2-15 【技】の四天王には問題がある
スティフの報告から数日後、今度はアズサさんの報告を受けていた。
「以上で報告は終了です」
「危険な任務をありがとうね」
「いえ、これが仕事ですから」
ねぎらいの言葉を掛けると彼女は謙遜する。
実際に褒められるべき仕事をしているのだから、素直に受け取って欲しい。
彼女の任務は魔族領内に現れた危険な魔物の討伐である。
スティフも似たような任務ではあるが、メインは領内の治安維持である。
その一環で魔物を討伐することはあるが、危険な魔物を討伐することはあまりない。
「前から気になっていたんだけど、一人で大丈夫なの?」
アズサは【技】の四天王という立場があるが、部下がいないのだ。
たった一人で危険な任務に就いているのを考えると少し心配になってしまう。
「慣れていますので、問題はないです」
「でも、危険な魔物を討伐するんだったら、複数人の方が良いんじゃないの?」
「いえ、そうでもないですよ。下手に戦力にならない者と連携する方が難しいです」
「あぁ、なるほど?」
彼女の言い分に納得して良いのかわからなかった。
複数人で戦ったことはないので、その感覚が理解できなかった。
やはり人数が多いほど戦力になるのではないだろうか?
「もちろん、集団の利点は理解しています。ですが、単体の危険な魔物相手なら私一人の方が確実です」
「というと?」
「集団で戦うのならそれに応じた作戦を練る必要があります。しかも、それを戦況に応じて指示しないといけません」
「たしかにそうだね」
説明を聞いて納得する。
たしかに戦況は刻一刻と変化するものである。
戦う前に作戦を考えていたとしても、状況が変われば使えない可能性もある。
そうならないために事前に多くの作戦を立てる方法もあるが、余分な作戦をたくさん抱えるよりは状況に合わせて変えた方が効率がいいのかもしれない。
「戦っている間に他の人を気にかけるのも苦手なんですよね。正直、敵に集中したいです」
「それはどうなんだろう?」
流石に上に立つ者として、その考えはどうなのかと思ってしまう。
四天王という幹部なら、周りを気にかけるべきだろう。
だが、彼女はさらに続ける。
「正直、私の動きについてこれる者がほとんどいないんですよ。同じように前衛で戦ったとしても、後衛から私の補助をしようとしても」
「そうなの?」
「正直、四天王クラスでもないと難しいでしょうね。一般兵では足手まといになります」
「でも、他の四天王は部下をうまく使っているよ?」
彼女の言い分もわからないではないが、他の四天王は部下をしっかり使っている。
当然、実力差はあるはずだ。
そんな僕の言い分に彼女は首を傾げる。
「そこは任務の危険度の違いです。彼らの任務は部下にも任せることができる。いや、部下に任せないと全ての任務を回せないと言うべきですね」
「任務を終えるための戦力が必要なわけだね」
「ですが、私の任務は危険な魔物の討伐であり、人員が増えたから危険性が減るわけではありません。むしろ的が増えることで、命を落とす可能性が高くなります」
「的が分散することで、危険性が減る気がするけど?」
「個人で考えると、命を落とす可能性は低くなるでしょう。ですが、集団で考えると誰かが命を落とす可能性が高くなるんです。人が多いと上手くカバーができなくなりますから」
「アズサさんも一人だけだしね」
説明を聞いて、ようやく納得できた。
たしかに彼女レベルになると、集団で戦うよりは一人で戦う方がいいのだろう。
下手に周囲のカバーに意識をさくよりは目の前の相手に集中した方が良い。
僕にはできない考え方だけど・・・・・・
「まあ、アズサさん自身が大丈夫なら、僕から何も言うことはないよ」
「ご理解いただき、感謝します」
「でも、人に頼ることは覚えた方が良いと思うよ。もし、一人で対処できないと思ったら、すぐに助けを呼んでね」
「・・・・・・わかりました」
彼女はしぶしぶ受け入れた。
今までそんなことはなかったのだろうが、決して起こらないわけじゃない。
魔王として四天王の彼女を失いたくないので、そこはしっかりと言っておいたのだ。
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