引きこもりは自信が持てない
お酒の一気飲みは危険です。
ゆっくり自分に合ったものを飲んだ方が良いです。
「でも、羨ましいな」
「何がだ?」
思わず本音が口から漏れてしまう。
ヒョウゴは理解できなかったようで首を傾げていた。
「だって、会えなくなったとはいえ、自分のことを好きでいてくれる女性がいたんでしょ? そういう女性がいるだけで凄いと思うな」
引きこもり生活を送っていた僕には縁遠い話である。
やはり爽やかイケメンだからこそ、女性が寄ってくるのだろうか?
「それぐらいタケルにもいるだろ」
「そんなのいないよ」
良い奴だからこそ、僕のことをフォローしてくれているのだろう。
だが、残念なことに僕は恋愛ごととは無縁である。
「あんな美人を侍らせておいて何を言ってるんだ?」
「美人って?」
「秘書さんのことに決まってるだろ?」
「え?」
予想外の内容に僕は驚いてしまう。
スクレさんのことだろうが、彼は一体何を言っているのだろうか?
「好みのタイプではないが、あの人はかなりの美人だろ? もしかして、美人だとは思えないのか?」
「いや、そんなことはないよ。スクレさんが綺麗だとは思っているよ」
「そんな美人が常に世話を焼いてくれてるだろ。それで女性に縁がないとは言わせないぞ?」
「そうなのかな?」
彼の言い分はわからないでもない。
だが、彼女は僕が魔王だからこそいろいろと世話を焼いてくれているのだ。
おそらく男としてはまったく見られていないだろう。
そういう意味では自信がある。
「俺の見立てだと、イスティの方が良いと思うぞ」
「どういうこと?」
スティフが会話に入ってくる。
だが、内容は理解できなかった。
ここでどうしてイスティさんの名前が出てくるのだろうか?
「タケルの魔法はまだまだわからないことが多いだろ? それを一緒に解明していくことで二人の仲が深まるって寸法だ」
「いや、イスティさんは研究のことしか頭にないと思うよ?」
共同作業をすることで絆は生まれるかもしれないが、恋愛感情には発展しないだろう。
おそらく彼女が興味を持つのは僕自身ではなく、僕の能力【領域操作】の方である。
正直、自分の魔法より魅力はないと思う。
「絶対に世話を焼いてくれる秘書さんの方がタケルに合ってるはずだ」
「一緒に研究をするイスティだろ」
なぜかヒョウゴとスティフが言い争いを始める。
僕のことなのに置いてけぼりになってしまった。
高く買ってくれているようだが、二人ほどイケメンではないのでやはり自信はない。
そもそも元引きこもりの僕を魅力的に思ってくれる女性などいるはずがない。
(グイッ)
やりきれない気持ちになり、思わず手に持っていた酒を一気に飲んでしまう。
かなり強い酒のようで、一気に酔いが回る。
ふわふわとした感じになり、どこか気持ち良かった。
「良い飲みっぷりだな」
「流石、魔王様だ」
僕の飲みっぷりを見て、二人も盛り上がる。
彼らも持っていたお酒を飲み干す。
「はっきり言うけど、僕は二人ほどイケメンじゃないんだ。だから、スクレさんとかイスティさんから好かれるわけがない」
思わず本音をぶちまける。
お酒の勢いはすさまじく、少しきつい口調になってしまう。
「そんなことないだろ? だが、良い傾向だな」
「何が?」
スティフの言葉に首を傾げる。
一体、何を言いたいのだろうか?
「タケルはどこか本心を出さないようにしている節がある。だから、こういう酒の場でもっとさらけ出すべきだと思うぞ」
「それは俺も思っていた。よし、もっと飲もうぜ」
「そうだね」
空いたグラスに酒をつがれる。
先程よりも多かったが、お酒が回って判断力が鈍っているので気にならなかった。
再びお酒を一気に飲み干してしまった。
そこからの記憶は曖昧だった。
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