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静寂の城〜魔王は世界征服をしたい〜  作者: 赤井六舷
魔族領軍事国家、バルファード

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109/171

109.遠征隊、次の国を目指す

一ヶ月の訓練が終わり、ガエン達は訓練所を出た。

背後では、最後まで見送りに来た兵士達が一斉に敬礼を送っている。


「ありがとうございました!!」


訓練場に響く大きな声に、ガエンは軽く手を上げ、ダグラスは静かに頷く。ラーシャは優しく微笑み、マイトは満面の笑みで大きく手を振っていた。

そのまま四人が城門へ向かって歩いていると、後ろから落ち着いた声が聞こえた。


「少し待ってくれ。」


振り返ると、軍師王レムルスが護衛を連れて歩いてくる。

ガエンは笑みを浮かべた。


「見送りか?」


「ああ。」


レムルスは四人の前まで来ると、改めて頭を下げた。


「本当に感謝している。たった一ヶ月で、あれほど兵士達を成長させるとは思ってもみなかった。」


ダグラスは静かに答える。


「兵士達自身の努力だ。俺達は少し背中を押しただけに過ぎん。」


「その背中の押し方が常人離れしているのだがな。」


レムルスは苦笑すると、すぐに真剣な表情へ戻った。


「スポンサーとして約束した以上、運動会には必ず参加しよう。」


そして口元に笑みを浮かべる。


「今から楽しみで仕方がない。あれほどの国々が一堂に会する祭典……きっと歴史に残るだろう。」


ガエンは豪快に笑った。


「ははっ! 期待してくれて構わねぇぞ。誰も見たことがねぇ最高の運動会にしてやる。」


ラーシャも嬉しそうに頷く。


「みんなが笑顔になれる一日になりますよ。」


「うん! 競技もいっぱい考えてるから楽しみにしててね!」


マイトの言葉にレムルスは思わず吹き出した。


「それは期待していよう。ただし、君が兵士達にやっていた訓練だけは競技にしないでくれ。」


「あれ? 崖登り競争とか楽しそうじゃない?」


「断る。」


即答するレムルスに、ガエン達は思わず笑い声を上げた。

ひとしきり笑い合った後、ガエンは荷物を背負い直す。


「さて、次の国へ行くか。」


レムルスが尋ねる。


「次はどこへ向かう?」


「海洋都市国家アトラマリスだ。」


ガエンは地図を広げながら指を滑らせた。


「商業と工業が盛んな、魔族領最大の貿易都市だ。港には世界中の船が集まり、人も物も絶えず行き交ってる。」


「なるほど……確かにスポンサーとしては申し分ない国だ。」


ダグラスが地図を見ながら続ける。


「ここバルファードから港町アオラオイまでは比較的近い。まずはそこまで移動し、港から船でアトラマリスへ向かう予定だ。」


「海かぁ!」


マイトは目を輝かせる。


「久しぶりに船に乗れるね!」


ラーシャも穏やかに微笑む。


「港町も賑やかでしょうし、少し楽しみですね。」


レムルスは四人を見送りながら静かに頷いた。


「道中、気を付けて行ってくれ。そして運動会の日に、また会おう。」


「ああ。」


ガエンは力強く頷くと、四人はレムルスに背を向けた。


「運動会の日まで、兵士達をもっと鍛えておいてくれよ。」


「もちろんだ。」


レムルスは自信に満ちた笑みを浮かべる。


「次に会う時は、さらに驚かせてみせよう。」


「期待してるぜ。」


ガエンが笑うと、四人はゆっくりと城門を抜け、軍事国家バルファードを後にした。

背後では、レムルスと兵士達がその姿が見えなくなるまで静かに見送っていた。


その日の夕方。

街道沿いの宿場町へ到着した四人は、一晩休むことにした。

夕食を済ませると、部屋に集まり、大きな机の上へ地図を広げる。

ガエンは港町アオラオイを指差した。


「ここまでは馬車で三日ほどだな。」


ダグラスは周囲の街道を確認しながら頷く。


「道は整備されている。特に危険な魔物の生息地も避けられているから、大きな問題はないだろう。」


「途中に小さな村もありますね。」


ラーシャが地図を眺めながら言う。


「食料や水の補給もできますし、無理のない日程で進めそうです。」


マイトは椅子にもたれながら笑顔を浮かべた。


「港に着いたら魚料理いっぱい食べたいなぁ!」


「お前はまずそれか。」


ガエンが呆れたように笑う。


「だって海の近くなんだから新鮮な魚があるでしょ?」


「それは否定しない。」


ダグラスが珍しく小さく笑うと、部屋の空気も自然と和んだ。

一通り旅程を確認すると、ガエンは地図を丸めて立ち上がる。


「よし、打ち合わせは終わりだ。明日は朝一番で馬車に乗る。」


「了解。」


「はい。」


「はーい!」


四人はそれぞれ荷物を整え、明日に備えて部屋へ戻っていった。

静かな夜が宿場町を包む。

窓の外では虫の音が聞こえ、遠くでは旅人達の話し声が微かに響いていた。

ベッドへ横になったガエンは、天井を見上げながらふっと笑みを浮かべる。


「……一ヶ月前とは別人みてぇに強くなってたな。」


ダグラスも静かに目を閉じる。


「次に会う頃には、さらに成長しているだろう。」


「運動会でみんなと再会するのが楽しみですね。」


ラーシャは穏やかに微笑みながら呟いた。

マイトも布団へ飛び込むように寝転び、満面の笑みを浮かべる。


「うん! みんな、きっともっと強くなってるよ!」


四人はそれぞれ兵士達との再会を思い浮かべながら、静かに眠りについた。

翌朝から始まる、港町アオラオイへの三日間の旅に備えて。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

軍事国家バルファード編、これにて完結となります。

次の章からは、いよいよ【海洋都市国家アトラマリス編】が始まります!

港町アオラオイから船に乗り、商業と工業が盛んな魔族領最大の貿易都市へ。

ガエンたちのスポンサー交渉の旅は、さらにスケールアップしていきます!

物語の大きな節目となりましたので、もし「バルファード編面白かった!」「アトラマリス編が気になる!」と思ってくださったら、ぜひページ下部からブックマーク登録や、評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると大変励みになります。

皆様の一票が、次の海原へ進む最大のエネルギーです。引き続き『静寂の城』をよろしくお願いいたします!

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