉で、ふと場が静かになる。

レイルド王が腕を組んだ。


「……なるほど。」


ミル姫もぱちぱち瞬きする。

ガエンが肩をすくめた。


「結局、食う側が美味しく食べられればそれでいいんじゃねぇの?」


ミリアがうなずく。


「料理は争うものじゃなくて楽しむものだもの。」


ダグラスも珍しく否定しなかった。


「好みが違うから面白い。」


ナラは元気よくフォークを掲げる。


「つまり!!」


全員が見る。


「甘いのも甘くないのも、どっちも美味しい!!」


沈黙、そして次の瞬間レイルド王が豪快に笑い出した。


「ハーッハッハッハッ!!」


ミル姫も笑う。


騎士達も。

メイド達も。

料理人達まで笑っていた。


レイルド王は満足そうに言った。


「うむ!!実に良い朝食会談だった!!」


ガエンが呆れた顔でパンをかじる。


「会談っていうか、ただの朝飯だろ……」


すると近くの料理人が感動したように涙ぐんでいた。


「甘味派と塩味派が同じ卓を囲んでいる……」

「歴史的瞬間だ……」


ダグラスが真顔で言う。


「だからなんなんだこの国。」


その時ミル姫が身を乗り出した。


「ねえねえ、運動会やるんでしょ?ガナーノのギルドマスターさんが言ってたよ!楽しそう!」


ガエン達の動きが、一瞬だけ止まった。

ナラがぴくっと反応する。


「……ギルドマスター?」


ミル姫は無邪気にうなずく。


「うん!静寂の城で世界を巻き込む運動会をやるみたいだ!って!」


ガエンが天井を見上げた。


「情報回るの早ぇなぁ……」


ダグラスがぼそっと言う。


「そういえばスポンサー集めの予定だったな。」


レイルド王は興味深そうに顎に手を当てた。


「ほう?スポンサーとな?」


ナラの目が、キランと光った。

その瞬間、ガエンが嫌な予感で顔をしかめる。


「おい待てナラ、その顔やめろ。」


「えへへ。」


「絶対ろくでもない。」


ナラは机の上に立ち上がった。


「ではここで!!静寂の城プレゼンタイムを始めます!!」


「始めるな。」


しかしもう遅かった。

ナラはどこからともなく紙束を取り出す。


「まず今回の運動会は、種族・国家・文化を越えた超大型交流イベントです!!」


ミル姫が目を輝かせる。


「わぁ!」


「現在宣伝で回る予定なのは、氷雪都市クリアフォル、軍事国家バルファード、海洋都市アトラマリス、聖王国ルミナリア、司法国家サイヴァーン――」


レイルド王の眉がぴくりと動く。


「……かなり大規模ではないか。」


ガエンが小声で呟く。


「気付かれ始めたな。」


ナラは勢いを止めない。


「さらに!!各国から観光客、商人、冒険者、料理人が集まる予定!!つまり!!」


ビシィッ!!


ナラがレイルド王を指差した。


「フィルドリアの名物を世界に売り込む大チャンス!!」


空気が変わった。

レイルド王の目がギラリと光る。


「……続けよ。」


ガエンが頭を抱える。


「食いついた。」


ナラは机に飛び乗った。


「例えば!!“フィルドリア名物・幸福の甘い卵焼き”!!」


料理人達がざわつく。


「幸福の……!」

「なんという良い響き……!」


ナラはさらに畳み掛ける。


「限定屋台!卵料理対決!王都直伝朝食セット!さらにミル姫監修スイーツコーナー!!」


ミル姫が立ち上がる。


「やりたい!!」


「早い。」


ダグラスが即座に突っ込む。

レイルド王は真剣な顔で腕を組んでいた。


「ふむ……フィルドリアの卵文化を世界へ……」


「卵文化ってなんだよ。」


ガエンが呻く。

だがナラは止まらない。


「しかもスポンサーになれば!!会場パンフレットに国名掲載!!特設ステージで紹介!!各国要人との交流枠!!」


ミリアが静かに補足する。


「商人達への宣伝効果も高いでしょうね。王都フィルドリアのブランド力なら、かなり話題になるわ。」


レイルド王の後ろで、大臣らしき男達が急に計算を始めた。


「経済効果は……」

「観光収入も見込めます……!」

「卵関連市場が……!」


ダグラスが真顔になる。


「本当に卵で国が動いてる。」


するとミル姫が、ぐいっとレイルド王の袖を引っ張った。


「お父様!」


「うむ?」


「スポンサーになろう!!」


王は娘を見る。

ミル姫は満面の笑みだった。


「だって絶対楽しそうだもん!!」


数秒の沈黙。

そして、レイルド王は勢いよく立ち上がった。


「よし!!全面協力だァ!!」


城中に響くレベルの大声だった。

騎士達が即座に敬礼する。


「「はい陛下!!」」


料理人達も拳を突き上げる。


「卵を世界へ!!」


「だからなんなんだそのスローガン!!」


ガエンのツッコミが、朝食会場に綺麗に響き渡った。

ナラは机の上で勝利ポーズを決めた。


「やったぁぁぁ!!スポンサー獲得ぅぅぅ!!」


ガエンが深くため息を吐く。


「……本当に決まっちまった。」


ダグラスが紅茶を飲みながら呟く。


「開始十分で国家予算を動かしたピクシーを初めて見た。」


ミリアは優雅にティーカップを傾ける。


「しかも卵料理経由でね。」


その頃、レイルド王はすでに完全にやる気だった。


「書記官!!契約書を持て!!」

「広報部を呼べ!!」

「料理長!!試作品を増やせ!!」


「試作品?」


ガエンが嫌な予感で顔をしかめる。

料理長が目を輝かせた。


「“持ち歩ける甘い卵焼き”を開発します!!」


「なんだその発想。」


「串に刺せば屋台向けです!!」


「ちょっと待て、普通に美味そうなのやめろ。」


ナラが食いついた。


「えっ!?食べ歩き卵焼き!?」


ミル姫も大興奮だった。


「絶対人気出る!!」


大臣達も一斉にメモを始める。


「商品化を急げ!!」

「包装デザインは!?」

「王都限定パッケージを――」


ダグラスが静かに言った。


「暴走機関車だな。」


その時、重厚な扉が開く。


ガチャァン!!


入ってきたのは、眼鏡をかけた壮年の男だった。

山ほどの書類を抱えている。


「陛下。契約関連資料をお持ちしました。」


「うむ!!早いな!!」


男はガエン達を見る。


「私はフィルドリア王国財務長官、ベルノスです。」


ガエンの目が少し鋭くなった。


「……財務担当か。」


ベルノスは冷静な口調で続ける。


「スポンサー契約に際し、いくつか条件確認を。」


ナラがぴしっと敬礼する。


「はい!!なんでもどうぞ!!」


「まず、開催期間。」


「未定です!」


「来場予測。」


「たぶんいっぱい!!」


「雑。」


ガエンが即座に突っ込む。

ベルノスは慣れているのか無反応だった。


「予算規模。」


ナラがすっと紙を差し出す。

ガエンが横から補足する。


「基本運営はこっち持ちだ。スポンサーには宣伝区画と出店権、それから共同イベント枠を提供する。」


ベルノスの目が少し変わった。


「……想像以上にしっかりしていますね。」


ダグラスがぼそっと言う。


「ナラが勢いで突っ走ってるように見えて、ガエンが裏で全部計算してるからな。」


「聞こえてるぞ。」


ベルノスは書類をめくりながら続けた。


「王国側としては、“フィルドリア朝食文化展示区画”の設置を希望します。」


ガエンが眉をひそめる。


「なんだその妙に強いこだわり。」


レイルド王が堂々と言った。


「重要だからだ!!」


「勢いで押すな。」


ミル姫も手を挙げる。


「あと“甘い卵焼き初体験コーナー”も欲しい!!」


「そんな試食ブースみたいなノリで言うな。」


しかしナラは真剣だった。


「……いや、ありだね。」


ガエンが振り向く。


「お前まで!?」


ナラは指を立てる。


「食べ物系イベントは人が集まるんだよ!しかも“甘い派”“甘くない派”で盛り上がれる!!」


ミリアもうなずく。


「交流イベントとしては優秀ね。」


ダグラスが遠い目をした。


「運動会のはずなんだがな……」


ベルノスはさらさらと書き込んでいく。


「では、王国側スポンサー内容は――」


彼は読み上げた。


「資金援助。」

「物資提供。」

「料理人派遣。」

「移動屋台部隊支援。」

「広報協力。」


ガエンが途中で止まる。


「待て最後から二番目なんだ。」


レイルド王が誇らしげに胸を張る。


「フィルドリア屋台騎士団だ!!」


「屋台に騎士団いるのかよ!!」


騎士達が一斉に敬礼した。


「「焼きたてを守ります!!」」


「何を守ってんだお前ら。」


ミル姫はきらきらした顔でナラを見る。


「ねえ!!運動会で卵料理大会やっていい!?」


「いいよ!!」


「軽いな!?」


ガエンのツッコミが飛ぶ。

だがもう誰も止まらなかった。

料理長が叫ぶ。


「各国代表朝食バトルを!!」


大臣が乗る。


「観光誘致になります!!」


騎士団長まで拳を握る。


「警備は任せろ!!」


ダグラスが静かに呟いた。


「……なんか本当に世界規模になってきたな。」


ミリアが微笑む。


「最初はスポンサー探しだったのにね。」


ベルノスが契約書を確認しながら続ける。


「開催日は?」


「多分一年後くらい!」


ナラがビシッと指を立てて答えた。

ベルノスは一瞬だけ沈黙した。

そして静かに眼鏡を押し上げる。


「“多分”で国家間契約を締結する案件を、私は初めて見ました。」


「だよな。」


ガエンが心底安心した顔でうなずく。


「やっぱ普通そう思うよな。」


しかしベルノスは次の瞬間、さらさらとペンを走らせた。


「では“一年後開催予定”として調整します。」


「受け入れるのかよ。」


ダグラスが思わず突っ込む。

ベルノスは淡々としていた。


「陛下がすでに乗り気ですので。」


レイルド王は豪快に笑った。


「はっはっは!!細かいことはベルノスがなんとかする!!」


「どこの王もこんな感じなのか...」


ミル姫は契約書を覗き込みながら目を輝かせる。


「わぁ……本当に世界運動会になるんだ……。」


ナラも嬉しそうに羽をぱたぱたさせた。


「うん!!絶対楽しいよ!!」


ベルノスは最後のページを整え、机に置く。


「では、こちらが正式契約書になります。」


厚い。

やたら厚い。

ガエンが思わず聞いた。


「……なんでこんな分厚い。」


「屋台運営条項が増えました。」


「増やすな。」


「朝食文化展示区画の詳細も追加されています。」


「だからなんでそんな本気なんだ。」


さらにベルノスは淡々と続けた。


「“卵料理大会における審査基準”も暫定で記載済みです。」


「仕事が早すぎる。」


ミリアがくすっと笑う。


「優秀な財務長官ね。」


ベルノスは軽く会釈した。


「ありがとうございます。」


レイルド王は豪快に羽ペンを握った。


「では署名するぞ!!」


ドン!!


勢いよく名前を書く。

続いてベルノス。

そしてガエンにダグラス。


ガエンは署名しながら小さく呟いた。


「……まさか卵焼き談義から国家契約になるとはな。」


ダグラスが肩をすくめる。


「人生、何がきっかけになるかわからん。」


契約書が完成した瞬間――


パァン!!


城内にクラッカーが鳴り響いた。


「「スポンサー契約成立おめでとうございます!!」」


「準備良すぎるだろ!!」


いつの間にか楽団まで待機していた。

祝賀音楽まで流れ始める。

ミル姫が嬉しそうに立ち上がる。


「一年後までに、絶対すごいイベントにしようね!!」


ナラも拳を握る。


「うん!!世界中びっくりさせよう!!」


ベルノスは書類を丁寧にまとめながら言った。


「王国側も準備を進めます。屋台部隊、料理班、広報計画、輸送経路……一年あればかなり整えられるでしょう。」


ガエンが感心したように見る。


「本当に頼りになるな、あんた。」


ベルノスは少しだけ笑った。


「財務担当は、“夢物語を現実へ落とし込む”のが仕事ですので。」


ダグラスがぼそっと言う。


「かっこいいこと言ったな。」


その後、盛大な歓迎会まで開かれ、四人はそのままフィルドリア城へ一泊することになった。


夜。


客室。


豪華すぎる部屋のテーブルを囲み、ガエン達はぐったりしていた。


「……疲れた。」


ガエンがソファに沈む。


「朝食食べただけなのに国家契約した……。」


ミリアが紅茶を飲みながら笑う。


「しかも新しい食文化まで生まれそうよ。」


ダグラスは窓の外を見る。

王都フィルドリアの夜景は美しかった。

だが城下ではまだ騒ぎ声が聞こえる。


『卵焼き屋台だ!!』

『限定味を作れ!!』

『世界大会だぁぁ!!』


「……国民まで燃えてるな。」


ナラはベッドの上で地図を広げていた。


「でもこれでかなり大きいスポンサーが増えたよ!」


ガエンも起き上がる。


「まあな。資金面はかなり助かる。」


ミリアが地図を覗き込む。


「次はどこへ行くの?」


ナラは地図の上をぴょこんと飛びながら、北方を指差した。


「次はここ!!氷雪都市国家クリアフォル!!」


地図の端。

白銀で塗られた極寒地帯。

ガエンが顔をしかめる。


「うわ、寒そう。」


ミリアは少し目を輝かせた。


「氷の街……綺麗そうね。」


ダグラスが地図を見ながら呟く。


「確か、統治してるのは――」


「氷の女王フロスティア。」


ナラがビシッと言った。


「超有名人!!」


ガエンが腕を組む。


「お笑いが好きな女王だっけ?」


ナラは少し考え込んだ後、真顔で言った。


「そう。なんかね、クリアフォルでは“笑いは寒さを忘れさせる”って文化があるんだって!」


「なるほど。」


ダグラスが納得する。


「寒冷地らしい理由ではあるな。」


「しかもフロスティア女王、かなり笑いに厳しいらしいよ!」


「嫌な情報が増えた。」


ガエンが即答した。

ナラはさらに続ける。


「昔、“氷上漫才大会”で優勝した芸人に国宝級の氷像あげたとか!」


「国の文化どうなってんだ。」


ミリアはくすっと笑う。


「でも楽しそうじゃない。」


ガエンは頭を抱えた。


「待て。つまり俺達、次は“笑わせないといけない国”に行くのか?」


ナラは満面の笑み。


「そう!!」


「嫌すぎる。」


ダグラスが静かに紅茶を飲む。


「ちなみに、フロスティア女王はどんな笑いが好みなんだ?」


ナラはメモを取り出した。


「えーっと……。」


ぺらっ。


「“勢いだけの芸は減点対象”」


「審査厳しいな!?」


「“間を大切にしている者を評価する”」


「評論家かよ。」


「“寒さを活かしたネタに弱い”」


ミリアが吹き出した。


「ちゃんと地域性あるのね。」


ナラはさらに読む。


「あと、“氷で滑って転ぶだけの芸は見飽きた”って。」


「過去に何人滑ったんだ。」


ダグラスが遠い目をした。

ガエンは深くため息を吐く。


「なんでスポンサー集めの旅で、お笑い対策会議しなきゃならねえんだ……。」


すると、その時。


コンコン。


扉がノックされた。

入ってきたのはベルノスだった。

大量の書類を抱えている。


「失礼します。クリアフォルについて追加資料をお持ちしました。」


「仕事早いな!?」


「会話が聞こえてきましたので。」


ベルノスは机に書類を積み始める。


「気候。」

「外交傾向。」

「流通状況。」

「主要産業。」

「過去十年分の漫才大会優勝傾向。」


「最後なんだ。」


ベルノスは真顔だった。


「重要事項ですので。」


ダグラスが書類を覗き込む。


「本当に分析されてる……。」


そこには細かく書かれていた。


『ツッコミの速度:高評価傾向』

『自虐ネタ:安定』

『長すぎる前振り:低評価』

『氷属性を活かした言葉遊び:強い』


ガエンが頭を抱える。


「国家分析資料に載せる内容じゃねえ。」


ベルノスは淡々と言った。


「なお、フロスティア女王は特に“自然な掛け合い”を好む傾向があります。」


全員の視線がゆっくりダグラスとガエンへ向く。


「……なんで見る。」


「あなた達が普段から漫才みたいだから。」


ミリアが真顔で言った。


「心外だ。」


「いや否定できないぞ。」


ダグラスが即答した。

ナラが急に立ち上がる。


「よし!!クリアフォル対策するよ!!」


「何を。」


「まずは練習!!」


ナラは椅子の上に飛び乗った。


「はいガエン!!なんか面白いこと言って!!」


「無茶振りすぎるだろ!!」


ミリアが笑いをこらえながら言う。


「もう始まってるじゃない。」


ベルノスはさらさらとメモを書いた。


『ガエン:追い込まれると反応速度上昇』


「分析するなあああぁぁぁぁ!」


ガエンの叫びが城に響いた。

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