いくら下手に出ていても、舐められるのはまずい
「「「申し訳ございませんでしたっ!」」」
僕たち3人は一斉に頭を下げる。
土下座をしているため、すねや手のひらに石畳の冷たさが伝わる。
本気の謝罪を伝えるために仕方がないことだが結構辛い。
「あの、頭を上げてください」
困惑したように声を掛けられる。
顔を上げると、そこには40代前後に見えるおじさんがいた。
彼の後ろには僕より少し年上ぐらいの青年二人がいた。
「えっと……どなたがトップでしょうか?」
「僕ですね。魔王のタケルと申します」
「俺はフロン村の村長──カルティです」
カルティさんの質問に手を上げて答える。
たしかにこのメンツだと、僕が魔王だとは思えないだろう。
一応、真ん中にはいるが、見た目だけだとスティフの方が魔王のように見える。
「はぁ? お前が魔王だと?」
怪訝そうな表情で青年の一人が声を上げる。
槍を背負っている方だった。
少し柄の悪さが表に出ており、日本にいた頃だと絶対に関わりがなかったタイプである。
「そうですけど?」
「お前みたいな奴が魔王だなんて、どれだけ人材不足なんだよ。俺どころか新人冒険者でも倒せそうじゃねえか」
僕が肯定すると、青年は馬鹿にしたように言葉を続ける。
まあ、否定はできない。
一応、戦闘ができないことはないが、真っ向勝負だと新人冒険者にも負けるのではないだろうか?
「やめなさい、ランサ」
「別にいいじゃないか。どうせ七光りかなんかで魔王になったんだろうし、そんな奴なんざ怖くねえよ」
カルティさんが注意をするが、槍持ちの青年はまったく気にした様子はない。
魔王を名乗ったのに、ここまで舐められるのは予想外だった。
それだけ僕が弱そうなのだろう。
だが、流石にこの状況はまずいかもしれない。
謝罪のために彼らを呼んだのに、こちら側のメンツが怒って場が壊れかねない。
「では、証明をしましょうか」
「証明だと?」
僕の言葉に槍持ちの青年が反応する。
他のメンツもこちらに視線を向ける。
いきなり何を言っているんだ、こいつ?──といった表情である。
「君には今から僕に攻撃をしてもらいます。それをあっさりと防いでみせましょう」
「はぁ? 舐めてるのか?」
僕の提案に彼は苛立ったような声を上げる。
完全に下に見てる相手から舐められたと思っているのだろう。
別に彼を舐めてはいない。
「こんな弱そうな魔王にすら攻撃できないほど弱虫なんだね」
「てめぇっ!」
僕の煽りに青年は怒りの雄叫びを上げる。
槍を構え、その場から駆け出した。
(ガキィッ)
「なっ⁉」
だが、その攻撃が僕に届くことはなかった。
目の前にいきなり壁が現れたからである。
といっても、そこまで大きくはない。
せいぜい縦横1m程度の大きさで、厚さも十数cmしかない。
だが、彼の攻撃を止めるには十分だった。
(グイッ)
「ぐっ」
彼は引き抜こうとするが、まったく動かない。
なまじ勢いよく突っ込んできたせいで、壁にめり込んでしまっているのだ。
少し先っぽが反対側に出てしまっている。
もちろん、壁を修復しているのもあって、相当な力がないと抜くことは不可能である。
(ギュルルルッ)
「なっ⁉」
いきなり両手を覆われ、青年が驚きの声を上げる。
槍を抜くことに集中していたせいで、魔法の気配に気づかなかったようだ。
一応村長の護衛として来ているはずなのに、お粗末な気がする。
いや、田舎の青年なのでこのレベルが普通なのだろうか?
「はい、チェックメイト」
拘束からナイフを作り出し、喉元に突きつける。
拘束から逃れられないので、回避することも不可能である。
完全に僕の勝ちだった。
さて、ここからどうしようか?
謝罪のためにフロン村の人たちを呼び出したのに、結果として村の人と戦ってしまった。
またスクレさんに怒られそうである。
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