むかしばなし
そう。アルは国王の本当の息子ではないの。あの帰り道でクリスが教えてくれた話。
――13年前.ダリア国
「お母さん、はやくー!!」
「クリス!お母さんこの国の人と話してくるねー!!」
「え?なに?聞こえなーい!!」
「前向いて走りなさいよー。」
「だから、もう離れすぎて聞こえないって!!」
「わっ!!」
「キャッ――」
ガッシャーン――
「いったーい、、、。」
「なんなんだよ、もう。」
「あっ、ごめんなさいっ、怪我は、、、えっ!!こんなに傷だらけ!?た、大変!!どうしよ、、、。」
「落ち着けよ。この傷は元からだ。」
「え?でも、、、。」
5才のクリスは周りに散らばった木の枝を見た。
「ぶつかる直前に枝だけ飛ばしたんだよ。」
「あ、そうなんだ。」
「旅の人?」
「うーん、両親は貿易に来たの。私は遊びに、かな?」
「そっか、じゃああっちに良い場所があるぜ。」
「本当?行く行く!!」
「よし。じゃあこの枝持って。」
「は?」
「は?、じゃねーよ。ここからじゃ結構遠いからな。半分持つくらい良いだろ。」
「この国では女の子に力仕事をさせるの?」
「お前全然女の子って感じじゃないし、、、。力仕事って言うほど力いらないし。ってことで、はい。」
「もうっ!!ま、これくらい余裕だけど。なんならそっちも持ってさしあげましょうか?」
「ああ?俺だってこれのあと3倍は余裕で持てるぜ。」
「私はそのまた3倍は持てるわよ。」
「お前、どれだけ腕長いんだよ。」
「長い?」
「ほら、腕に抱えられるのなんて限られてる。」
少年は自分の腕を伸ばしてそこに枝を乗せて言った。
「はあ。袋に入れるとか、台車を使うとか、あるでしょ?」
「え?あ、ああ!!そ、そんなの反則だろっ!!」
「なにが?あんたバカだね。ふふふ。」
「なんだよ!!うるさいな。わざとに決まってんだろ!!」
「バカなやつほどそう言うのよー。」
「なんだと!?貸せっ!!全部俺が持っ。」
「あらら、怒った?ねえ、怒った?」
「あーうるさいな。良いだろっ。早く行くぞ!!」
―――
これが少年、ハルスとクリスとの出会いだった。
クリスはそのあと彼が連れていってくれた場所は覚えてないみたい。でもそれからクリスの両親や他の人たちが貿易に出かけている間、クリスとハルスはずっと遊んでいた。
けれどそんな日々もすぐに終わりを迎えた。クリスがダリア国に来て2日めの夕方、突然の嵐に国中が大慌てをしてクリスも国の手伝いをしていたところに、お母様とお父様が行方不明になった報せが届いたの。そしてクリスは翌日の朝に来たネビール王国からの使いの船で帰った。
前にクリスが一緒に遊んだ少女がいると話していたけれど、実はクリスの記憶違いで実は少年だった。
クリスとアルがダリア国で聴き込みのあと合流した時にクリスがそんなことがあったんです、って話をしたら発覚した事実。
アルは6才の時にアレン王国の当時王子だった現国王の目にかなって養子として引き取られたこと。引き取られた1年後に使用人の女性が現国王の子どもを授かっていたことを知り使用人を辞めて実家に帰っていた彼女を第3婦人としてその子どもと一緒に呼び戻し、それがアミレス様だったため、会議を何度も重ねた結果、アルをそのまま嫡男とし、アミレス様を第2子とすることに決めたらしい。
驚くべきことにアルが養子になる前ダリア国にいたことと顏を忘れてしまったけれど、そんな少女がいたことをクリスに話し、合点がいったんだと。
つまりハリスはアルの元々の名前で、クリスが忘れていたダリア国で一緒に遊んだという少女はアルのことだった、、、ということ。
まったく、それもこれもアルが昔から女装が趣味だったのがいけないのよね。初めて会ったとき本当に女性だったもの。なんて言ったらクリスはアルの女装癖を否定した。
「あの時のハルスは確実に男言葉でした。私の記憶が滅茶苦茶なのがいけないのです。顏だって昔も、今も、男らしくてかっこいいです!!」
って、完璧に恋しちゃってる。
でも、そんな話をずっとしていながらクリスのことがわからなかったなんて、アルは大丈夫かしら?
あー、けどずっとクリスを待って結婚を避けてきたなんて、かわいいとこあるわ。これで2人は結婚ってことで良いのよね。いやー、めでたしめでたし。
て、ところで今ってなんの時間?お菓子を食べる時間だったかしら?まあ、話も終わったし、ここのところでお開きにしようかしら。
「さ、そろそろ部屋に戻ろうかな。」
「「え?」」
口を揃えて言ったのはクリスとアミレス様。
「なに?」
「だから、婚約のお話を、、、。」
「あー、すっかり忘れてた。」
回想って難しいですよね。んー、、、難しい(/ー ̄;)




