2-10 通信機の問題点とは? 1
(コト)
水晶が台の上に置かれる。
再びゴーグルを着けてみると、少し視点が下がっていた気がした。
あと、下を確認すると見えなくなっていた。
下側が覆われているからだろう。
『これでどうでしょうか?』
「問題ないよ」
通信機越しのメイドの言葉に返事をする。
十分、部屋全体を見渡せる。
「では、【領域調整】を使ってください」
「わかったよ」
イスティさんの言うとおりに行動する。
流石に部屋をまたいでいるので、画面越しに【領域調整】を発動させる。
普段は目の前に現れる画面がゴーグルに映し出される。
とりあえず、部屋の隅に置かれていた箒を別の隅に移動させてみた。
(スッ)
『うわっ』
通信機越しに驚く声が聞こえてきた。
メイドからすれば、いきなり箒が動いたのだから当然の反応である。
いくら【領域調整】を使ったと分かっていても、なんらかの怪奇現象に見えてもおかしくはない。
(シュッ)
今度は天井付近の蜘蛛の巣を消した。
掃除が行き届いていなかったのか、単純に手が届かなかったのか、残っているのが気になってしまった。
「どうですか?」
イスティさんが質問してくる。
使い心地を聞きたいのだろう。
「ゴーグル越しではあるけど、部屋の中を確認できるのは便利だね。今までより魔法が使いやすい気がする」
「それなら良かったです。しかし、改善点も多いんですよ」
「そうなの?」
素直な気持ちで褒めたのだが、彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべる。
どこが問題なのだろうか?
「周囲を見るための水晶を置かないといけないことですね」
「というと?」
「映し出される景色を確認しましたが、台に置くことで真下が見えなくなっています。つまり、死角ですね」
「たしかにそうだね」
台の上に置くのなら仕方がないと思う。
人が持って先程のようなことになるよりはマシだろう。
「天井から吊り下げれば、死角はほとんどなくなるでしょうね」
「なるほど」
彼女の考えに納得する。
ためしに【領域調整】を発動し、天井から紐を伸ばして水晶を吊るしてみる。
ゴーグル越しの光景が上がり、下にある台が確認できた。
これで部屋全体を見渡せるようになったが、水晶が天井から吊るされている光景を想像するとなんともシュールである。
「いちいち、水晶玉を持って行くのも面倒ですよね」
「それは仕方がないと思うよ。というか、ずっと部屋に置いておくのはだめなの?」
「タケル様は常に水晶が吊るされている部屋で過ごしたいですか?」
「・・・・・・嫌だな」
想像しただけで落ち着かない。
先程も自分でシュールだと思っていた。
いちいち準備をした方がいい気がする。
「あと、【領域調整】を使う場所に人を配置した方が良いでしょうね」
「それはどういう意図?」
「実際の現場で水晶越しではわからない細かい状況を把握するためです。いくら実際に見えても、気づかないところもあるでしょう」
「たしかにそうだね」
イスティさんの言葉に納得する。
これだけあっさり問題点に気づくなんて、やはり彼女は凄いな。
「何も知らない人が入ってきて、怪奇現象だと腰を抜かす可能性があります」
「・・・・・・それは気をつけた方がいいね」
馬鹿みたいな話だが、実際に起こりそうだった。
そう考えると、【領域調整】を使う場所に人を置くべきだろう。
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