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勇者PTで調子乗る。5



 「リタという名前見つけました!」

 「お、なんだった?」


 王宮を出発する前日。お姫様は可愛らしく俺の元へと、そう言って駆け寄ってきた。この2日位ですっかりお姫様とは仲良くなった。女の子同士だと、こうも簡単に仲良く成れるなんて! 超絶美少女効果ハンパない! みんな試せばいいのにね。

 いや、無理か! なんたって俺は特別だからな! 世界中の美少女に成りたいのに、成れない男達よ……すまんな(笑


 「リタは魔王のお姉さんですね。魔王とは違い、何に対しても反抗的で、あと、調子に乗りやすい方だったようですね」

 「ほぉ、てか、魔王に姉弟とかいるんだな」

 「そう書いてあるだけなので実際は分からないですけどね。文書と言っても、魔王を封印した勇者が魔王の持つ書籍をすべて持ってきたそうなんですが。魔王のことが書かれているのは、魔王の日記と呼ばれる日記とは言いづらい、報告書に記されているんです!」

 「ありがとなー!」


 長くなりそうなので、そう言って遮ったのだが……ふと、疑問が出てきた。


 「魔王って悪い奴なの?」

 「うーん。人柄は良くて明るい方らしいですね」

 

 そうなの? 倒しちゃダメじゃないそれ?


 「何で倒すの? 良い人そうに聞こえるけど?」

 「あぁ、簡単です。人柄は良いんですけど、この世界の人間全てを見下していて、滅べばいいと思っているからですね」

 「あぁー。うん。危ない奴だってことはなんとなく分かった」


 まぁ、どうせ倒すんだ関係ないか……倒せなさそうだったら逃げればいいし。


 「……おじょうさま……これみて」

 

 現在、俺はソファーで寝そべって、お姫様の報告を聞いていたわけだが……アルファがさっきから、ちょくちょく声をかけてくる。それもどうでもいいことでだ。


 「羽ペンだな」

 「……そこにあった……」

 「知ってるよ」

 「……じゃあ……」


 フフフ、焼きもちですね。分かってるよ! 同じ年くらいのお姫様に俺が構ってたら、アルファがこんな感じになってしまった。でも、それも可愛いから暫くはこのままで! そして更にアルファに焼きもちを焼くお姫様! この完璧ループに入って俺は幸せを感じるんだ!


 「お嬢様はゲスいでありますなー」

 「あ゛ぁ?」

 「何でもないであります!」

 

 チッ!


 「お嬢様は、可哀そうなだけだぞ? そこは可愛いところとして受け止めろケビン」

 「フレイヤさん。それはそれで間違っていると思うであります」

 「なに?」

 「何でもないであります!」


 外野がうるさいな。静かにしてろ。

  






 


 と、いつまでも王宮でダラダラもしていられない。するなら家に帰って休むよ。そう言う訳で、大した見送りもなく勇者と俺達は王都を発った。お姫様は見送りに来てくれたけどね。今度俺の城に招待するんだ。勇者? 知らん。お姫様にも避けられていたしな。


 「勇者さんや」

 「なんだい?」

 「なぜ歩きなのかな?」

 「山を超えるからさ」

 「帰りたい」

 「やめてくれ……」


 途中から、結局俺はフレイヤにおぶってもらうことで何とか帰らずに済んだ……王都出たらすぐ魔王と対決じゃないんだよなー。失念だったわ……


 「もうそろそろ魔物が出てくるよ……だから、降りようか……」


 勇者が真剣な顔でそう言ってくる。が、フレイヤに背負ってもらっている俺を見て、どんどん微妙な表情になっていく。イケメンが台無しだぜ? もっと堂々としてろよ。


 「あそこに魔物がいるな。オークか? 色違いか?」

 

 目の良いフレイヤが見つけたようだ。勇者PT初戦闘か。うん少しワクワクしてきたよ。ファンタジー映画の初戦闘とかワクワクしない? そんな感じだ。じゃあ降りるかね。


 「何色だい?」

 「赤だな」

 「普通のオークだね」

 「そうか」


 あー、ゲームでは緑色だからね。この世界では赤色なのね……なら名前から変えろよ! 誰か知らんが適当に作りやがって!


 「よし、じゃあ、お嬢様。盾役頼むよ」


 フレイヤ達が、俺のことお嬢様って呼ぶから勇者も結局お嬢様呼びだよ。いいけどね


 「おうよ。任しとけ。むしろ俺一人でも余裕だけどな!」

 「女の子達だけには任せられないさ!」


 カッコつけて勇者は腰の鞘から白銀の剣を取り出す。あんまりゴテゴテしてないね。聖剣って言ってもシンプルなのな。まぁそれはとにかく


 「カッコつけんな。気持ち悪い」

 「……ヒドイな君は」

 「フレイヤと、アルファは、まぁ様子見だ。弱そうなら纏めるからタゲ奪うなよ! 勇者はいないものとして雑魚戦やるぞ」



 「「「……」」」


 何故か勇者も、フレイヤも、無言だった。アルファはいつも通りだな。


 「私はどうするでありますか?」


 道具袋があるので、実質いらない荷物運び役のケビンは……


 「可愛いポーズの練習な!」

 「了解であります!」


 さて行きますよっと!


 俺は先頭を駆けて行く。しばらくすると、10匹ほどの赤いオークがウロウロとしていた。大きさはゲームと同じくらいかな? 3メートルもないな。武器は棍棒か。定番だね。

 とりあえず一番密集してるところに突っ込む。俺に気付いたオーク数匹が武器で殴りかかってくるが、それは気にせずそのまま食らう。


 「選ばれし威光!」


 盾を掲げてスキルを発動。範囲ヘイトスキルだ。他のオーク達も、スキルにつられて俺に攻撃してくる。気持ちの悪い形相でデカいオークに囲まれるのは好きじゃあないが。そこは慣れだ。雑魚戦なんて作業だからな。作業。


 ある程度ヘイトが安定したところで、


 「とりあえず、勇者! 一匹後ろから切ってみろ!」


 勇者の一撃で、どれくらいヘイトが移るか確かめる為、俺は指示を出す。指示を出すのは勇者じゃないのかって? 馬鹿か! ゲームメイキングはタンク仕事ってのが俺の持論なんだよ。まぁレイド戦となると話は違うがな。


 「任せろ!」


 勇者が袈裟切りにオークの背中を切る。肉が切れ青い血が噴き出す。それをものともせず勇者は更に切り掛かり……え? 無理なんだけど……グロ、マジ無理なんだって……ドラゴン時みたいなゲーム仕様じゃないの? ないわー ホントないわー あー


 「お嬢様! 捕まれ!」


 あまりの光景に動けなくなり、もうただの案山子となっていた俺の元へ、フレイヤが飛び込んでくる。俺は何とか捕まり、フレイヤに抱えてもらいながらオーク集団から抜け出す。しかし勇者程度の攻撃力では、攻撃していた1匹すらヘイトを取れていないので、オーク全部が俺を抱えたフレイヤの後を追って来る。

 

 「あーマジ無理」

 「もしかしたらこうなるかと思ってな。準備しておいて正解だったぞ?」


 予想してたんなら言ってくれよ……そう言葉を交わす間にオークとの距離はぐんぐんと離れていく。フレイヤとオーク達とでは、スピードが違う。

 ある程度離れたところで。


 「……フレイムバーン……」


 爆発系の魔法スキルを、待機していたアルファが放ち、オークがまとめて爆発霧散した……と思う。見たくないので音しか聞いてないからな! はぁ……戦闘はなしだな。






 でだ、それからも山を本格的に登るまでの道中、オークが出まくったんだが。


 「見つけたぞ。またオークだ」

 「よーし!さっきと同じだ。フレイヤが突撃。適当に纏めてアルファが殲滅。もちろん俺の見えないところで!」

 「了解した」

 「……まかせて……」


 フレイヤとアルファが先行していく。うんうん。やっぱ持つべきものは使える配下だよ。

 2分もすれば2人は戻ってくる。いいよー。雑魚戦はサクサク行かないとね。


 「盾なのに先行しないと意味ないんじゃ……」


 勇者が何か言ってる。


 「は? 指示出すのも仕事だし! お前だって何もしてないだろ!」

 「いや、何とかなってるから……むしろ楽だからいいんだけど……」


 すると戻ってきたフレイヤとアルファが


 「お嬢様が血を見て笑っていたら、そっちの方が大問題だ。そんなことも分からんのか勇者は」

 「……ていのう……」


 なんか勇者が怒られてた。そうだそうだ! やっぱ俺の配下は出来る! 出来るよ! ニヤニヤが止まらん!


 「2人とも、勇者はともかく、あんまりお嬢様を擁護すると調子に乗るであります!」

 「なんだとケビンのくせに生意気な!」

 「お嬢様は常時生意気であります」


 ふふん? 言ってやったぜ。みたいな表情でケビンが宣う。


 「あ? 良いだろう! その表情可愛いから許す!」

 「流石お嬢様であります! 大好きであります!」


 俺とケビンはワイワイやってた。うん。いいね。青春だね。


 「僕はメンバーを間違えたのかもしれない……」


 何か勇者が呟いてたが……まぁ、いっか。

 


 



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