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守護獣の誕生秘話  作者: 海名津たくや
旧フィリナ領解放編
62/63

閑話6.白き守護獣

 彼が最初に目にしたのは、どこか質素な小屋の内側だった。

 窓ひとつなく、家具らしいものも置かれていない、ひどく殺風景な空間。――彼は、そこで生まれた。


 やがて、胸の奥に微かな温もりがあることに気づく。

 それは内側に留まらず、外へと細く伸びているようで――見えない糸に導かれるように、彼はゆっくりと足を踏み出した。


 小屋の戸口を抜けた瞬間、視界が白く弾ける。


 彼を迎えたのは、降り注ぐ太陽の光だった。

 眩しさに思わず目を細める――だがその輝きは、決して拒むものではない。


 むしろその光は、どこか懐かしいもののように、彼の内側へと静かに馴染んでいった。


 しばらくして、彼は気づいた。

 自分の周囲に、いくつかの“影”があることに。


 その中の一つに、自然と視線が引き寄せられる。

 理由は分からない。だが――その存在こそが、胸の奥で感じていたあの温もりと繋がっているのだと、確信に近い感覚があった。


 互いに見つめ合う。


 やがて、その人物がゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。

 彼はそれを疑うことなく受け入れ、身を寄せる。


 次の瞬間、頭に触れた手が、優しく撫でてきた。

 その温もりに、胸の奥が静かに満たされていく。


 ――だが、ふと。


 その人物の身体に、痛々しい傷が刻まれていることに気づいた。

 彼の内側で、何かが反応する。


 考えるよりも先に、本能のまま、内から溢れ出した力を掴み取る。

 その力は、触れた場所から静かに広がり、傷を包み込み、やがて癒していった。


 そして――


『ありがとう。身体を癒してくれて。そして何より――生まれてきてくれて、ありがとう』


 その言葉が届いた瞬間、彼の内側に温かなものが満ちていく。

 意味のすべてを理解できたわけではない。だが、その声に込められた想いだけは、確かに伝わっていた。


 優しく、深く、自分を受け入れてくれるもの。

 それが何であるかを、彼はまだ知らない。


 けれど、その人物――セルフィから向けられたその愛情は、彼にとって最初の贈り物となった。




 セルフィとの日々は、彼にとってかけがえのないものだった。


 食事のときも、散歩のときも――いつも隣にセルフィがいた。

 その傍にいるだけで、不思議と心が落ち着く。だから彼は、当たり前のようにその隣に居続けた。


 ある日のこと。


『そうだ。君に名前を付けてあげようと思ってね。昨日から考えていたんだ』


 ふと思い出したように、セルフィがそう言った。


 その表情は、どこか誇らしげで、同時に楽しげでもあった。


『君の名前は、アウレイン。とある言葉で“輝き”を意味するものから取ってみたよ』


 彼から贈られた二つ目の贈り物――その名を、彼はすぐに受け入れた。

 そしてその瞬間から、彼は“アウレイン”となった。


 アウレインは聡く、セルフィの言葉を理解していた。

 彼が何らかの重大な使命を背負っていることも、いずれ強大な敵と対峙する運命にあることも、すでに感じ取っている。


 それでも――いや、だからこそ。


 アウレインは、セルフィの傍に在ることを選んだ。

 この優しい主を、最後まで守り抜くために。


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