飲み会では恋バナも気になる
「正直なところ、他の仲間達に傷ついて欲しくなかったんだ。戦う以上、傷つくのは避けられない。命を落とす可能性だってある」
「まあ、そうかもしれないけど……あとで怒られたんじゃない?」
ヒョウゴの気持ちも理解できる。
仲間のことを大事に思っているからこそ、一人で魔王討伐に向かったのだろう。
だが、仲間側からすれば、信頼されていなかったとショックを受けるはずだ。
「怒られはしなかったが、見捨てられたな」
「見捨てられた?」
「俺が指名手配された際、誰も助けに来てくれなかったよ。因果応報というやつかな」
苦笑するヒョウゴを見て、僕は少し考えてみる。
勘違いの可能性もあるのではないか?
「助けられなかったんじゃないの?」
「どういうことだ?」
「その仲間って、何人いたの?」
「姫騎士、聖女、魔法使いの三人だ。ちなみに魔法使いも貴族令嬢だったな」
ヒョウゴのパーティーはハーレムだったようだ。
イケメンで陽キャな彼なので、魔王討伐の旅路もうまくいっていたのだろう。
羨ましくて、妬ましい気持ちもでてきた。
「つまり、三人とも立場があるわけだ。下手に君の味方ができなかったんじゃないの?」
「そうだろうな」
「あれ、わかってた?」
あっさりと受け入れられ、驚いてしまった。
そんな僕の反応にヒョウゴは苦笑する。
「そういう意味も含めて「見捨てられた」って言ったんだよ。まあ、あいつらがその選択をしてくれて良かったと思っているんだ」
「なんで?」
ヒョウゴの気持ちが理解できなかった。
どうして見捨てられた選択をされて良かったと思っているのだろうか?
疑問に思う僕を見て、さらに説明を続ける。
「王族、教会の象徴、貴族令嬢──三人とも結ばれて良い相手じゃないんだよ。日本でただの平民でしかなかった俺じゃあな」
「もしかして、好意があった?」
恋バナの雰囲気を感じ、思わず聞いてしまった。
少しからかうような気持ちもあった。
「当たり前だろ?」
「おぉ」
だが、あっさりと答えられ、驚いてしまった。
恋とか愛なんて、この年代の男なら口にするのは恥ずかしがると思っていた。
「正直、三人ともかなりの美人だった。知らない人だったら声を掛けるのを躊躇うほどにな」
「ヒョウゴが言うのなら、相当美形だったんだね」
僕から見て、彼はかなりの美形だった。
スティフも整っている方だと思うが、彼はどちらかというと漢らしさのあるイケメンである。
女性人気で考えると、ヒョウゴのような爽やかなイケメンのに軍配が上がるだろう。
「ルックス、身分、教養、能力──すべてを持っていた。彼女達がいたからこそ、俺は魔王討伐を成し遂げたと言っていい」
「最終的に置いていったのに?」
「彼女達を失いたくなかったから置いていっただけだ。俺のために彼女達が命を落とす可能性をなくしたかったんだよ」
「君の優しさは素晴らしいけど、彼女達にとってはいらないお世話だったかもね」
「……そうだな」
厳しいことを言ってしまったが、それはヒョウゴも自覚していたようだ。
魔王討伐という長い旅路で信頼関係を育んでいたはずだ。
だが、最後に彼は反故にしてしまった。
もちろん、彼女達も理解はしていただろう。
しかし、同時に自分たちを信じてもらえなかったと思ったはずだ。
その結果、ヒョウゴが見捨てられることになったのだろう。
「次に会ったときにはしっかり謝らないとね」
「ああ、そうするよ。まあ、次に会う機会があるとは思えないがな」
「なんで?」
せっかくいい話になったのに、否定の言葉に首を傾げてしまう。
お互い生きているのであれば、会う機会ぐらいはあるだろう──そう思っていたのだが……
「俺、もう魔王軍にいるんだぞ? 人間の国の重要人物においそれと会えるわけないだろ」
「あ、ごめん」
会えない原因は僕だった。
思わず謝ってしまった。
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