2-12 【力】の四天王は悩んでいる
ゴーグルの実演が終わり、イスティさんは研究室に戻った。
これからいろいろと改善していくのだろう。
早く完成したらいいな。
「よし、書類仕事に戻るか」
僕は玉座の間に向かう。
スクレさんに怒られないためである。
今回は仕事なので事前に出ることは伝えている。
だが、あまりにも遅いとまた怒られてしまう。
それは嫌なので、足早に歩き始めた。
「よう」
いきなり声を掛けられた。
背後からだったので、少し驚いてしまった。
「スティフか。どうしたの?」
そこにいたのは【力】の四天王のスティフだった。
魔王と四天王──つまり、上司と部下の関係なので、本来は敬語を使われるべきだろう。
スクレさんはそうすべきだと愚痴っていた。
だが、同性かつ同年代なので、仲の良い友達のように話すことにしている。
その方がお互い話しやすかったからだ。
「見回りの報告に来ただけだ」
「そうなんだ。じゃあ、玉座の間に向かおう」
「ああ」
流石に廊下で聞くような内容ではないので、目的地に向かって歩き始める。
当然、世間話をしながらだ。
「アズサさんとはどう?」
「どう、とは?」
唐突な質問にスティフは答えづらそうにする。
もちろん、質問の意図は理解しているのだろう。
ただ答えづらいだけである。
「いい加減、平常心になりなよ。スティフがそんなんだったら、相手も気にするじゃん」
「それはわかっているが、やっぱり傷つけた負い目があるんだよ」
申し訳なさそうな表情を浮かべるスティフ。
僕が魔王になる報告をしたあの日、彼はアズサさんを傷つけた。
そのことを彼は今も後悔しているのだ。
「謝ってたじゃん。だったら、今まで通りに接すれば良いのに」
「今までどうやって接していたんだ?」
「知らないよ」
僕に聞かれても困る。
二人の付き合いは十数年、まだ魔王歴一月の僕が知るわけがない。
「顔が見れないんだ」
「なんで?」
彼の反応の意味がわからなかった。
姉弟として過ごしてきたのに、どうしてそんなことになったのだろうか?
「泣かせてしまったせいか、顔を見る度にそのときのことを思い出すんだ」
「それは自業自得だね」
理由があったとはいえ、泣かせたのはスティフ自身である。
罪の意識があるのなら、尚更である。
自分で贖罪するしかない。
「あと、横顔とかを見るとなぜか顔が熱くなるんだ。これはどういうことだ?」
「それは・・・・・・なんだろうね?」
冗談で言っているのかと思ったが、スティフの表情は本気だった。
スティフは屈強な見た目とは裏腹に、精神はまだまだ子供なのだ。
事実を伝えたとしても、信じられない可能性もある。
なので、僕はあえて白を切ることにした。
別に友人が先に春を迎えるのを阻止したいからではない、と思う。
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