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2-27 魔王と勇者は契約で結ばれる


「どうやら君との戦闘で【領域調整】の範囲がさらに増えたみたいだ」

「もしかして、魔族領のほとんどが範囲なのか?」


 ヒョウゴが質問してくる。

 先程の会話から推測できたのだろう。


「そうみたいだよ」

「どんだけチートなんだよ」


 僕が肯定するとヒョウゴが文句を言ってくる。

 たしかに魔族領のほとんどが範囲内と考えると、チートだと思われても仕方がない。


「なんでもできるわけじゃないんだよ。遠くであるほど使用する魔力も大きくなるし、僕の目が届かない範囲はうまく調整できないんだよ」

「完璧な能力ってのはないんだな」


 ヒョウゴは残念そうな表情を浮かべる。

 彼の剣【ムラクモ】だってそうだ。

 悪意を持つ者相手なら無類の力を発揮するが、善人には大して効果がない。

 完全無欠なものなんて、この世にはないのかもしれない。


「あ、ちょうどいいじゃない」

「「え?」」


 そんな僕たちの会話にイスティさんが入ってきた。

 思わず呆けた声を漏らしてしまう。

 そんな僕たちを余所に彼女は話を続ける。


「前に発明した通信機があるじゃない」

「ああ、僕の【領域調整】を補助するやつだよね。それがどうしたの?」


 急に何の話をしているのだろうか?

 たしかに便利な道具ではあるが、様々な理由で普段使いはできない。

 だが、彼女は違う考えのようだ。


「通信機の問題点に魔力の消耗が激しいことがあるのを覚えていますか?」

「もちろん、覚えているよ。まだ消耗を抑えられていないって話だったと思うけど・・・・・・」


 そんな簡単に改善できないことはわかっていた。

 だからこそ、気長に待っているつもりだった。


「普通の人が使うにはまだまだ無理でしょう。ですが、普通じゃない人が使うとしたら?」

「それって・・・・・・」


 説明を聞き、僕はヒョウゴに視線を向ける。

 彼女の言っている内容が想像できた。

 ヒョウゴの方はまだ理解できていないようで、首を傾げていた。


「勇者ほどの魔力量があれば、魔族領内ぐらいの範囲なら通信できるはずです。これで問題は解決ですね」

「たしかにそうだけど、ヒョウゴにとってかなりの負担になるよね?」


 彼女の言うとおり、勇者の魔力があれば問題は解決する。

 だが、それはあくまでヒョウゴの負担を考えない場合である。

 人に負担をかけるのが申し訳ないから、通信機の改良を待っていたのだ。

 それなのに、彼に迷惑をかけるのはどうなのだろうか?


「別に俺は構わねえよ」

「良いの?」


 だが、ヒョウゴはあっさりと受け入れた。

 予想外の反応に思わず聞き返してしまった。


「どうせ何か仕事をしなくちゃいけないんだろ? だったら、引き受けるしかないだろう」

「でも、かなりの負担になると思うよ?」

「誰を心配しているんだ? 俺は先代魔王をたった一人で倒した勇者様だぜ」


 不安な表情を浮かべる僕に彼は堂々と宣言した。

 ここまで自信満々なのはある意味凄い。

 まあ、事実であるからこそ言えるのだろうが・・・・・・


「じゃあ、頼もうかな」

「おう、任せておけ。楽しみだな」

「楽しみ?」


 予想外の言葉に首を傾げる。

 何を楽しみにしているのだろうか?


「タケルの目となり、魔族領のいろんなところのに行けるんだろう? つまり、各地の美味いものを食べられるわけだ」

「ああ、なるほど。でも、勇者時代にもいろいろ食べてきたんじゃないの?」

「人間の街の料理はいろいろと食べてきたな。だが、魔族領の飯はまだほとんど食べていないんだよ」


 残念そうな表情を浮かべる

 たしかに敵地で食事を楽しむ余裕などないだろう。


「じゃあ、仕事をよろしく頼むよ。でも・・・・・・」

「なんだ?」

「お土産で僕にも食べさせてね。ここから出られないから、ご当地料理とか食べに行けないし」

「任せておけ」


 こうして魔王と勇者の契約が結ばれた。

 まさかこんなことになるとは思っていなかったな。






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