酒の席では予想外のことをしでかしがちである
お酒は飲んでも飲まれるな、ですね。
(ピコン)
【魔王城の移動が完了しました】
軽快な音と共に機械的な声が聞こえてきた。
目を覚まし、ゆっくりと身体を起こす。
「っ⁉ 気持ち悪い……」
頭痛と吐き気に襲われる。
だが、中身が出ることはなさそうだった。
「うわぁ……怒られそうだな」
周囲を見て、思わず呟いてしまう。
昨日の飲み会は玉座の間で一晩明かしてしまった。
ヒョウゴとスティフも酔い潰れて、床で眠っていた。
もちろん、片付けなどできているはずもない。
綺麗好きのスクレさんがこの光景を見れば、確実に憤慨するだろう。
「とりあえず、証拠隠滅を……ん?」
【領域操作】を使おうとして、あることに気がついた。
魔王城周辺のマップの半分が赤い領域になっていたのだ。
本来、魔族の領地は僕が治めているので、青く表示されているはずなのだ。
「何これ?」
事態が理解できず、呆けた声を漏らす。
昨日はこんなことになってなかったはずだ。
【領域操作】を使うときにマップを確認しており、確実に周囲が青く表示されていたと確信できる。
「フロン村? これってたしか──っ⁉」
マップの赤い部分に書かれた情報に気づく。
位置的には山を挟んで魔王城の向かいにある。
そもそもこんな位置に山や村はなかったはずである。
しかも、フロン村は人間の住む村である。
「何が起きて……そういえば、さっき何か言われてたな。たしか【魔王城の移動が完了しました】だったか?」
目覚めたときに聞こえてきた音声を思い出す。
最初は気にならなかったが、この状況と相まって僕の中に悪い予感が膨れてくる。
もう一度【領域操作】の画面を開き、マップの縮尺を変化させる。
「……なんで国境に移動してるんだ?」
まさかの現象に開いた口が塞がらない。
なぜか魔王城が人間と魔族の国同士の境に移動しているのだ。
明らかに異常な事態である。
魔王城の位置が魔族領にあることなど意味のない慰めである。
「もしかして、酔った勢いでとんでもないことをしてしまった?」
起こった現象を把握し、やらかしたことの大きさに気づく。
おそらくこれは僕の【領域操作】によって起こったことだろう。
支配下に置かれてある領域内では自由に色々と変化できる魔法である。
引きこもりで魔王城から出られない僕は城の中しか変化させてこなかった。
だが、支配領域がアブル領全域に広がっているのであれば、理論上はできることである。
(バンッ)
「タケル様、大変ですっ!」
玉座の間の扉が勢いよく開かれる。
スクレさんが慌てた様子で部屋に飛び込んできた。
その後ろからイスティさんもついてきていた。
「突然、人間の村が現れました」
「……」
スクレさんの報告に僕は何も言えなかった。
やはり先程確認したのは事実のようだ。
二日酔いの幻覚ではなさそうである。
「どうされました?」
「……ごめんなさい」
「?」
「ああ、なるほど」
僕は謝ることしかできなかった。
スクレさんはよく分かっていない様子だったが、イスティさんは僕の様子に何が起こったのか気づいたようだ。
プロローグで起こったことを主人公側での説明です。
まさかのとんでもない事態に……
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