勇者PTで調子乗る。4
「でだ、お姫様よ。友達いないの?」
「え?」
いろいろ面倒くさいのは、なしにして直接聞くのが俺のスタイル。
お姫様はオロオロしていらっしゃる……でもお姫様だしね。友達いなくても別にいいと思うけどなー。だってお姫様だし! ほら、よく考えたらおとぎ話のお姫様って友達いなくね? ってね。
「今考えると……いないかもしれません……」
「大丈夫! 俺もいないから!」
要するに俺もお姫様ってことだな!
「まぁ! 師匠もいないのですね」
「おう、だから気にするな」
「はい」
ふむ、いい子じゃあないか、何も心配いらん。そのうち友達の1人や100人すぐ出来るでしょう。それより問題は勇者との結婚だ! それはあかん! 結婚なんてさせない! 俺が頂く!
「それでさー。聞いたんだけど。勇者と結婚するの?」
「しませんよ?」
「うん?」
「うん?」
あれ? しないの? じゃあ大丈夫?
「勇者が魔王と結婚したら結婚するんじゃなかったの?」
「魔王と結婚するんですか?」
おっと、少し混乱したみたいだ。
「魔王倒したら結婚するんじゃなかったの? お姫様もOKしたって聞いたけど?」
「あぁ倒せないので無効です。まだ結婚は考えていません」
「倒せないの?」
「そうなんです!」
うおぉ! なんかすごい急にテンション高くなったなお姫様。
「それで魔王の文献を読み解いたところですね!――」
語りだしたぞ! 分かった! オタクか! 魔王オタクなのか君は! あ、なんか難しい話されても俺無理なんで……まぁ可愛いから黙って見ておこう。
遥か昔の勇者と魔王の決闘の話、魔族領の貴族たち、魔王とその執事の恋? 何だそれ? でも今魔族領なるものはないし、魔族なんて生き物もいない。でも魔王だけは確実に存在する? あやふやだな。どうなってんだこの世界?
「そしてその! 魔王の名と言うのが×××なんです!」
ん? なんて?
【魔王の討伐に参加せよ。1/3 魔王の名は リタ 達成しました。処理速度を10段階に設定しました】
……うーん。どんどん誰かが暗躍している気がするんだけど……異世界俺凄い! は出来るけど……世界救えとかそのうち言われても無理だからな?
「リタねぇ」
「リタですか?」
魔王の名前なんかなって思って呟いたらお姫様に首を傾げられてしまった。可愛いな。うん、良きかな良きかな。
「魔王の名前じゃないの?」
「魔王の名前はニトロですよ? リタ、リタ……どこかで載っていたような? ちょっと調べてきます!」
「どこ行くの?」
「書庫行ってきます! ではまた!」
……置いてかれた……後で情報持ってきてくれるのかな? と言うかなんで魔王倒せないかも聞いてないや。それも後で聞こう。なんかアレだな……NPCにクエストのヒントをもらっているような不快感がする。うー……超絶美少女は良い! テンション上げないと! 俺美少女!
「やってられっかぁあああああああああああー!!!」
なんかモヤモヤしたものを、部屋に戻った途端発散してみた。
「なにごとだ。お嬢様?」
「エロ王に何かされたでありますか?」
「……それはひく……」
いや、ひくなよ! 慰めてやれよ! 何もされてないけど!
「いや違う! 俺がしたいのはもっとテンション上がるイベントなんだよ!」
フレイヤ、ケビン、アルファ。みんな、やれやれって目で見てくる。なんだその眼は! 敬えよ! もっとチヤホヤしろ! 王宮でのイベント……そうだ! 決闘! 決闘だよ!
俺は、思い付いたと同時に部屋から飛び出して勇者の部屋に突撃した。いろんなところにいるメイドさんに聞けば一発で分かるぜ!
「な、突然なにかな?」
俺は胸を張って答える。
「ちょっとボコって気分良くなりたいから決闘しようぜ!」
「しないよ!」
ノリが悪いなー。勇者のくせして。俺が今から悪になるから倒して見せろよ。それともなにか?
「分かったよ……幼女をボコって気持ちよくなりたいのか……業だな。受けて立つよ」
そういう趣味の奴もいるだろう。理解はできないが……俺は効かないから大丈夫だろ。
「え? なんで! そんなことしないよ? それにね。僕、君が泣かせた試験官より少し強いくらいでしかないからね」
「は? 雑魚かよ」
「……」
雑魚、雑魚……そうだ! 王宮なら雑魚兵士がいっぱいいるはずだ! 無双しよう! 木剣で吹き飛ばすだけなら血も見ないし楽しそうだ! それに爽快感がありそう!
「もっと実力あげとけよ!」
「あ、うん」
捨て台詞を吐いて俺は勇者の部屋を後にした。なんか勇者、イケメンが台無しになるくらい微妙な表情してたけど……大丈夫かあいつ? まぁいい。どっかに訓練場あるだろ。そこ行けば兵士が沢山いるはずだ。そこからはお決まりの展開になるはず。
ここはお嬢ちゃんが来るとこじゃないぜ → なんだコノヤロー → まぁまぁ少しくら良いじゃない → 何だあの化け物は! → うわぁー → 俺凄い!
これだな。こうなるに違いない!
お、あそこかな? むさくるしい声が聞こえるし。
「「「「お嬢様ぁぁあああああああああああ!!!!!!」」」
おうおう! 声は野太いが歓声は良いものだ。
「オラぁ! 俺の歌声にひれ伏せ! おいそこ! 前列は女性騎士限定だから入ってくんな!」
俺は歌って踊っていた! 何故かって? ノリだよノリ! 途中までは無双計画うまくいってたはずなんだけどなぁー? 何故か途中からおかしくなってな……まぁいいか!
「お嬢様手作りのお菓子販売中であります。記念にいかがでありますかー?」
おい? いつからいる? で、いつ作った? どこから貰って来たそのお菓子? でもって売ってんのか? ケビン……俺の取り分はもちろんあるんだろうな? 歌って踊りながらケビンに目配せすればしっかりと頷いてくれた。流石だぜ。いつかお前のLV上げもしてやるからな。
そうやって楽しんでたら、良い装備したおっさんが怒鳴り込んできた。ん? 会議室で見たなお前。なになに? 騎士団長? きたぁ!
「お前! 勇者パーティの戦士! 何だこれは! 俺が鍛えなおしてやる!」
あ、うん。こんな簡潔には言ってないけどね。おっさんらしく。長々と説教垂れてたけど、ずっと煽っていたらキレて模擬戦することになった。いやぁー。ライブもいいけど、やっぱこれだよ。試験の時も思ったけど。この優越感ね。これこそが異世界ですよ!
「なぜ効かないんだぁぁああああああああああああ!!!」
「ぎゃははははははっははh!!!!! きしだんちょうよわいー」
「おのれぇぇええええええええええ!!!!!」
「いたっ」
「効いたか!?」
「蚊か……ん? なに、蚊より弱い人?」
「このやろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「ぎゃはははっは!!!!」
うん。フレイヤに見つかるまで続けた。その頃には騎士団長のおっさんは、泣きながら木剣を振り下ろすだけのマシーンになってたけどね。




