1-7 【領域調整】でできることは?
「嬉しかったのはわかりますけど、少しは周りを見ないといけませんよ」
「・・・・・・すみません」
呆れたようなイスティさんの説教にスクレさんが小さくなる。
喜びのあまり上司を殺しかけたのだから、説教されても仕方がないだろう。
「まあ、嬉しかったんなら仕方がないでしょう」
「タケル様もいい思いをしましたしね」
「・・・・・・」
仲裁するために間に入ろうとするが、言葉の刃が突き刺さる。
視線も鋭いのだが、気のせいだろうか?
なぜかイスティさんは機嫌が悪かった。
少しして、彼女は大きく息を吐いた。
「この話は終わりにしましょう。とりあえず、今はタケル様についてです」
「僕について?」
いきなり僕の話題になり、思わず聞き返してしまった。
その反応にイスティさんはまたイラッとした様子だ。
察しが悪くて申し訳ない。
「タケル様は【領域調整】の能力を持っていますが、現状ではまったく使えないです。この状況で襲撃されれば、何もできずに討ち取られるでしょう」
「まあ、そうでしょうね。というか、そもそもこの能力で戦闘ができるんですか?」
説明に納得しつつも新たな疑問が思い浮かんだ。
彼女の言い方だと、戦闘する方法もあるようだが・・・・・・
「ええ、もちろんです」
「どうやって戦うんですか?」
彼女はあっさりと頷くが、まったく理解できなかった。
僕はさらに質問をする。
「【領域調整】は特定の空間を変化させる力です。やりようによっては相手を倒すことが可能です」
「ほう」
予想外の内容だった。
てっきり場所を変化させることに特化した能力だと思っていたが、使い方によっていろいろできるようだ。
「相手の足下に巨大な穴を作ると、高所から落とすことができます。周囲に壁や天井を作って閉じ込め、水を流し込むことで溺死させます」
「結構えぐい能力だね」
想像以上に酷い使用方法だった。
実現できそうだと思ったが、果たしてこんなことができるのだろうか?
可哀想だと思ってしまう。
ここであることを思いつく。
「建物じゃなくても広大な平原とかで使えるようになったら、一気に集団を殲滅できそうですね」
「理論上は可能ですね」
「マジで」
冗談交じりで言った内容が可能だということに驚いてしまった。
本当にできるのだろうか?
「まあ、その空間が領域の範囲内の必要がありますけどね。あと、それ相応の魔力量が必要になるので実現可能な者は限られてきます」
「広ければ広いほど使用魔力量が増えるのか」
「そういう意味ではタケル様は問題ないですね。昨日見せていただいた魔力量は桁違いに多いですから」
「ああ、そうだったね」
自分の魔力がとんでもないことを思い出した。
能力が戦闘向けではないと思っていたので、忘れてしまっていた。
「そういえば、確認したいことがあったんだ」
「どうしたのですか?」
「昨晩、寝る前に変更可能エリアを確認できたんだけど、【自室】と【玉座の間】だけだったんだ」
桁違いの魔力量を持っているはずなのに、どうしてその二つしか変更可能ではないのだろうか?
魔力量に準じて範囲が増えるのではないのだろうか?
「おそらくその場所しか知らないからでしょう。知らない空間を変化させるなんてできないでしょう」
「ああ、そういうことか」
説明を聞いて、納得することができた。
たしかに昨日の時点で僕がいたのはその二部屋だけだ。
だから、選択肢がその二部屋だったわけか。
ということは──
「もしかして、いろんな場所を変化させるためには他の場所に行かないといけない?」
「そうですね。しかも、タケル様の領域にしないといけませんよ」
嫌な予感がしたので質問したが、肯定されてしまう。
しかも、自分の領域にするという更なる条件が加わった。
「・・・・・・辞めていい?」
「何を言ってるんですか、タケル様っ⁉」
ネガティブになった僕の言葉にスクレさんが反応する。
頑張るといった矢先、真逆のことを言い始めたのだ。
彼女からすれば、当然の反応だろう。
だが、こちらにも言い分がある。
「僕、家から出られないんです」
「「はい?」」
衝撃の事実を告げると、二人は呆けた声を漏らしていた。
まさかこんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。
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