平和主義は良い考えだが、相手も平和主義とは限らない
もう必要はないので、ランサの拘束を解く。
悔しげな表情を浮かべていたが、あそこまで実力を示せば問題ないだろう。
「うちのランサが申し訳ございません」
カルティさんが頭を下げてくる。
連れてきた護衛が魔王相手に無礼を働いたのだから、その反応が当然だろう。
だが、彼に非はないと思う。
「いえ、こちらが煽ったのもありますから」
「それでも、もう少し考えて行動してほしいものです。同じ年代のあなたはこんなに落ち着いているのに……はぁ」
大きくため息をつく。
普段から苦労しているのだろうな。
だが、この状況はこちらとしてはありがたかった。
先程まではフロン村に迷惑をかけただけの状況だったが、ランサのおかげで向こうも申し訳ない気持ちになったはずだ。
とりあえず、本題に移ろう。
「まずは、お呼び立てして申し訳ありませんでした。僕はこの城から出られないので、お越しいただくしかなかったのです」
「それは問題ないのですが、城から出られないのですか?」
「ええ、そうなんです。だからこそ、自由自在に建物の中を操ることができるんですけどね」
「便利な面もあれば、不便な面もあるわけですか」
説明を聞き、カルティさんも納得してくれる。
流石に人間の方でも通用する説明のようだ。
制限を掛けることで強力な魔法になるのはこの世界では共通の常識なのだろう。
「もしかして、突然城が現れたのもその能力が原因でしょうか?」
「っ⁉ わかりますか?」
突然の指摘に驚きを隠せなかった。
まさか説明する前にバレるとは思わなかった。
「もちろんですよ。何もなかったところにいきなり城が現れるなんて、普通じゃあり得ないことですから」
「まあ、そうですよね」
たしかに城が突然現れるなんて、いくら魔法のある世界でもありえない現象だろう。
日本でも一夜城なんて話もあるが、あれは事前に色々準備をしているからできたことのはずだ。
改めてとんでもないことをしてしまった。
「しかし、どうしたらいいのやら……」
「はい?」
カルティさんが困ったような表情を浮かべる。
一体、どうしたのだろうか?
大問題を起こした自覚はあるが、具体的に何に困っているのかはわからなかった。
「この城があるのは魔族領ではありますが、人間領との境目でもあるんですよ。そんなところに突然城が現れたら、どうなると思います?」
「魔族から宣戦布告されたと思われる、ですか?」
「その通りです」
「……たしかに問題ですね」
状況を考えれば、すぐにわかる問題だった。
侵略と捉えられてもおかしくない状況である。
僕としてはあまり人間と事を構えたくはないのだけど……
「タケル殿は人間に対して危害を加えようとは思っていないんですよね?」
「もちろんです。誰かを傷つけるのは嫌な気持ちになるので」
「先代魔王とは真逆な考え方ですな。ですが、俺としてはそっちの方が好きですが」
「そう言ってもらえて恐縮です」
カルティさんからの評価は上々のようだ。
やはり平和が一番である。
「まあ、タケル殿がそう思っていても、相手側がどう思うのかは別問題ですけどね」
「……そうですよね」
だが、事はそう簡単ではないようだ。
僕がどんな考えだったとしても、相手が敵意を持っていたら意味はない。
さて、どうするべきか……
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