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エルフ救って調子乗る。3


 「ディフェンスオーラ、絆の剣、プロティクション」


 戦闘前にまずはバフだ。防御バフ3つ重ねて俺の防御は30%アップ。フレイヤの防御は15%アップだ。フレイヤの方もアーチャーのスキルで攻撃速度アップやらなにやら付けている。準備は完了かな?


 「よし行くぞ。フレイヤ、ちゃんと俺が攻撃してからブッパしろよ?」


 俺の攻撃が当たってから全力攻撃しろってことだ。いいね。ゲームの感覚が戻ってくるぜ。

 フレイヤは俺の言葉に弓を構えて返す。


 「5秒くらい待ってもいいんだぞ? 剥がしてしまっても文句は言うなよ?」


 おうおう、言うねぇ。ヘイトが安定するまでにアタッカーが全力攻撃すると、下手なタンクはタゲを剥がす。要するに相手のターゲットがアタッカーの方に行ってしまい、アタッカーは防御が紙なので即、死亡する。で、全滅のパターンだ。安定を取るなら数秒はタンクのみで攻撃させるべきだ。 だがな、なめんなよ?


 「ジャストアタック!」


 俺は邪竜の傍まで走ると飛び込み技で一気に近づき、第一打を当てる。祭壇の上まで飛び乗ったから、落ちないように後ろには気を付けないとな。と、邪竜が気付いて前足を振り抜いてくる。俺はそれを盾で受ける。その間にフレイヤの攻撃がガリガリと邪竜に当たる。


 「宿敵への因縁! ブレードスラッシュ!」


 ターゲットがフレイヤに移る前に強制タゲ+ヘイト増加スキル、強制タゲが消える前にクールタイムの長い、倍率の高いスキルを打つ!

 

 「はい! 開幕安定! 最強盾ですよっと」


 言いつつ通常攻撃を何打か挟んで。クリティカル確率を落とすデバフ有りのスキルを放つ。大昔のMMOからVRMMOになって増えたのは、防御と回避を満遍なくこなすタンクだ。今ままでゲームパッドなんかでやっていた操作性の悪さが、自分の体を使うことで改善された。その為、適度に攻撃を避ける方が効率が良くなったからだ。常軌を逸した、一撃でも食らったら終わりな、攻撃特化の避けタンクなんてのも出てきたくらいだ。

 

 だが俺は違う!


 「安定した防御力! そしてこの火力! 馬鹿にすんなよ!」


 俺は左手で盾を構えながらも次々とスキルを繰り出し回していく。完璧な防御をしつつ、避ける暇も惜しんで攻撃する。それが俺のスタイルだ。少しでもスキル回しを甘えているアタッカーがいれば簡単にそいつは俺よりも秒間ダメージ(DPS)が下になる。それを俺は心の中で馬鹿にするのが大好きなんだよ! アタッカーの癖に防御特化のタンクにDPS負けるとか、どんな気持ち? ってね。 俺すげぇ!!


 「2人とも、一歩も動いてない?」


 この体になってから無駄に耳が良くなった俺は、エリスの呟きを聞き逃さない。凄いだろ? 邪竜がどんな攻撃をしようが、大ダメージ確定でもない限り俺は動かない。タゲをフレイヤに移すこともしない。それによってフレイヤも動く必要がない為、全力で固定砲台に徹していられるのだ。


 「ぎゃはははっは! 俺がゲームをメイキングしている! 俺こそが主役!」


 俺のテンションはドンドン上がっていく。実のところ、切った場所から血でも吹き出そうものなら逃げる自信があったが、なんだか黒い霧が出るだけ。本当にゲームをしている感覚だ。


 「お?」


 邪竜が飛び上がる。……ふむ、ブレスか?


 「フレイヤ! 射線から外れろ!」

 「了解!」


 奴の攻撃で減った俺のHPは1割といったところだ。思いの外ダメージが多いな……だが、この数値から考えてブレスも受けれるか?


 「アイアンガード! スピリットブースト!」


 念のため、さらにスキルで動けなくなる代わりにダメージ80%カット、現在HPと最大HPが10秒間50%増加だ。 うん正解!

 空に舞い上がった邪竜の口から真っ黒なブレスが吐き出された。


 「効かねぇ! 効かないですよぉー」


 はい、ダメゼロ。更にスピリットブーストの効果が切れてHPが戻るも、元々1割しか減っていなかった為、戻った時点で全回復! あ、これ楽勝ですわ。邪竜さんはまた地上に降りて俺に攻撃してくるけど、もう終わりだなこりゃ。


 「フレイヤ! DPS上げて! サッサと倒すぞ!」

 「さっきからずっと全力だ!」


 数十秒すると、またブレスの為に邪竜は飛び上がろうとする。もうさせねーよ?


 「シールドバッシュ!」


 シールドごと俺は邪竜に突撃、邪竜は体勢を崩して飛び上がれない。ノックバック耐性ないのな、雑魚だな……


 うん、どんどん邪竜が弱っていくのが分かる。と、そこで邪竜の動きが止まる。どうした? ――すると突然光る! 眩しい!


 「なんだ?」


 光が収まると、そこにいたのは美女だ。フレイヤと同じ黒髪に、民族衣装みたいな妖艶な格好をしてる美女だ。 


 「高々2人にこのようにしてやられるとは……しかしここからはそうはいかんぞ」


 やっべー!! 竜が人になった……何がヤバいかって? 人型のボスって……大体がレイド級なのよね。それに……


 「人切るとか無理なんだけど……」


 いや、ゲームならまだしもね。現実で人切るのはちょっと……ってフレイヤ弓打つなよ! そして俺の方に走って来たよ邪竜美女! ヘイトこっちに行くよなー……フレイヤのところ行けよ!


 「ちょっ待って!」


 見た目に反して格闘系なのか、アクロバットな動きで俺に攻撃を繰り返す邪竜さん。盾で防御するも、はっ? もう2割食らった? 完全にヒーラー必要案件じゃん! どうするどうする? 

 いや、俺は主人公だ! きっとチートな何かがぁぁああああああああああああああ!!!!!


 (新しいスキルを覚えました)


 へっ? はい来ましたー! 流石俺こと超絶美少女! 俺は攻撃を受けながらスキル画面を開く――どんなスキルだ? 


 【シールド】


 効果:攻撃を防ぎ、敵を滅ぼす。



 ん? ただのバリアか? でも滅ぼすって……使ってみるしかない!

 HPが減ってきて、攻撃が少しずつ痛くなってきた。なんでもいいから早く終わりたい!


 「シールド!」


 俺が叫ぶと、目の前に青い膜が出来た。ほんとバリアって感じだ。滅ぼすって書いてあるんだ。攻撃反射ぐらいついててくれよ。

 俺は祈りつつ邪竜の拳が膜に触れるのを見つめる。集中しているからか、その動作はゆっくりに見えた。


 「えっ?」


 ――吹き飛んだ……拳が触れたとたん吹き飛んだ。


 「なんだこれ?」


 ――俺の前方が、見える限りすべて吹き飛んだ。邪竜も、俺の足場だけ残して祭壇も、その先の森もだ……


 「え?」


 ――後ろを振り返る。フレイヤもエリスも口を開いて驚いている。


 俺だって驚きだよ! 何これ? チートだけど……威力おかしいだろ! ってか邪竜美女さん死んじゃった? わざとじゃない! わざとじゃないし! 仕方なかったし! 


 「お嬢様! さっきのはなんだ! 凄いな! 驚きだぞ!」

 「お、おう。流石だろ! 褒めるがいい!」

 「凄い!」


 俺、話せる奴殺したからとか言って悩む、ぐだぐだな主人公じゃないし! 気にしないし!


 「凄いです! あの邪竜を完封するとは! 予想以上です! それにしても人の姿を取ったのは驚きましたね」

 「うるせぇ!」

 「え?」


 「よし、フレイヤ。俺を褒めた褒美に俺をおぶらせてやる!」


 そう言って俺はフレイヤの背に飛びつく。


 「お嬢様は可愛いなー」

 「疲れたから寝る!」


 俺はとりあえず寝ることにした。


 



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