2-19 スティフの強さの理由とは?
(ザッ)
吹き飛ばされた勇者は空中で体勢を整えながら着地する。
やはり戦闘経験が豊富なようで、身のこなしがスムーズである。
『おらぁっ!』
『ちいっ!』
スティフが追撃を行っていた。
激しい猛攻に勇者は舌打ちをしていた。
だが、ここで疑問が浮かんだ。
「対等に戦えている?」
二人が真っ向から戦えていることに驚いてしまった。
スティフの実力は認めているが、アズサさんをあっさり倒した勇者とでは実力差がありすぎると思っていた。
手加減している可能性も考えていたが、今の勇者からはアズサさんと戦ったときの余裕は感じられなかった。
「色々考えて戦っているようですね」
「そうなの?」
水晶を使って戦況を確認しているイスティさんの言葉に反応する。
「今までのスティフ君は力任せに戦ってきました。彼の高い身体能力がそれを許してきたのです」
「でも、今は技術を使っていると? 力任せに殴っているように見えるけど・・・・・・」
勇者を殴っている様子を見ると、かなり力任せに見える。
本当に考えているのだろうか?
「あれは激しく攻撃をすることで反撃する隙を与えないためでしょう」
「あ、そういうことか」
説明を聞いて、ようやく納得できた。
勇者からの攻撃はかなり強力で、受けることはかなりのリスクである。
だが、使われなければ、リスクが下がるわけだ。
そのために激しい猛攻で反撃をさせないのだろう。
『甘いんだよっ!』
勇者が若干苛立ちながら、剣を横薙ぎに振るう。
流石にすべての攻撃を止めることはできなかったようだ。
(ヒュッ)
だが、スティフはその攻撃をギリギリのところで回避した。
少しでも近ければ、彼の首に大きな傷ができて──いや、命を落としていた可能性があった。
見ていて、とてもヒヤヒヤした。
「・・・・・・攻撃が見えているようですね。しかし、スティフ君の実力であんな芸当はできないはずです」
先程のやりとりを見て、イスティさんが考え込む。
事実かもしれないけど、流石にスティフに失礼だろう。
しかし、疑問に思ったのは僕も一緒である。
明らかに僕が戦ったときより強く見える。
1ヶ月程度でそれほどレベルアップするものなのだろうか?
「・・・・・・」
ふと気になって、【領域調整】の画面を出す。
スティフからの頼みで手助けはしない。
ただ彼のステータスを確認するだけである。
これもスティフとの戦いのあとにできるようになった【領域調整】の効果である。
普段は必要ない効果だし、部下とはいえ個人情報を盗み見るようなことはしたくなかった。
なので、今までは使っていなかったのだが・・・・・・
○スティフ
・状態:【愛の戦士】
「・・・・・・」
予想外の内容に僕は言葉を失ってしまった。
どうやら彼の今の戦いぶりはドーピングによるもののようだ。
といっても、悪い話ではない。
むしろ、彼のことを考えると応援したいと思っている。
「どうしました?」
「いや、なんでもないよ」
この情報は僕の心の中に留めておいた方が良いと思った。
なので、イスティさんの問いかけに笑顔で答えた。
どこかぎこちなかったのか、彼女は少し怪訝そうな表情になった。
だが、戦況を見逃すわけにはいかないので、すぐに視線を水晶に戻した。
「(さて、この情報はどうすべきか・・・・・・)」
追求されなかったのは安心したが、情報の扱いに迷ってしまった。
他の人に漏らすつもりはないが、本人にも伝えた方がいいものか。
まだまだ子供なスティフが認めるとは思えないし・・・・・・
愛は男を強くする、と思っています。
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