隙を見せているのは余裕の表れ?
前回に続いて村長視点です。
(村長視点)
馬車に乗せられ、あっという間に魔王城に到着した。
村にはない巨大な建物に驚愕してしまう。
報告には聞いていたが、まさかこんなものがいきなり現れるとは思ってもみなかった。
それだけ魔王軍に強大な何かが存在しているのだろう。
「村長、大丈夫なんですか?」
護衛の一人──グラディが問いかけてくる。
前を歩く女性──スクレ殿に聞こえないようにこっそりとである。
「わからん。だが、今は従うしかないだろうよ」
具体的な状況が分からない以上、ついていくのが得策だろう。
下手に相手を刺激し、多大な被害を被るのは避けたい。
「今なら背後からやれるんじゃないのか?」
もう一人の護衛──ランサがスクレ殿を指さし、そんなことを言う。
短絡的で好戦的な彼らしい判断である。
「馬鹿者。そんなことできるはずがなかろう」
「でも、背を向けて隙だらけだぞ?」
「だとしてもだ。使者に危害を加え、村を滅ぼされたらどうする」
「滅ぼされないように抗戦すればいいじゃないか」
俺の指摘にランサは反論する。
自分の実力に自信があるから、そんなことが言えるのだろう。
だが、世の中は彼が考えるよりも広い。
「ランサじゃ、彼女にも勝てないだろうね」
「なんだとっ?」
グラディの言葉にランサが反応する。
馬鹿にされているとわかったのだろう。
睨み付けるが、グラディはまったく意に介した様子もない。
「相手の実力もろくに判断できないのに、どうして勝てると思ったの?」
「明らかに隙だらけだろ」
ランサは反論する。
たしかにスクレ殿はこちらを意識している様子がなく、見るからに隙だらけである。
だが、敵対している人間相手にこんな隙をさらすだろうか?
「すみません」
「なんでしょうか?」
「「っ⁉」」
グラディがいきなり声を掛ける。
その行動を見て、俺とランサは驚きの表情を浮かべる。
「どうして隙をさらすような動きをされているんですか?」
とんでもない質問を投げかける。
普通、敵対している相手にそんなことを聞けるわけがない。
豪胆なのか、馬鹿なのか……
「私に敵意がないことを示すためですよ。そうしないと、ついてきていただけないでしょう?」
「まあ、たしかにそうですね」
スクレ殿の答えにグラディが納得したように頷く。
この答えには俺も賛同できる。
見るからに敵意むき出しであれば、こんなに素直についてはこなかっただろう。
「ちなみに、僕とそこの槍使いが同時に襲い掛かっても、確実に返り討ちですよね?」
「「っ⁉」」
グラディはさらに爆弾を投げ入れる。
これは確実に言える。
豪胆ではなく、ただの馬鹿である。
こんな質問、「敵意があります」と言っているようなものである。
「それはどうでしょうね。二人相手であれば、流石に苦戦するかも」
だが、スクレ殿は肩をすくめるだけだった。
怒った様子はなかった。
気が長いのだろうか?
「謙遜はよしてください。明らかに僕たちより格上の貴女なら、苦戦することなく制圧できるでしょう? たとえ、不意打ちをしたとしても」
「わかりますか?」
「もちろんですよ。実力を隠しているようですが、ある程度の経験を積んでいればわかるものです」
「ぐっ⁉」
言外に実力がないと言われたランサが悔しげな声を漏らす。
彼も実力がないわけではないが、ランサに比べると数段落ちる。
認めたくはないだろうが、それが事実である。
「あなたも実力は相当なものだと思いますよ。四天王──は無理でしょうが、その側近として働くことができるはずです」
「貴女にそこまで言われたのなら、自信になりますね。ただ村から出るのは嫌なので、働くのは難しいです」
「それは残念」
和やかな雰囲気で会話しているが、とんでもないことを話している。
たしかにグラディに実力があるのはわかっていたが、まさか魔王軍からスカウトされるとは思っていなかった。
しかも、あっさりと断っている。
スクレ殿が気にした様子がないので良かったが、下手したらまずい状況になっていたのではないだろうか?
何が起こるか分からず、気が気ではなかった。
「着きました」
一際大きな扉の前に着く。
城門を除いて、一番大きな扉だった。
それだけこの扉の向こうにいる人物の位が高いことがわかる。
今更だが、緊張してきた。
(ギイィィッ)
スクレ殿があっさりと扉を開く。
重厚な音に緊張がさらに増してくる。
扉の向こうは広い部屋だった。
百人単位で入れそうなぐらい広く、身体の大きな種族がいる魔族でも問題なく入れるだろう。
「「「?」」」
その中心に三人の男がいた。
一人は魔族、二人は俺達と同じ人間だろうか?
というか、人間の一人は見覚えがある気がする。
一年前に魔王を討伐した勇者があんな見た目だったような……
それよりも、その三人が座っていることが気になった。
しかも、椅子にではなく、石畳の上に両脚を折り畳んで──
「「「申し訳ございませんでしたっ!」」」
「「「っ⁉」」」
三人が謝罪の言葉と共に頭を下げる。
その行動に俺達は驚き、どう反応すれば良いのかわからなかった。
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