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2-14 英雄の勇者の情報について


「先代魔王様は戦争を起こすほどの戦闘狂だった。その標的は人間にも及んでいたのはわかるよな」

「それはそうだね」

「そんな先代魔王様を討伐したんだから、勇者は英雄的な扱いを受けるはずだろ?」

「たしかに」


 説明を聞いて、ようやくおかしな点に気づいた。

 いくら人間の勇者の情報だとしても、人間の街に近い村落なら情報が入っている可能性が高い。


「近くの街が人間の国にとって辺境だった可能性は?」

「たしかに辺境ではあるが、かなり大きな街のはずだ。魔族との戦線の最前線だから、多くの人員を養う必要があり、軍事施設としてもかなり整備されていると聞いたことがある」

「じゃあ、情報が入ってこないのもおかしいか」


 情報が入ってこない田舎かと考えていたが、どうやらその可能性も低いようだ。

 一体、どうしてだろうか?


「もしかしたら、秘密裏に潜入作戦でもしているのかもしれない」

「どういうこと?」


 思わず聞き返してしまう。

 どんな流れでそんな考えになったのだろうか?


「タケルが魔王になったという情報は魔族領中に流している。当然、その情報は近隣の人族の街にも伝わっているはずだ」

「まあ、逆もあり得るよね」

「そして、新たな魔王が現れたという情報で「また戦争が起こるのでは?」という考えが人間の中で出てくる可能性もある」

「ふむ」


 ここまでの流れは理解できた。

 たしかに彼の言うとおり、また戦争が起こるのを危惧する人もいるだろう。


「そこで勇者がタケルを討伐するべく、秘密裏に行動をしていたとしたら?」

「行動の理由はわかるけど、秘密裏に行動する理由はないと思うよ?」


 結論を聞き、思わず反論してしまった。

 討伐しようとするところまでは理解できたが、そのあとは納得できなかった。

 だが、そんな僕の言葉にスティフは反論する。


「いや、否定はできないぞ」

「なんで?」

「タケルが魔王に就任した情報は出回っているが、どの程度の強さかは知られていない。つまり、相手にとっては未知の存在なわけだ」

「まあ、そういうことになるか」

「いくら勇者といえど、未知の相手に真正面から挑むと思うか?」

「むぅ」


 意外と筋道が通っていた。

 僕は自分が弱いことを自覚しているので、秘密裏に討伐する必要がないと思っていた。

 しかし、勇者の立場から考えると未知の存在なのだ。

 何が起こるかわからない以上、秘密裏に行動してできる限り被害を少なくすべきなわけだ。


「とりあえず、勇者の襲撃に気をつけた方が良いんだね」

「そういうことだ。とりあえず、見回りはしっかりした方がいいだろうな」

「じゃあ、よろしく頼むね」

「任せておけ」


 外での情報を集めるのはスティフに任せる。

 一度拳を交えたおかげか、彼のことは素直に信頼できた。

 正確には、拳を直接は交えていないけど・・・・・・


「でもさ、こういう可能性も考えられない?」

「なんだ?」

「戦闘狂の先代魔王を倒した強さに恐れをなした人間の権力者が勇者を秘密裏に始末した、とか?」

「・・・・・・」

「それで自分たちの権威が揺らがないように、勇者の情報に箝口令を引いた、と

 あり得ない話ではないと思う。

 一般的な民にとって、自分たちの生活を守ってくれた勇者は英雄的な存在だろう。

 しかし、権力者にとっては違う。

 自分たちよりも民から信頼されている勇者の矛先が自身に向くかもしれない。

 自分たちに成り代わり、勇者に権力を奪われることを危惧したわけだ。

 その結果、勇者の存在を抹消したわけだ。


「その可能性も否定はできないな。だが、限りなく低いだろうな」

「どうして?」

「勇者がおそろしく強い存在だからだ。おそらく、人間達が不意打ちをしても倒せないほどにな」

「そんなに強いの?」


 思わず聞き返してしまった。

 というか、スティフは直接勇者と会ったことがないのでは?


「身内贔屓抜きで俺の親父はかなり強かった。同じ【力】の四天王という役職ではあるが、実力差は雲泥の差だ。今の俺の全力でも、親父の全力の半分どころか3割も引き出せない」

「マジで?」


 衝撃の事実に言葉が砕けてしまう。

 それほどの驚きだった。


「ちなみに先代魔王様や側近の【大魔道】の爺さんも方向性は違えど、親父と同等以上の力を持っている。その3人を討伐した勇者を人間が束になっても始末できるとは思えない」

「・・・・・・それもそうか」


 勇者の実力が規格外だった。

 それなら僕の予想は外れているだろう。


「でも、それだけ強いなら、コソコソ動かずに真正面から攻めてくるんじゃないかな?」

「・・・・・・たしかに」


 僕の指摘にスティフは少し考え、納得してくれた。

 規格外の実力なら、そもそも隠れる必要はない。

 真正面から僕を討伐に来るだろう。


「まあ、たまたま情報がなかったんじゃない? 討伐から1年も経っているんだから、噂にすらならなくなった、とか」

「それもそうだが、心配するにこしたことはない。情報集めはしておくよ」

「うん、よろしく」


 警戒は必要だと思うので、勇者の情報は集めてもらう。

 いろいろ想像したら大丈夫だと感じたが、集めて無駄ではないだろう。

 しかし、僕ももっと努力しないといけないな。

 少なくとも、先代魔王の足下に辿り着くぐらいの実力は身につけるべきだろう。

 【領域調整】でどこまでできれば良いのかわからないけど・・・・・・







作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。

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