エピローグ 勇者の襲撃を乗り越えた後は・・・・・・
「まさか勇者を仲間にするとは思いませんでしたよ」
「やっぱり駄目だった?」
解散した後、スクレさんにそんなことを言われた。
彼女の立場としては勇者を身内にすることに抵抗があるのかもしれない。
仕えていた先代魔王を討伐したのは事実なのだ。
「いえ、それは別に何とも」
「そうなの?」
だが、意外な返事だった。
てっきり兵庫に対して何らかの感情を持っていると思っていたが……
「私は別に先代に対して敬意は持っていませんでしたから。というか、今残っているアズサ以外の幹部は先代のことを嫌っていましたよ?」
「はい?」
さらに予想外の事実を告げられ、呆けた声を出してしまう。
そんな僕を見て、イスティさんが会話に入ってくる。
「パワハラ気質だったからね。私もいろんな兵器を作るように言われたよ」
「そういえば、民の生活が豊かになるようなものを作りたいんだったよね」
「そうそう。でも、先代が求めているのは私が作りたかったものと真逆のものだった。だから、四天王に任じられるのが苦痛でしかなかったよ」
「そうだよね」
彼女に共感してしまう。
民を豊かにしたいのに、作っているのは民を苦しめるもの。
理想と現実のギャップに苦しんだんだろう。
「大量殺戮兵器を作れと言われたときは謀反を起こそうかと思ったよ。まあ、その数日後に討伐されたけどね」
「そんなものまで作るように言われたんだ」
想像以上にとんでもない命令を出していたようだ。
そこまでいくと戦闘狂というよりは殺すことを楽しんでいるように感じる。
討伐されたことがとてもいいことだと思ってしまう。
「でも、なんでアズサさんだけは嫌ってなかったの?」
「まあ、育ての親の影響でしょうね。まさに忠臣と呼べるような人でしたから」
「たしか【大魔導】って呼ばれているゴブリンさんだよね?」
「そうです。あの人がいたからこそ、魔王軍は中から瓦解せずに済んだんです。戦闘狂の先代の意をくみながら、下の者のケアを怠らない方でした」
「すごい人だったんだね。生きているのなら戻ってきてほしいけどな」
優秀な人物ならば、ぜひとも欲しい。
部下にするのが難しいのなら、アドバイザーみたいに雇うのも手である。
だが、スクレさんが首を振る。
「あの人は頑固ですから、一線を一度引いたのなら再び戻ることをよしとしません」
「それは相当頑固だね」
「アズサに何かあれば姿を現すでしょうが、そのときは敵である可能性が高いでしょうね」
「それ、僕たちがアズサさんに何かしてる前提だよね? 流石にそんなことはしないよ」
ゴブリンといえど、【大魔導】と呼ばれた存在を相手にするのは絶対に避けたい。
勝てるビジョンがまったく見えない。
「まあ、今はそれよりも魔族領の今後について考えないといけませんね。せっかくタケル様の【領域調整】の範囲が広がったのですから、どんどん利用していかないと」
「そうだよね。といっても、城の外でどんなことができるのかわからないけど」
まだ城の外で使ったことがないので、何ができるかはわからない。
でも、城の中であれだけ自由に使えたのであれば、城の外ではさらに幅広く使えるだろう。
何ができるのかすべて把握できないぐらいに。
「それはおいおい調べていきましょう。そもそもすぐには何もできないでしょうしね」
「え? なんで?」
スクレさんの言葉に首をかしげる。
慣れていないという意味だろうか?
「領地内も魔王のものではありますが、城とは違ってタケル様が直接運営しているわけではありません。そんな場所を勝手に弄っていいと思いますか?」
「……それはダメだね」
説明を聞いて納得できた。
考えてみれば、わかる話だった。
「というわけで、何をするのか考えたうえで、あちこちに提案していきます。受け入れられれば、計画を進めることにしましょう」
「それがいいだろうね」
「時間はかかるでしょうが、どんどんやっていきましょう。そうすれば、タケル様の評判も上がっていくはずです」
「ああ、頑張るよ」
スクレさんの言葉に僕はうなずいた。
まさか引きこもりの自分が異世界にきて仕事をするとは思わなかった。
まあ、引きこもりなのは変わらないが……
第二章本編終了です。
次から閑話になります。
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