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ずっと探してたんだ

「確かここの五階だったよね」


サテライトセンターは家から少し歩く。

でも徒歩で行ける距離なので、リステムと二人で歩いてきた。

人目を気にしなくても、こんな夜遅い時間帯なら誰も駅前なんて通らない。田舎なのだ。


『あー、面倒くさいなー。やっぱりやめない?』


リステムはずっとぼやいていた。

あんなにオムライスをばくばく食べてた癖に。

一人なら積極的に自炊しないが、リステムと一緒にいると料理の作り甲斐がある。

…そんなことより。

やっぱりリステムは誰か知り合いがいるみたい。

あまり仲は良さそうではないけど。誰なんだろう。友達だろうか。

その人に会えば、なにか分かるだろうか。


「箱崎カノンさん?」


フルネームで呼ばれた。思わず声に驚き、振り向く。


「どうも、バチカンの者です」


「は?」


振り向いた先には、西洋美人。

透けるような赤茶色の髪はゆるいウェーブ、青い目と顔立ちからして西洋風。


「こんばんわ。

私はレジーナ。ユタカに呼ばれて、今日のミサに来てくれたのよね?」


流暢な日本語。ハーフなんだろうか?

一瞬気をとられるが、慌てて返事をする。

バチカン…確か世界で一番小さい国。

『警察の者です』というのはよくあるけど、『バチカンの者です』はない。何一つ説明できてないし。

あそこは確か、宗教の国だったはず、よく覚えていないけど。


「ということは、貴女が『女神』とやら?」


そういえば、豊先輩は、『本国から使い』が来るとか言っていたような気がする。

それが目の前の、この気だるそうな女性、レジーナさんなのだろうか。

豊先輩が信仰し始めた宗教の本国って、バチカンだったのかな。

それにしても綺麗な人。日本人とやっぱり違う。

スタイル抜群なのに、着ている服装は黒い革みたいな地味な服。軍服みたい。でもそれがまた、格好良い。


後ろでぼうっと見ていたリステムが、そっと私の肩に手をかける。…邪魔なんだけど。


「私より年下みたいね。良かった、老人の相手はもううんざりだったから何よりだわ。

それで————」


ぞくり、と背筋が寒くなる。


「貴女の『神様』の力を見せてちょうだい」


彼女の表情…いや、表情は笑みに変わった。見ようによっては優しい微笑みに見える。

けれど、こちらを蔑んでいるかのような瞳。堂々と踏んづけるような。

………この人、こわい。それなのに、逆らえない。

それが、さらにこわい。


『だから言ったじゃん』


後ろから抱き抱えられ、なぜか強風にあおられた。思わず目を閉じる。


『このままじゃ捕まるって』


いつのまにか、駅のホームに着地していた。

目の前のフェンスを越えた先に、先程まで立っていたサテライトセンター。

リステムが私を抱えて跳んだ…のか?

確か矢田さんは、リステムが風の力を持ってるって言ってた。

今のはその力…?


「へぇえ、嘘じゃないみたいね」


フェンス向こうで、レジーナさんが目を丸くして笑っている。

終点まで時間はあるが、ホームには誰もいない。

次の電車も三十分後。

誰かに見つかったら、なんだろう不法侵入みたいな罰を受けるんだろうか。


リステムは私の後ろで肩を抱いたまま。

まだ警戒してるみたい。


『ここはだめだ。

あの女の後ろに面倒くさい数の部下がいる。このままじゃ蜂の巣だよ。

…逃げるよ、カノン』


「待って」


こわいのは事実。

リステムのいう物理的な怖さもあるし、彼女がもつ雰囲気も怖い。

でも、彼女は私の知らないことを、きっとたくさん知ってるだろう。

答えがあるなら、私は行きたい。


「レジーナさん、貴女の目的は何ですか」


怪訝な表情を一瞬するが、レジーナさんはきっぱりと言い放つ。


「貴女を本国に連れて行くことよ」


「わかりました。その代わり、私からもお願いです」


リステムが肩を抱く手に力が入る。無茶だと思う。


「私に、貴女の知る事を教えて下さい」


でも、これが真実の近道。

その為なら、無茶だってするわ。










「無茶です、国が黙っちゃいませんよ」


スーツを着た若い男が思わずベンチから腰を上げる。


「じゃあ、お前ならどうする?」


煙草をくわえながら、じっと遠くを見据えるもう一人の男。彼は白衣を羽織っていた。


「世界を終わらせる『兵器』がこの国にいます、外国の奴等に捕られないように戦争をしましょう…とでも言うのか?

誰に? 国か? 人か?」


沈黙。

煙を吐き出す男を、若い男は悔しそうに見つめた。


「…誰も、相手にしないでしょうね」


煙草を消す。頭を掻く。そして、彼は呟く。


「それを責めるほど、俺は英雄じゃねぇ。

これが仕事だからだ。


……バチカンの奴等を蹴散らすぞ」

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