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勇者PTで調子乗る。6


 さてやってきた魔王城。道中は……まぁ、いろいろあったけど別に興味もないだろ? 


 「魔王城と言うには普通だね。もっと禍々しいものだと思ってたよ」


 ここに来るまでイジメ過ぎたせいか、妙に達観しているイケメン勇者君が魔王城の感想を漏らす。

 うーん確かに魔王城って言われたら普通だよ。俺の城をちょっと豪華にしたくらいだ。でも俺的にはイメージ通りでもある。だって、お姫様から聞いた人物像だと外面の良い性悪って印象だから。むしろ住んでるところは小奇麗な方がしっくりくる。


 「勝手に入ってもいいもんか?」


 正面の門を抜けても、魔物が出てくるわけでも、トラップがあるわけでもない。扉まで来ちゃったけど……入るよー?


 タンクの俺が扉を開く。不意の攻撃にも俺なら何ら問題ないからだ。ある程度開いたところで身を乗り出して中を覗いてみる。

 ――するとだ


 「ばぁ!」

 「うぎゃ!」


 突然顔が現れた! 吃驚すんだろ! 反射的に身を引いて扉を閉めてしまった。……何だってんだ?


 「どうした?」

 「大丈夫でありますか?」

 「……てき?」


 俺の可愛い仲間が心配してくるが……ふぅ、もう一度開けてみよう。


 「りゃ!」


 俺は思いっきり扉を開け放った! そこは玄関でもトラップ部屋でも、モンスター部屋でもなかった。王座の間だ……それも俺のだぞ! どう見ても俺の城の王座の間だ! 俺が全部レイアウトしたんだ! 忘れるはずがねぇ!


 「これはいきなり魔王と対決かな……みんな気を引き締めて」


 勇者が何か言ってるが……

 

 「ここ、家でありますよ?」

 「……おかしい……」


 だよな! ケビンとアルファも気付いたみたいだ。どうなってんだ? フレイヤはどうだ?


 「ん? どうした?」


 フレイヤを見てみると、険しい表情で一点を見つめている。部屋の最奥、俺の座がある場所だ……誰かいる? 魔王か!


 「フレイヤ! 魔王は?」

 「……」

 「おい。フレイヤ!」


 どうした?


 「どうして貴様がそこに座る! 我々の役目を忘れたか!」


 フレイヤが声を上げた。誰だ……って俺の城でフレイヤの知り合いって言ったらな……1人しかいねぇんだよなー。


 「おい、爺やさんや。何で魔王なんてやってんだ?」

 「何だ君たち! 魔王と知り合いなのか!」

 「うるせぇ! 黙ってろ!」

 「……」


 爺やがゆっくりとこちらに歩いてくる。いつもの執事スタイル……でも雰囲気が違う。爺やは姿通りのダンディが、あったはずだ。でも今はどこか大人のような、子供染みた。何かちぐはぐな空気を纏っている。


 「どうですか? 入口からいきなりラスボス。吃驚しましたか? 吃驚しましたね。驚かせたのも私なんですが。そう言うのもいいでしょう。そして何と言っても、実はラスボスは仲間だったと言う、使い古された様式美!」


 爺やは歩きながらも淡々と、でも大げさに、身振り手振りを加えて言葉を放っている。――なんだ? おいおい、俺を舐めんじゃねぇよ。俺はフレイヤに目配せする。フレイヤも、もう気付いてるみたいだな。

 俺は装備を取り出し、剣を魔王に向かって突き付ける。


 「お前誰だ? 様式美って言うなら、操られてるってテンプレか?」


 魔王は足を止めて


 「ふぅ……私は別にこんなことやりたくないんですけどね。格好良く言うのなら世界の意思ですかね」

 「質問に答えろよ」

 「えぇ、体を借りていると言ってもいいでしょう。でもこの世界での私は、これだと言うことも出来ます。世界とは箱です。狭い箱から出て、より広い世界へ行くには進化し、進歩しなければいけません。この世界は極小なのです。手取り足取り。私のようなサポートまで付いてます。これでは、まだ人とは言えません。人と言えないような物なら、今の私も誰でもないのです。要するに私が誰などと言うことは見当違いです」

 

 くっそ! 象徴的なことをふわふわ言いやがって! あぁ、俺を舐めるなよ。そこらの鈍感主人公じゃないんだ。


 「ここはまだゲームの中なのか?」


 こう言うことだろ。俺の理解力最強ってな!


 「答え合わせは戦いが終わってからでしょう。なぜなら私は魔王なのですから」

 「いいね。ラスボス戦ってか!みんな行くぞ! 勇者もちょっとは聖剣役立てろよ」


 俺はバフを自身に掛けると魔王に向かって飛び込む。魔王だって言うんだ。グロい感じにはならないでくれよ! そこは信用してるぜ!俺に続いてフレイヤの弓、アルファの魔法。しょぼいが勇者の剣が魔王を襲う。ケビンは待機な!

 

 ――剣戟が執事服を捉え、矢が光を伴い奔る。魔法が俺も巻き込む形で爆音を響かせる。



 「残念。ラスボスではありますが。イベント戦です」


 は?


 ――爆風が収まるとそこにいたのは、全く攻撃が通った様子のない魔王の姿だ。


 「少ないリソースでより多くの再現を求めるならば。嫌な記憶を引き出すしかないのです。例えばあの女。そして反対意見を創造する為の貴方。それ故に嫌っていた。肯定的に作られた私。少しリソースが足りなくて馬鹿になっている気はしますが……さて、私は攻撃も防御も普通でしかありません。むしろ弱いです。そんな私の特性は壊れないことです。さて――」


 【……防御をもってして破壊せよ】


 !? クエスト! あれか! シールドか? あのアホみたいな威力……でもやらなきゃいけないんだよな。分かんないけど。分かるんだよなー。どう考えても全部が作られたレールなんだもん。あー、嫌だ……俺は好きなように異世界生活したかったのに……


 「――あなたの特性は守り抜くことです。では、胸糞悪いですが再現してあげましょう。人類の敵を……あくまで格好だけですよ?」


 そう言った魔王の周りから影が出てきた。それは人だ。人の形をした影だ。光を一切通さない真っ黒の存在。


 「なぁ……あぁ……」


 俺はそれを見た瞬間から足が震えだす。こんなに何かに脅威を感じたことが今まであっただろうか。不快で怖くて気持ちが悪い。それと同時にアレを放って置いてはいけない。気持ちが複雑に絡み合い抜け出せない。


 「あ嬢様大丈夫か! あれは何だ? 攻撃する! タゲ取りを頼む」

 「……いっぱつ、あててみる」

 「僕は接近戦の強さでも見てみようかな」


 PTメンバーがそう言って攻撃しようとしている。って! 


 「バカか! 何も感じないのか! あれ! あれが!!!」


 なんだ! 言葉にできねぇ!


 影がフレイヤ達の元へ駆ける速さはすさまじいが、格好は人が走っているのと姿は変わらない。でも……ヤバい! ヤバい! シールドは? 付与できるもんじゃないのか? どうする? 

 すると、影が駆けながら分裂し、フレイヤ、アルファ、勇者、後ろで待機しているケビンの方にまでそれぞれ行きやがった! 


 「その程度か!」


 フレイヤが威勢よく言葉を放っているが…… そうじゃないんだよ! 動きだけならアーチャーのお前なら避けられるだろうが……そんなんじゃない! 近づかせるな! 何とか、何とかしないと! 

 とにかく焦る。焦るがどうしようも……考えろ! 考えるんだよ!


 「あ……」


 と、そこでカチリと何かが噛み合った気がした。どうして今まで俺はこんなに物事を遅く考えていたんだろうか、ってくらいに思考が速くなる。それと同時に世界が遅くなった。いや、違う。正確には感じている速さは同じだ。同じはずなのに速い。何だこの感覚は……分からんが今なら行ける気がする。


 「はい、基本スペックはリソースの割に上々といったところですか。……私も美少女キャラが良かったです」


 魔王の呟きが聞こえたが、それを無視して影が仲間に迫る前に俺は足を踏み出した。


 


 ――瞬間、俺の今までの一瞬が、一瞬ではなくなった。

 

 


 


 

ブクマ、評価、感想、誤字指摘、もらえれば調子乗ります。毎朝7時ごろに更新します。

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