2-16 勇者が魔王城に襲撃する
(バンッ)
「魔王様っ!」
勢いよく扉が開かれ、慌てた誰かが入ってきた。
この前のメイドだった。
「貴女、ここは玉座の間よ。魔王様に失礼──」
「緊急事態です。勇者が現れました」
「っ⁉」
アズサさんが注意しようとしたが、メイドの発言にこの場は緊迫に包まれる。
まさかの急展開に頭が回らなかった。
(ダッ)
「あっ⁉」
僕が反応できていない間にアズサさんが飛び出していった。
彼女は勇者に恨みがあるという話だった。
それを晴らすべく、迎撃に向かったのだろう。
「イスティさん」
「はい、どうぞ」
同じ部屋にいたイスティさんに声を掛ける。
僕の言いたいことがわかっていたのか、彼女はゴーグルを手渡してくれた。
「勇者は現在どこにいる?」
「おそらくまだ入り口付近です。衛兵たちが対処してくれているはずです」
「わかった」
メイドから状況を聞き、ゴーグルを着けて魔力を流す。
入り口あたりに置かれてある水晶につなぐ。
「っ⁉」
映された光景に言葉を失う。
城勤めの衛兵達が全員倒れていた。
命までは取られていないようだが、すぐには起き上がれない。
「あれ、勇者は?」
確認するが、そこには倒れている衛兵しかいない。
襲撃してきたはずの勇者の姿はなかった。
「もうすでに進んでいるのか?」
画面を切り替えていく。
イスティさんにゴーグルの説明を聞いて、城中に水晶を配置していた。
そのおかげで、こうやって様々な場所を見ることができた。
「いた」
三度画面を切り替えると、ようやく勇者の姿を見つけた。
すでに玉座の間に近い大広間に到着していた。
年齢は十代後半、僕とさほど違いはなさそうだ。
自信たっぷりな雰囲気があり、画面越しにも陽キャであることがわかった。
だが、目に隈があるのが気になる。
そのせいで陽キャなのにどこか暗い感じもあった。
(ザッ)
勇者の姿を確認していると、大広間にアズサさんが現れた。
彼女の視線は勇者に固定されている。
明らかに仇を見るような目である。
彼女の立場なら、それも仕方がない。
『まさか再び相まみえるとはな』
『お? あんたは見たことがあるな』
アズサさんが声を掛けると、勇者の方も答える。
どこか余裕がある様子だった。
『貴様のその顔、この1年忘れたことはなかった』
『綺麗な女性にそんなことを言われるのは嬉しいな』
勇者はニヤリと笑みを浮かべる。
たしかに言葉だけなら、好意を告げられているようにも聞こえる。
だが、実際にはその真逆である。
『父上とブルート様の仇、討たせてもらう』
勇者の軽口に反応せず、アズサさんは刀を構える。
次の瞬間、彼女の姿が消えた。
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