2-25 引きこもりの魔王は今後の展望を考える
「というわけで、俺を雇ってくれねえか?」
「「「「「はぁっ⁉」」」」」
ヒョウゴの突然の発言に幹部陣が一斉に声を上げる。
まあ、敵だと思っていた勇者が就職を希望してきたら疑うのが当然だろう。
僕の答えは決まっている。
「雇うことはできないよ」
「そこをなんとか。同郷のよしみで頼むよ」
あっさりと断ると手を合わせて頼み込むヒョウゴ。
というか、やはり同郷だったか。
名前も見た目も日本人っぽかったので、予想はしていた。
「君は先代魔王を討伐した勇者だろ? そんな奴を魔王軍に雇ったら、周囲に示しがつかないよ」
「それはそうだが・・・・・・」
理由を聞いても、やはり不満げな表情である。
居場所がなくなった彼も雇われたいのだろう。
しかも、同郷の僕がトップなら、他の場所よりよっぽど安心である。
僕だって、困っている人を見捨てるのは気が惹ける。
「まあ、客分としては受け入れるよ」
「本当かっ!」
嬉しそうな表情を浮かべるヒョウゴ。
見た目は少し怖めではあるが、こういう風に感情が表に出るので親しみやすい。
悪い奴ではないとわかる。
「けど、タダ飯は食わせないよ? しっかり仕事をして貰もらう」
「任せておけ。これでも人間の国で最高戦力だったんだぜ。昼夜問わず、いろんなクエストをこなしてきたもんだ」
働かざる者食うべからず、ということで仕事を振ろうと思っていた。
ヒョウゴもそのつもりだったようだが、流石に人間の国と同じようにするつもりはない。
ただのブラック企業である。
「とりあえず、魔族領に隣接する人間の村と交流をしてもらいたい」
「別に構わないが、どうしてだ?」
疑問に思ったヒョウゴは質問してくる。
流石に僕の意図がわからなかったのだろう。
まあ、普通の魔王とは真逆な僕の考えは想像できないと思う。
「僕は魔王だけど、武闘派じゃない。先代魔王のように戦争を起こそうとは思わない」
「その考えはわかったけど、仕事にどうつながるんだ?」
やはりまだ理解できないようだ。
いくら異世界で勇者として過ごしても、元々平和な世界の学生だった彼には思いつかないのかもしれない。
「戦争をしかけてこない魔王を周囲はどう思う?」
「別にどうも思わないんじゃないかな? 戦争を起こさなかったら、悪感情も起こらないだろうし」
「いや、そんな簡単な話じゃないよ。戦争も引き起こせない弱気な魔王ってことで、その領地を勝手に奪ったりする可能性もある」
「え?」
説明を聞いて、驚くヒョウゴ。
普通に考えれば、そんなことが起こるとは思わないだろう。
だが、今の僕の状況だとそうなる可能性が高い。
「先代魔王が戦争で周囲に迷惑をかけてきたんだ。当然、魔王とはそういう考えだと思っている人がほとんどだろうね」
「まあ、それはそうか」
「そこで急に戦争を起こさない魔王が現れたと知られたらどうなる? 今まで先代魔王に迷惑をかけられた恨みを僕に晴らそうとするはずだ」
「それは考えすぎじゃないか?」
ヒョウゴが反論してくる。
見た目の割に性善説で物事を考えているのだろう。
別にそれを否定はしない。
僕の言ったことをしない人もいるだろう。
だが、全員がそうではないのだ。
「一部でもそう考えたら問題なんだよ。人には悪意があるのは君自身がわかっているんじゃない?」
「・・・・・・そうだな」
僕の指摘に今度は反論できなかった。
味方だったと思っていたのに裏切られたことを思い出したのだろう。
だが、安心して欲しい。
僕は裏切るつもりはない。
「だからこそ、その悪意が非難される状況を作りたいわけだよ。そのために君には人間との橋渡し役になってもらいたい」
僕がこの世界で魔王として生き残るためには、攻められる可能性をできる限り低くしないといけない。
そのために多くの味方を得る必要があるのだ。
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