2-9 イスティの発明品を体験する
「これを着けるんだろうけど、どう使うの?」
ゴーグルらしきものを確認する。
ゴテゴテした機械のようなものがついているが、ゴーグルであることは間違いないだろう。
だからこそ、使い方がわからなかった。
「では、君はまずこれを持って隣の部屋に行ってきて」
「わ、わかりました」
イスティがメイドに水晶を渡す。
魔力を測定した水晶かと思ったが、色が違っていた気がする。
あと、彼女に頼んだ理由もわからない。
「では、このゴーグルを着けてください」
「うん」
イスティの指示に従い、ゴーグルを着けた。
機械が色々ついているので、かなりの重量になっている。
首への負担が少し気になった。
「あれ? 別に何も変わりなくない?」
目の前の光景に疑問の声を漏らす。
見える景色は着ける前と何ら変わりなかった。
むしろゴーグル越しのせいで見えにくさすらある。
「当然でしょう。まだ機構を動かしていないんだから」
「それを動かすとどうなるの?」
「百聞は一見にしかず、です。機械に魔力を流してください」
「わかったよ」
言われたとおりに魔力を流す。
魔力に反応した機械が起動し、ゴーグル越しの光景が揺らいでいく。
「うわっ」
いきなりの出来事に驚きの声を漏らす。
だが、すぐに次の驚きが起きた。
「あれ?」
揺らいだ光景が落ち着き、再びしっかりと景色が見える。
しかし、先程の階段とは違い、どこかの部屋だった。
【領域調整】の訓練のおかげで魔王城の間取りはある程度覚えている。
これはメイドが先程向かった隣の部屋である。
「どうです? 隣の部屋の光景が見えるでしょう」
「これはどういう仕組み?」
イスティに思わず質問してしまう。
僕の反応に彼女はどや顔をしていた。
「このゴーグルに着いている機械は受信機です」
「受信機?」
「先程メイドに持たせた水晶が映し出す景色を受信し、ゴーグルに映し出すんです」
「なるほど。そういう仕組みだったのか」
説明を聞き、仕組みは理解できた。
周囲を見回すように首を動かすと、ゴーグル越しの光景も動いていた。
「え?」
「景色が動いて驚いたでしょう? 水晶を利用することにより、上下左右全方向を見ることが可能になりました」
「おお、それはすごい」
想像以上の技術に感嘆の声を上げる。
こういう画面越しに景色を見る際、一定方向しか見ることができないだろう。
だが、水晶を使うことで全方向を見ることができるわけだ。
感動した僕はいろんな方向を向く。
(バッ)
「うわっ」
いきなり目の前にメイドの顔が洗われ、思わず驚きの声を漏らす。
可愛らしい顔ではあるが、どアップで現れたら心臓に悪い。
思わず視線を下に逸らすが・・・・・・
(バンッ)
「っ⁉」
二つの巨大な山によりできた谷が目に入る。
あまりの光景に言葉を失ってしまい、ゴーグルを外す。
「どうされましたか?」
「・・・・・・水晶は持たせるよりどこかに固定した方が良いかもね」
「そうですか?」
僕の様子に疑問を感じたが、彼女は何も聞くことはなかった。
懐から通信機のようなものを取り出す。
「テステス。その水晶を部屋の中心に置いてくれる? 机の上の方がありがたいかな」
『了解しました』
彼女が指示を出すと通信機から声が聞こえてくる。
隣の部屋にいるメイドの声だった。
剣と魔法の世界だが、まさか通信機なんてものが出てくるとは思わなかった。
意外と技術も発展しているのかと思ったが、これはイスティがすごいのかもしれない。
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